入門編 プラットフォーム型|製薬・バイオ全17回シリーズ 第11回

Absci(ABSI)とはどんな会社? ― AIで抗体医薬を設計する「プラットフォーム型」企業と「実現率」という考え方

株価・データ基準日:2026年9月24日前後(編集部確認時点)
Absci(ABSI)は、AI(人工知能)を使って抗体医薬体の免疫の仕組みを応用し、病気の原因となる特定のたんぱく質などにピンポイントで結合するように作られた薬を設計する会社です。1つの薬ではなく「薬を生み出す技術基盤(プラットフォーム)」そのものが強みという「プラットフォーム型」にあたります。今回は、このタイプを見るうえで大切な「実現率」という考え方を紹介します。
今回の新しい考え方:「実現率」とは? プラットフォーム型の会社は「この技術を使えば良い薬をたくさん生み出せる」という期待で評価されがちです。しかし実際に大切なのは、その技術から生まれた薬の候補のうち、どれだけが臨床試験で成果を上げ、最終的に承認や売上につながったかです。当シリーズではこの割合を「実現率」と呼びます。技術の「期待」と、実際の「結果」の間にどれだけの差があるかを見るための物差しです(正式な会計用語ではなく、当サイトで用いる考え方です)。

①この会社は何をしている?

Absciは、AIによる設計と、実験室での大量のデータ取得を組み合わせて、新しい抗体医薬の候補を作り出しています。AIが設計した候補を実験で確かめ、その結果を再びAIに学ばせるサイクルを回すことで、従来より速く、効率的に薬の候補を見つけることを目指しています。現在の主力は、男性型・女性型の脱毛症(薄毛)や子宮内膜症を対象に開発中の抗体「ABS-201」です。

②どのタイプの会社?

6つの事業モデルのうち「プラットフォーム型」にあたります。第12回以降で紹介する「創薬型」が特定の薬の成否に会社の命運がかかっているのに対し、プラットフォーム型は「技術そのもの」から複数の候補を生み出せる点が強みです。ただし、技術がどれほど優れていても、実際に承認された薬や大きな売上が生まれるまでは、その価値は「期待」にとどまります。ここで「実現率」の視点が役に立ちます。

③④ここがユニーク/気をつける点

ここがユニーク 2026年6月に約1億ドルの資金調達を行い、そのうち4,000万ドルは大手製薬会社Eli Lillyによる出資でした。6月末時点の現金・有価証券は合計2億110万ドルで、会社は2028年後半まで事業を続けられる資金があるとしています。ABS-201の第1相試験(脱毛症)の途中経過では、安全性・忍容性(副作用に耐えられるかどうか)に大きな問題は見られず、薬が体内にとどまる期間が長いため、6か月で2〜3回の注射で済む可能性が示されました。9月24日には、子宮内膜症を対象とした約150人規模の第2相試験の概要も発表されています。
気をつける点 「実現率」の視点で見ると、成果はまだこれからです。以前の主力候補ABS-101(炎症性腸疾患向け)は、第1相試験で薬が体内にとどまる期間が競合薬に及ばず、2025年11月に自社での開発継続を見送りました。2026年第2四半期の売上高は30万ドルにとどまる一方、純損失は3,320万ドルでした。ABS-201はまだ第1相試験の段階で、効果を示すデータは出ておらず、承認されていません。子宮内膜症の第2相試験も、8月時点では2026年第4四半期開始予定とされていましたが、9月の発表では2027年半ば開始予定とされています。

⑤数字で見るこの会社

時価総額約16億9,000万ドル(2026年9月24日時点)
株価9.87ドル(2026年9月24日時点)
2026年Q2売上高30万ドル(前年同期60万ドル)
Q2研究開発費2,260万ドル(前年同期2,050万ドル)
Q2純損失3,320万ドル(前年同期3,060万ドル)
現金・有価証券2億110万ドル(2026年6月30日時点)
資金の持続見通し2028年後半まで(会社見通し)
数値は2026年8月11日発表の2026年第2四半期決算資料、2026年9月24日の開示、および同日前後の株価情報に基づく(編集部確認)

⑥次に何が起きる?

会社は、ABS-201の脱毛症を対象とした第1/2a相試験で、薬の効果を初めて確かめる「概念実証」の途中データを2026年後半に、全体のデータを2027年初めに示す予定としています。これはAbsciのAI設計技術から生まれた薬が「効果」を示せるかどうかを見る最初の大きな節目であり、まさに「実現率」が試される場面です。結果が良いものになるとは限りません。

⑦まとめ

Absciは、AIで抗体医薬を設計する技術そのものを強みとする「プラットフォーム型」の会社です。Eli Lillyの出資や2028年後半までの資金見通しなど支えとなる材料がある一方、技術から生まれた薬が実際に効果を示し、承認や売上につながった実績はまだありません。技術への「期待」と実際の「結果」の差を測る「実現率」の視点は、今後のプラットフォーム型企業を見るときにも役立ちます。当サイトが継続的に追跡する対象の一つであり、特定の投資行動を推奨するものではありません。

用語集

抗体医薬
体の免疫の仕組みを応用し、病気の原因となる特定のたんぱく質などにピンポイントで結合するように作られた薬
プラットフォーム
1つの薬ではなく、複数の薬の候補を生み出すための技術基盤のこと
実現率
技術から生まれた薬の候補のうち、臨床試験での成果や承認・売上に実際につながった割合(当サイトで用いる考え方)
第1相試験
人で初めて行う臨床試験。主に安全性や、薬が体内でどう動くかを確かめる
時価総額
株価×発行済み株式数で計算する、会社の市場での大きさ
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この記事は投資判断を勧めるものではありません。取り上げた銘柄は当サイトが情報提供目的で継続的に追跡している対象であり、「おすすめの銘柄」ではありません。記事内の数値は公表されている決算資料・株価情報をもとに編集部が確認したもので、将来の業績や株価を保証するものではありません。ABS-201はまだ臨床試験の段階にあり、承認されていません。「実現率」は正式な会計用語ではなく、当サイトで用いる考え方です。投資の最終判断は必ずご自身で行ってください。