| 業態 | 代表プレイヤー | 役割 | 事業化ステージ |
|---|---|---|---|
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革新的バイオ医薬品メーカー
(ADC等次世代モダリティ) |
第一三共(4568)、中外製薬(4519)、協和キリン(4151) | 世界市場向けに高付加価値バイオ医薬品(ADC・バイスペシフィック抗体等)を開発・製造・販売。次世代モダリティで国際競争力を持つ。 | 商用販売段階(エンハーツ等) |
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バイオCDMO
(異業種参入型) |
富士フイルムHD(4901・子会社富士フイルムDiosynth Biotechnologies)、AGC(5201・子会社AGC Biologics)、JSR(子会社JSR Micro) | 製薬会社から医薬品の開発・製造を受託するCDMO(Contract Development and Manufacturing Organization)事業。写真・ガラス等の異業種から参入。バイオ製造技術を強みに世界市場で展開。 | 拡大中(国際商用生産段階) |
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再生医療製品メーカー・
スタートアップ |
クオリプス(非上場・キヤノンメディカル・武田薬品出資)、住友ファーマ(4503)、サンバイオ(4592)、ヘリオス(4593) | iPS細胞・幹細胞等を活用した再生医療等製品の開発・製造・販売。承認申請〜初期商業化段階の企業が多い。CDMOへの製造委託も活用。 | 承認申請〜初期商業化段階 |
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創薬スタートアップ
(シーズ保有) |
ペプチドリーム(4587)、アクセスバイオ(非上場)等多数 | 革新的な創薬シーズを持ち、大手製薬企業との提携・ライセンスアウトによる収益モデル。AMED・VCの支援を受けて開発を進める。 | 早期開発〜臨床段階 |
第一三共(4568)の2025年3月期(2024年度)連結業績(IFRS)は売上収益**1兆8,862億円**(前期比+17.8%)・営業利益3,319億円(+56.9%)・当期純利益2,958億円(+47.3%)と売上・利益ともに5期連続過去最高を更新しました(第一三共 2025年3月期決算短信)。2026年3月期は売上収益**2兆円超**を見込んでいます(2026年3月期第2四半期時点)。
ADC「エンハーツ(トラスツズマブ デルクステカン)」の2024年度(2025年3月期)売上収益はアストラゼネカからの共同販促収入を含め**4,638億円**(前期比+38.6%・現地通貨ベース+31.4%)です(第一三共2025年3月期決算短信)。欧米での乳がん一次治療への採用拡大・2025年1月の米国でのHER2低発現・超低発現乳がんへの適応拡大が寄与しています。2025年に中国の医療保険リストに収載されており、ボリューム拡大フェーズに入っています。
ピーク時の需要予測は年間5,000万バイアル超(2021年比約1.5倍)に膨れ上がっており(AnswersNews・2025年3月)、国内4工場(小名浜・館林・平塚・小田原)と米国・ドイツ・中国の各拠点でADCへの設備投資を実行中です。2021〜2025年度中計期間でADC向け設備投資は約**6,000億円規模**の見込みです。
第一三共はエンハーツを含む5つのADCを後期開発しています。アストラゼネカとはエンハーツ・Dato-DXd(ダトロウェイ)で総額**3.3兆円**の超大型提携を締結しています。メルクとはHER3-DXd・I-DXd・R-DXdの3つのADCを共同開発しています。研究開発費は2025年3月期で**4,329億円**(前期比+18.8%)と急増しています。2025年1月には2つ目のADC「ダトロウェイ(ダトポタマブ デルクステカン)」が米国で発売されています。
富士フイルムHD(4901)はバイオCDMO事業(子会社富士フイルムDiosynth Biotechnologies)で、「2030年度に2021年度比3.3倍の売上高5,000億円を目指す」(後藤禎一HD社長・ニュースイッチ)という目標を掲げています。現在のバイオCDMO事業の売上高は年平均**30%**のペースで成長しています(日経・2025年1月)。
2024〜2026年度の3年間では、バイオCDMO・半導体材料を含む成長事業に**1.6兆円**を集中投入する計画です(富士フイルムHD説明会資料・2025年9月)。これまでのバイオCDMO分野での累計投資額は**1兆円超**に達しています(日経・2025年1月)。
富士フイルムHDは2019年に製薬大手・米バイオジェンのデンマーク製造子会社を買収し、2024年11月から2万リットルの動物細胞培養タンク**6基**の本格稼働を開始しました(日経・2025年1月)。2026年3月期第2四半期(2025年4〜9月)のヘルスケアセグメント売上高は**4,992億円**(前年同期比+3.1%)で、CDMOとワクチン治験薬製造増加が牽引しています(日経バイオテク・2025年11月)。
富士フイルムは「バイオ医薬品の製造プロセス移転期間を通常1年から前倒しで達成できる」という速度の優位性を技術差別化のポイントとしています。製造プロセスの速い立ち上げが製薬会社の収益に直結するため、CDMOの競争力として重要な要素です(日経・2025年1月)。
富山に初の国内バイオ医薬品CDMO拠点を建設する計画も発表しており(富士フイルムHD説明会資料・2025年9月)、国内CDMO体制の強化が進んでいます。
AGC(5201)はバイオ医薬品CDMO(AGC Biologics)を含むライフサイエンス事業を「将来の柱となる戦略事業として育成」と位置づけています(AGC ライフサイエンス事業QA会・2025年9月29日)。日米欧3極・10拠点体制で、化学合成・動物細胞・微生物・pDNA・mRNA・遺伝子細胞治療・エクソソームなど幅広いモダリティ対応能力を持っています(AGC mRNA事業説明資料・2024年4月)。
AGCは2020年に買収した米コロラドのボルダー拠点で大型シングルユーススターラー(SUS)による生産を試みましたが、2025年にこの大型SUSでの生産から撤退し、強みのあるシングルユースバイオリアクター(SUB)技術に集中する方針を決定しました(AGC ライフサイエンス事業QA会・2025年9月29日)。横浜に最大規模の5,000リットルSUBを搭載した新拠点を建設中であり、2年後(2027〜2028年頃)の稼働予定としています。
バイオ医薬品CDMO市場全体の成長率は年率**10%程度以上**と見込まれており(AGC推計)、AGCは2025年以降に成長軌道に戻す方針です。2024年にコペンハーゲン拠点の増強設備が稼働開始しており、業績への大きなインパクトは2026年後半〜2027年に出ると想定しています(同QA会)。
クオリプスはキヤノンメディカルシステムズと武田薬品工業の出資会社(非上場)で、iPS細胞由来心筋シートを開発しています。虚血性心疾患を対象として医師主導治験が完了し、2024年12月2日に承認申請資料(臨床パート)を提出しています(再生医療.net・2025年1月)。当初の26週目データに加えて、改善効果がより顕著な52週目データを追加するために計画変更が行われており、承認申請は段階的に提出されています。承認が得られれば、iPS細胞由来製品として国内初の心筋製品となります。
住友ファーマ(4503)はiPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞(パーキンソン病向け)およびiPS細胞由来網膜色素上皮細胞(加齢黄斑変性向け)の開発を国内および米国で進めています(再生医療.net・2024年)。京都大学iPS細胞研究所(CiRA)との提携に基づく製品で、他家iPS細胞(ユニバーサルドナー細胞)を活用した量産可能な治療薬を目指しています。
経済産業省は「再生・細胞医療・遺伝子治療製造設備投資支援事業費補助金」として、国庫債務負担行為含め4年間総額383億円の補助金を2025年7月に採択しました(経産省・2025年7月15日)。再生・細胞医療・遺伝子治療製品を円滑に製造できる能力を国内に確保するため、CDMOの国内受託製造拠点の整備や製造人材育成への支援が対象です。採択企業の詳細は経産省プレスリリースで公表されています。
日本成長戦略会議 第3回「先行して検討を進めている主要な製品技術等の官民投資ロードマップ素案」(2026年3月)は「製薬企業は、開発した医薬品の特許期間中の収益を研究開発に再投資する収益構造となっていることから、医薬品開発を継続する必要がある」と明示しています。第一三共がエンハーツの高成長を受けて研究開発費を4,329億円(前期比+18.8%)に増加させているのはこの収益サイクルの実例です。
逆に言えば、特許期間終了後にブロックバスター候補がなければ業績は急速に悪化します。第一三共はこのリスクに対して「5DXd ADCs and Next Wave」という多層的なパイプライン戦略で対応しています。
富士フイルムのCDMO事業が示すように、バイオCDMO企業の収益は「製薬会社から受託した案件の製造実績」に依存します。商業規模生産の認可を規制当局から得るには通常2年程度を要し(富士フイルム 2025年2月説明会資料)、一旦稼働すれば長期的な安定収益につながります。「製造プロセス移転スピード」「品質の確実性」「供給安定性」が受注の決め手となり、価格は競合に比べて二次的要因であるとされています(同)。
再生医療等製品は1回の治療で長期または永続的な効果をもたらす(CAR-T細胞治療・遺伝子治療等)ため、1回あたりの薬価が極めて高くなる傾向があります。国内で承認されているCAR-T細胞治療薬の薬価は1コース3,000万円超のものもあります。市場全体の規模は「高薬価×少数患者」という構造のため、現時点では大きくありませんが、将来の適応拡大で急成長する可能性を持ちます。
日本成長戦略会議 第3回「先行して検討を進めている主要な製品技術等の官民投資ロードマップ素案」(2026年3月)は「人材:バイオ人材、実用化への橋渡し人材、海外VCなどステークホルダーが不足」と課題として明示しています。国内でバイオ医薬品の製造プロセスを立ち上げられる人材が不足しており、日本の製薬産業がバイオ医薬品の開発に出遅れたことがその背景にあります(経産省 バイオCMO/CDMO強化資料)。
経産省「バイオCMO/CDMOの強化について」は「日系製薬企業が国内で開発するバイオ医薬品の件数が少ない。小ロットの治験薬の生産を多数受託するよりも大型の商用生産を受注する方が利益につながるが、国内で商用生産となる案件が少ない」と明示しています。富士フイルム・AGCがバイオCDMOで世界展開しているのは、国内市場だけでは規模が不十分なためです。この「海外顧客依存のCDMO事業」は為替リスクと海外規制動向の影響を受けます。
日本成長戦略会議 第3回「先行して検討を進めている主要な製品技術等の官民投資ロードマップ素案」(2026年3月)は「感染症危機の備えと平時稼働率とのギャップ」を課題として明示しています。ワクチン等の感染症対応医薬品の製造拠点を安全保障的に維持するためには、平時の稼働率が低くてもコストを負担する仕組みが必要ですが、民間企業が自発的にこれを担うことは難しい構造です。AGCがパンデミック時にはワクチン製造に切り替えできる「デュアルユース仕様」の拠点を整備している(AGC・2024年)のは、この課題への一つの対応です。
同資料は「新規製造拠点(CDMO等)の製造実績未確立による受注不確実性、海外への訴求力」を課題として明示しています。バイオ医薬品製造において製薬会社は「実績のある製造拠点」を強く選好するため、新規拠点が最初の商業受注を得るまでの期間(一般的に数年〜5年程度)の収益確保が困難という構造的課題があります。これが再生医療CDMO育成への補助金(経産省・4年間383億円)が必要とされる背景です。
| 章 | 指標名 | 数値・事実 | 出典・時点 |
|---|---|---|---|
| 第2章 | 第一三共 売上収益 | 1兆8,862億円(2025年3月期・IFRS・5期連続過去最高) | 第一三共 決算短信 2025年4月 |
| 第2章 | エンハーツ 売上収益 | 4,638億円(2024年度・前期比+38.6%) | 同上 |
| 第2章 | 第一三共 研究開発費 | 4,329億円(2025年3月期・前期比+18.8%) | 同上 |
| 第2章 | 第一三共 ADC向け設備投資 | 約6,000億円(2021〜2025年度中計期間) | AnswersNews 2025年3月 |
| 第2章 | アストラゼネカとのADC提携総額 | 3.3兆円 | 各種報道 |
| 第2章 | エンハーツ ピーク時需要予測 | 年間5,000万バイアル超(2021年比約1.5倍) | AnswersNews 2025年3月 |
| 第3章 | 富士フイルム バイオCDMO売上成長率 | 年平均30%(継続中) | 日経 2025年1月 |
| 第3章 | 富士フイルム バイオCDMO 2030年目標 | 売上高5,000億円(2021比3.3倍) | ニュースイッチ |
| 第3章 | 富士フイルム バイオCDMO累計投資 | 1兆円超 | 日経 2025年1月 |
| 第3章 | 富士フイルム デンマーク拠点 | 2024年11月に2万Lタンク6基稼働開始 | 日経 2025年1月 |
| 第4章 | AGC バイオCDMO市場成長率(推計) | 年率10%程度以上 | AGC QA会 2025年9月 |
| 第5章 | クオリプス 承認申請 | iPS細胞由来心筋シートの承認申請資料(臨床パート)を2024年12月2日提出 | 再生医療.net 2025年1月 |
| 第5章 | 再生医療CDMO補助金 | 4年間総額383億円(経産省・2025年7月採択) | 経産省 2025年7月 |
【免責事項】本レポートは就職・転職および投資判断の参考情報として作成されたものであり、特定の投資・転職行動を推奨するものではありません。医薬品の承認は規制当局の判断によるものであり申請から承認が保証されるものではありません。「政策目標として示されている」と注記した数値は政府が目標として掲げた値であり達成を保証するものではありません。データ基準時点は2026年04月です。
© 2026年04月 産業構造分析レポート ── バイオ医薬品・再生医療等製品等(内部環境編)