| 業態 | 主な役割 | 代表プレイヤー(日本中心) | 収益の性格 |
|---|---|---|---|
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国産eVTOL
OEMメーカー |
機体の設計・開発・製造・型式証明取得・商用運航サービスの提供。日本国内では事実上SkyDriveが唯一の有力プレイヤー。 | SkyDrive(愛知県豊田市・2018年設立) | 現段階は開発投資先行・収益なし。型式証明取得・商用運航開始後に機体販売・運航サービス収益が発生する予定。累計430億円超の資金調達で開発継続中。 |
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機体製造・技術
パートナー |
eVTOL機体の製造工程・部品供給・技術支援を担う既存自動車・製造業メーカー。 | スズキ(機体製造を2024年から開始・技術連携)、豊田鉄工、日本発條、ユニバンス | SkyDriveへの出資+製造・技術協力。商用化後に機体製造受注収益が見込まれる。現段階は投資・協力フェーズ。 |
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交通インフラ・
運航サービス |
既存の鉄道・航空インフラとeVTOLを連携させ、陸空シームレス移動を提供する運航事業者。 | JR東日本・JR九州(資本業務提携)、Osaka Metro・近鉄GHD(資本業務提携)、ANAホールディングス(Volocopter提携) | SkyDriveへの出資+バーティポート整備・航路開発。商用化後の運航収益を見込む。現段階は準備・提携フェーズ。 |
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部品・素材
サプライヤー |
eVTOL向けの電動モーター・バッテリー・CFRP等の高性能軽量素材・電子部品の供給。 | 村田製作所(出資実績)、東レ(CFRP)、日本電産(モーター研究)等 | 部品・素材の供給収益。市場規模が拡大するほど需要が増加する構造。現段階は試作・開発協力フェーズ。 |
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運航管理・
周辺インフラ |
UTM(UAM空域管理)・バーティポート設計・保険・地図データ等の周辺業態。 | NEC(空域管理)、大林組(出資・インフラ整備)、関西電力(出資・インフラ)等 | サービス収益型。eVTOLの社会実装が進むにつれて需要が拡大する構造。 |
空飛ぶクルマ産業(eVTOL)は現在、世界的に「認証完了まで商用収益が発生しない」という特殊な産業段階にあります。機体が完成しても型式証明がなければ乗客を乗せて飛ぶことができず、機体の売上も発生しません。このため業界全体が「開発投資先行・長期赤字・資金調達継続が事業継続の条件」という構造にあります。
世界的な先行企業Joby Aviation(米国)は2025年時点でナスダック上場済みながら大幅赤字が続いており、2024年の純損失は約8.3億ドルと報じられています。これは世界トップ級の先行企業でも「認証取得前は赤字継続が正常状態」であることを示しています。日本のSkyDriveも同様の構造にあり、現段階での収益は原則として資金調達・補助金に依存しています。
SkyDriveは2025年の大阪・関西万博でのデモフライト成功(143万人超が来場)・7カ国380機超のプレオーダー受付開始という形で事業の現実性を投資家・パートナー企業に示しています。これらは直接の収益ではなく、次の資金調達ラウンド・パートナー獲得・社会受容性向上のための「事業の可視化」として機能しています。
| 指標 | 数値 | 出典・時点 |
|---|---|---|
| 累計資金調達額 | 430億円超(2025年7月時点) | SkyDrive 2025年7月 |
| プレシリーズDラウンド | 83億円(2025年7月・三菱UFJ銀行・スズキ・JR東日本・JR九州等11社) | 同上 |
| 設立年 | 2018年 | SkyDrive公式 |
| 社員数 | 300名以上のスペシャリスト(世界各国から) | SkyDrive採用ページ 2025年 |
| エンジニア外国籍比率 | 約4割(2025年12月時点) | SkyDrive 2025年12月 |
| プレオーダー数 | 7カ国380機超(2025年7月時点) | SkyDrive 2025年7月 |
| 大阪万博 来場者数(AAMステーション) | 143万人超(2025年4〜8月) | SkyDrive CEO Insights 2026年1月 |
| 万博デモフライト期間 | 2025年4月〜・7月31日〜8月24日に期間延長実施 | SkyDrive公式 |
| 商用運航目標 | 2028年(日本・大分県・岩手県等) | 各パートナー発表 |
| 飛行試験場 | 愛知県豊田市・山口県の2カ所(自社) | SkyDrive 2025年12月 |
| 型式証明 適用基準発行 | 2025年2月10日(国土交通省) | SkyDrive 2025年2月 |
| 証明計画策定フェーズ | 2026年3月時点(航空局との協議中) | SkyDrive公式 |
スズキはSkyDriveへの出資に加え、2022年8月に「空飛ぶクルマ」の事業・技術連携に関する協定を締結。2024年より機体製造を開始しており、SkyDriveのCEOは「スズキ様の多大なるご支援のもと完成した機体は無事故での飛行試験を積み重ねた」と述べています(SkyDrive・2025年7月)。スズキにとってeVTOLは「二輪・四輪・マリンに次ぐ新たなモビリティ事業の一つとして育成する」という位置づけです(スズキ有価証券報告書・2024年6月)。
JR東日本はSkyDriveとの資本業務提携(2025年7月)を通じ、岩手県での運航エリア検討を開始しています。JR九州は大分県での2028年サービス開始を目標に、大分県の補助金(令和7年度次世代空モビリティ商用サービス開発事業費補助金)を活用した調査事業を開始しています。鉄道会社としての参画理由は「既存の交通ネットワークとeVTOLを組み合わせ陸と空をシームレスにつなぐ」という事業シナジーです。
ANAホールディングスはドイツVolocopterと提携しており、Volocopterのエアタクシーサービスの日本での展開を検討しています。Volocopterは2025年に欧州での型式証明取得・商業飛行開始を目指す有力プレイヤーです。
トヨタはSkyDriveの創業期に4,500万円の支援金を提供した経緯があります。また子会社ウーブン・バイ・トヨタはモビリティ分野の研究開発を担っており、eVTOL領域との接点も持ちます。ただし現段階でのトヨタとSkyDriveの直接的な出資関係は公開情報からは確認されていません。
SkyDriveは2018年の設立から7年以上にわたり開発投資先行を続けており、2026年3月現在も型式証明取得の最終段階には至っていません。累計430億円超の資金調達を継続しているものの、型式証明取得・量産体制確立・商用運航開始というマイルストーンを達成するまでさらに投資が必要です。「資金調達の継続性が事業継続の条件」という構造は2028年の商用運航開始まで続きます。
三菱スペースジェット(MRJ)は2023年2月に開発中止となりましたが、その最大の原因はFAAの型式証明取得の困難さとされています。「書類提出・設計変更・再試験」のサイクルが想定を超えて繰り返され、開発費が膨らみ最終的に中止に至りました。SkyDriveはMRJ副社長経験者をCTOとして招聘し、この教訓を踏まえた認証プロセスを構築しています(SkyDrive公式・EMIRA 2020年)。ただし「MRJの二の舞になりかねない」という懸念も業界関係者から指摘されています(沢田雅之 note・2025年2月)。
欧州の有力eVTOL企業Lilium(ドイツ)は2024年に経営破綻(その後新会社として再建手続き)しました。世界に300社超の開発企業が存在する一方で、資金調達・認証取得の困難さから多くの企業が縮小・撤退しています。日本国内でも空飛ぶクルマ開発企業A.L.I.Technologiesが経営破綻(2022年)しています。「先頭集団に残り続けること」が市場形成後の受益を得る条件であり、そのための資金調達継続が業界全体の課題です。
| 章 | 指標名 | 数値 | 出典・時点 |
|---|---|---|---|
| 第3章 | SkyDrive 累計資金調達額 | 430億円超(2025年7月時点) | SkyDrive 2025年7月 |
| 第3章 | SkyDrive プレシリーズDラウンド | 83億円(2025年7月・11社) | 同上 |
| 第3章 | SkyDrive プレオーダー | 7カ国380機超(2025年7月) | 同上 |
| 第3章 | 万博AAMステーション来場者 | 143万人超(2025年) | SkyDrive CEO Insights 2026年1月 |
| 第3章 | SkyDrive 社員数・外国籍比率 | 300名超・エンジニア約4割外国籍 | SkyDrive 2025年 |
| 第3章 | SkyDrive 商用運航目標 | 2028年(日本) | 各パートナー発表 |
| 第5章 | 飛行試験エンジニア 予定年収 | 600万〜1,300万円 | 自動運転ラボ 2024年 |
【免責事項】本レポートは就職・転職および投資判断の参考情報として作成されたものであり、特定の投資・転職行動を推奨するものではありません。SkyDriveは非上場企業のため財務詳細の開示は限定的です。プレオーダーは確定受注ではありません。年収データは公開された求人情報に基づく参考値です。「2028年商用運航」は各社の目標値であり確定した予定ではありません。データ基準時点は2026年04月です。
© 2026年04月 産業構造分析レポート ── 空飛ぶクルマ(eVTOL・AAM)(内部環境編)