① 初期コスト:大型革新電炉等への初期投資負担が大きい
// ROADMAP
初期コスト:大型革新電炉等への初期投資負担が大きい。
// BOTTLENECK
世界最大規模の革新電炉(JFE倉敷)は1基あたり数千億円規模の投資が必要とされる。業界全体で2050年CNに向け10兆円規模の投資が必要(日本鉄鋼連盟)という数字は、この一社一炉あたりの投資規模が業界全体での課題規模を示している。「高炉の改修時期に合わせた導入が必要であるところ、改修時期が期近となる中、とりわけ早期に実装可能な革新電炉について投資判断のリミットが間近に迫っている」(JFE社資料)という現実は、「待てない」という切迫感を生んでいる。
// 官の動き(直近2ヶ月)
-
「排出削減が困難な産業におけるエネルギー・製造プロセス転換支援事業」:JFEスチール倉敷革新電炉の転換を採択。初期投資負担を国が一部補助
NEDO/METI
-
GI基金「製鉄プロセスにおける水素活用」(上限4,499億円)の継続支援
経産省 2025.4
// 民の動き(直近2ヶ月)
-
JFEスチール:2025年3月に倉敷革新電炉の機関決定。政府支援を前提とした投資判断。「高炉には生産効率等の面で優位性がある」(寺畑副社長)としつつも、改修時期に合わせた決断
各種報道
② 原材料:高品位スクラップの安定調達の困難さ・還元鉄の高価格
// ROADMAP
原材料:世界的に高品位スクラップへの需要が高まる中で、安定的な高品位スクラップの調達が必要。還元鉄は少なくとも当初は高価格が見込まれる。
// BOTTLENECK
高品位スクラップとは、不純物(銅・ニッケル等)の含有量が少なく、電炉で自動車外板・電磁鋼板等の高品質鋼材を製造できる原料となるスクラップだ。欧州をはじめ各国が電炉化を進める中で、この高品位スクラップへの需要が世界的に急増しており、供給量が需要増加に追いついていない状況だ。「各国が確保に動くことが予想される中、国内でのサプライチェーンを構築し供給能力を高めることで、国産資源確保につなげる」(ロードマップ素案)という記述は、スクラップが実質的な「戦略資源」として扱われていることを示す。
// 海外動向
欧州
欧州での電炉化加速(ArcelorMittal・SSABの大型投資)により、欧州域内の高品位スクラップ需要が急増。日本からのスクラップ輸出への需要も高まりつつあり、「国内で使えるスクラップが海外に流出するリスク」も生じうる。
③ インフラ:安価・安定な脱炭素電力・水素の確保、CCSの実施環境について不透明
// ROADMAP
インフラ:安価・安定な脱炭素電力・水素の確保、CCSの実施環境について不透明。
// BOTTLENECK
グリーン鉄の製造コストは「電力コスト」「水素コスト」「CCS(CO2回収・貯留)コスト」の3つに大きく依存する。革新電炉はスクラップを電気で溶解するため、大量の電力を消費する——しかもグリーン鉄としての環境価値を主張するには「再生可能エネルギー由来の電力」である必要がある。⑳水素等分野でも論じた水素価格の問題が、水素還元製鉄のコストを左右する。CCSは国内での実施基盤がまだ整備途上だ。
④ 需要:グリーン鉄への短期的需要の不透明性・GX価値の見える化が道半ば
// ROADMAP
需要:従来よりも高価格となるグリーン鉄への需要が短期的に創出されるか現時点において不透明。また、グリーン鉄のGX価値の見える化及び国際標準への反映は道半ば。
// BOTTLENECK
「GX価値の見える化が道半ば」という課題は、⑲ペロブスカイト太陽電池の「非価格価値の具体化」や⑮バイオものづくりの「LCAガイドライン策定」と同じ構造の問題だ。グリーン鉄が「1トンあたりのCO2排出量が何%削減されているか」を統一した方法論で測定・表示し、国際的に承認された基準(ISO規格等)として確立されなければ、「グリーン鉄のプレミアム価格」を需要家が正当化できない。マスバランス方式の国際ルール化は、この「GX価値の見える化」の核心的な取組だが、世界共通ルールの合意にはなお時間を要する。
// 官の動き(直近2ヶ月)
-
グリーン購入法に基づくグリーン鉄の優先調達・公共工事での試行工事実施を推進。「グリーン鉄を買う需要家が短期に現れる」ために、政府が率先して需要を創出
ロードマップ素案 2026.3
// 民の動き(直近2ヶ月)
-
鉄鋼3社:マスバランス方式の世界共通ルール化に向け世界鉄鋼連盟での標準化活動を継続中。社内体制の整備完了(GREINS、2025年4月)
GREINS 2025.4
-
JFEスチール「JGreeX®」:造船・建築・変圧器等に販売中。国内海運8社に採用され「CO2削減価値をサプライチェーン全体で広く負担する社会分配モデルを世界に先駆けて構築」(JFE)
JFEスチール