MARKET SUPPORTER AI | 進捗モニタリング編No.01 総論
日本成長戦略 進捗モニタリング編

日本成長戦略、決定後の進捗(2026年7月〜10月)
予算・実行計画・特別会計・地域未来戦略の現在地

2026年6月24日の合同会議で案が示され、7月21日に決定された「日本成長戦略」と「官民投資ロードマップ」。その後、予算要求、実行計画の策定方針、特別会計、PDCAの進め方、地域未来戦略の計画策定がどこまで進んだかを、一次資料の事実と数値で整理します。

作成:2026-10-19 | データ基準時点:2026年10月

CHAPTER 01

出発点:6月24日の「案」と7月21日の「決定」

2026年6月24日、首相官邸で第8回経済財政諮問会議・第5回日本成長戦略会議の合同会議が開催され、「戦略17分野における『主要な製品・技術等』の官民投資ロードマップ(案)」が示されました。この時点の位置づけは「案」です。

正式な決定は2026年7月21日です。同日、「日本成長戦略」と「経済財政運営と改革の基本方針2026」(骨太方針2026)、「地域未来戦略」が閣議決定され、官民投資ロードマップは日本成長戦略本部で決定されました。

17分野
危機管理投資・成長投資の戦略分野
62品目
官民投資ロードマップを策定した「主要な製品・技術等」
370兆円超
2040年度までの官民の国内投資の想定規模(累計)(政策目標として示されている値)

日本成長戦略は、ロードマップに基づく総合支援策の着実な実行を前提に、62品目全体の官民の国内投資の規模を2040年度までに累計370兆円超としています。

首相官邸「経済財政諮問会議・日本成長戦略会議合同会議」(2026年6月24日) 内閣官房「日本成長戦略」(2026年7月21日閣議決定) 内閣官房「戦略17分野における『主要な製品・技術等』の官民投資ロードマップ」(2026年7月21日日本成長戦略本部決定)
CHAPTER 02

予算への反映:概算要求と「強く豊かな日本」投資枠

概算要求基準(7月30日閣議了解)

2027年度(令和9年度)予算の概算要求基準は、2026年7月30日に閣議了解されました。新設の「強く豊かな日本」投資枠は、補正予算依存の財政運営から脱却する方針も踏まえ、要求上限を設けず、事項要求を含めた要求を認めています。

概算要求の集計(9月4日財務省公表)

143兆656億円
2027年度一般会計 概算要求・要望額等の総額
12兆1,730億円
うち「強く豊かな日本」投資枠
省庁投資枠の要求額備考
厚生労働省1兆337億円一般会計の要求総額は36兆5,803億円
総務省5,033億円+事項要求国内投資を通じた潜在成長率の引上げにつながる施策

投資枠の予算編成の考え方(財務省)

  • 国内投資を通じた潜在成長率の引上げにつながる施策を、予見可能性を持って実施できるよう、通常歳出と別に創設する。
  • 複数年度の計画に基づくものを基本とし、計画には「誰が、いつまでに、なにを、どのように行うのか」(5W1H)の明確化が求められる。
  • 収益化や自律性・不可欠性の確保につながる根拠(勝ち筋)が検証可能な形で明確化されているか、進捗・成果をモニタリングする枠組みがあるか、という着眼点で精査する。
  • 投資枠のうち経済安全保障上重要な投資は、特別会計で別枠管理する。
概算要求は各府省の要求段階の金額であり、予算額として確定したものではありません。予算額は年末の政府予算案の決定に向けた予算編成過程で精査されます。
財務省「令和9年度一般会計概算要求・要望額・『「強く豊かな日本」投資枠』等」(2026年9月4日) 財務省「『「強く豊かな日本」投資枠』の予算編成についての考え方」 財務省「令和9年度概算要求基準の概要」(ファイナンス 2026年9月号) 総務省「令和9年度総務省所管予算 概算要求の概要」(2026年8月)
CHAPTER 03

日本成長戦略実行計画の策定方針

2026年10月1日の第8回日本成長戦略会議で、年末までに「日本成長戦略実行計画」を策定する方針が示されました。10月16日の第5回戦略分野分科会でも同じ方針が確認されています。

実行計画に盛り込む内容
  1. 17の戦略分野・62の製品などのうち、「足元の収益源」「今後の稼ぎ頭」「経済安全保障の強化」の観点から重点的に取り組む分野における、2030年頃までの今後5か年の民間を中心とした国内投資の内容と投資額(「投資事業計画」)
  2. 17の戦略分野と8つの分野横断的課題への対応のうち主要な政策について、「強く豊かな日本」投資枠を活用した複数年度にわたる予算事業など

62品目の3類型

62の官民投資ロードマップを、経済波及効果や技術・事業フェーズの時間軸の違いがあるポートフォリオと捉え、次の項目を明示する方針です。

  • ①足下の収益源となるもの
  • ②今後の稼ぎ頭であり、波及効果が大きいもの
  • ③経済安全保障の観点での波及効果が特に大きいもの

策定の時期と期間

今後5年間を「集中投資期間」と位置づけ、主として当該期間をカバーする計画とします。内容は予算編成プロセスと並行して詰め、政府予算案の決定時に策定するとされています。

当面の検討課題(10月1日 資料2)

  • 実行計画に盛り込むべき重点項目の明確化
  • 投資環境整備:①建設供給力不足への対応、②資金供給力への対応、③AI戦略・AI社会実装に向けた対応、④データセンターや半導体工場等の拡大に伴う電力インフラの確保

総理指示(10月1日)の主な項目

  • 実行計画で、今後5年間の国内投資の道筋とともに、複数年度で達成すべき目標、必要な予算額、期待する効果、勝ち筋を切り拓く方策を明らかにする。
  • 建設分野の人手不足解消に向け、政府横断の検討の場を創設し、年末までに政策パッケージをとりまとめる。
  • 年末までに、①信頼できるAIで社会全体を駆動するAXの具体像、②AXに対応した規制・制度改革の原則、③社会実装を加速するためのアクションプランをまとめる。
  • 各省庁は、戦略17分野・8つの横断的課題の重点課題に取り組む責任体制を明確化する。
策定の背景として示された数値(10月1日 資料1)

2025年度の民間企業設備投資は年128兆円と過去最高水準。春季労使交渉では3年連続で5%台の賃上げが実現したとされています。

内閣官房 第8回日本成長戦略会議 資料1「『日本成長戦略実行計画』の策定にあたって」(2026年10月1日) 同 資料2「当面の検討課題(案)」 首相官邸「日本成長戦略会議」総理発言(2026年10月1日) 内閣官房 第5回戦略分野分科会 資料1(2026年10月16日)
CHAPTER 04

特別会計とつなぎ国債の仕組み

10月1日の会議資料3は、「強く豊かな日本」投資枠のうち、経済安全保障上特に重要な分野などを特別会計で別枠管理する仕組みのイメージを示しました。

  • 目的:複数年度で十分な財源を確保し、複数年度にわたる大規模かつ計画的な公的支援にコミットすることで、投資の予見可能性を高める。
  • 対象:国内民間設備投資や潜在成長率を大きく引き上げる観点から政府が支援すべき対象で、経済安全保障上重要な分野などに係る事業。
  • 基本条件:一定期間の支援で収益化につながり民間投資の呼び水となる、または自律性・不可欠性の確保につながるなど、政策的推進の根拠が明確であること。
  • 財源:複数年度の財源を確保した上で、それを裏付けとする「つなぎ国債」を発行し、前倒しの財政支出を可能にする。
  • 今後:来年度予算から政策を実行するため、つなぎ国債の発行、特別会計の設置、支援措置の実施に必要な法的措置を関係省庁が連携して検討する。
資料が挙げる「つなぎ国債」の既存例

東日本大震災の復興財源確保までのつなぎとしての「復興債」、GX推進に向けた「脱炭素成長型経済構造移行債」、「AI・半導体産業基盤強化フレーム」における「先端半導体・人工知能関連技術債」。

内閣官房 第8回日本成長戦略会議 資料3「『「強く豊かな日本」投資枠』における特別会計について」(2026年10月1日)
CHAPTER 05

官民投資ロードマップのPDCA

10月16日の第5回戦略分野分科会で、官民投資ロードマップを「絵に描いた餅に終わらせない」ための「PDCAメカニズム」の具体的な進め方が示されました。

段階内容時期
P(Plan)実行計画の策定プロセスや予算編成プロセスの中で、真に効果のある施策を作り込む年末まで
D(Do)予算事業・税制措置の要求・執行状況、法案提出を含む制度改革等の取組状況を整理2027年1月頃
C(Check)各分野のWG等で、施策の実行状況、技術の開発動向、グローバル環境の変化、競合の動向から見直しの要否を検証2027年1月頃以降
A(Action)施策のブラッシュアップや官民投資計画の見直しを行い、ロードマップ改訂等に反映2027年春

最初の取組状況報告

同分科会では、「官民投資ロードマップ」で掲げた主な施策の取組状況として、フィジカルAI、次世代船舶、ゲームの3品目が報告されました。いずれの資料も非公開です。

内閣官房 第5回戦略分野分科会 資料2「『官民投資ロードマップ』における『PDCAメカニズム』の具体的な進め方」(2026年10月16日) 同 議事次第
CHAPTER 06

地域未来戦略:3類型の計画と予算パッケージ

地域未来戦略は2026年7月21日に閣議決定されました。日本成長戦略の17の戦略分野に関連する企業の大規模投資を起点に、地域に産業クラスターを形成する位置づけです。

類型内容
A.戦略産業クラスター計画17分野に関連する企業の大規模投資を起点とする産業クラスター
B.地域産業クラスター計画都道府県が主導する産業クラスター。戦略分野のサプライチェーンを構成する産業などが含まれうる
C.地場産業成長プラン市町村が主導し、地場産業を含む地域の産業を育成

計画の報告状況

日付会議報告された計画
7月31日関係副大臣等会議(第5回)A計画13、B計画6、C計画4
8月28日関係副大臣等会議(第6回)A計画1、B計画25、C計画3。あわせて「地域未来戦略予算パッケージ」を報告
9月30日関係副大臣等会議(第7回)B計画・C計画の追加報告。今後、B/C計画は月に1回程度、知事・市長等から報告を行う方針

内閣官房の公表ページ(2026年10月19日確認)では、A計画14件、B計画47件(このほか宮城県の2件は後日掲載)、C計画11件が掲載されています。

A.戦略産業クラスター計画(14件)の分野内訳

半導体4件(北海道・東北・広島県内・九州)、洋上風力3件(北海道・東北・九州)、次世代船舶2件(瀬戸内・九州)、ロケット・射場2件(北海道・近畿)、民間航空機MRO1件(千葉県成田空港周辺)、空飛ぶクルマ1件(近畿)、バイオ・先端医療1件(近畿)。

地域未来戦略予算パッケージ(8月28日)

  • 既存の予算とは別枠かつ追加的な予算として「地域未来特別枠」を設ける。
  • インフラ・拠点整備として「戦略産業クラスターインフラ整備費」(仮称)、「戦略産業クラスター拠点整備等補助金」(仮称)を創設する。
  • 地域未来交付金を拡充し、「産業振興型」(仮称)と「産業関連インフラ型」(仮称)を創設する。「地域未来推進費」(仮称)も創設する。
  • 複数年度の事業費と予算規模を明記した「地域未来戦略実現フレーム」(仮称)を年末までに策定する。
内閣官房 地域未来戦略本部「地域未来戦略」(2026年7月21日閣議決定) 内閣官房 第5回日本成長戦略会議 資料7「地域未来戦略の政策パッケージ」(2026年6月24日) 内閣官房 地域未来戦略に関する関係副大臣等会議(第6回)資料3「地域未来戦略予算パッケージ(概要)」(2026年8月28日) 同(第7回)資料1「地域未来戦略における『3類型』の計画のこれまでの取組状況と今後の進め方」(2026年9月30日) 内閣官房「地域未来戦略に関する3類型の計画」
CHAPTER 07

経済財政諮問会議:中長期経済財政計画の点検

2026年10月9日の第14回経済財政諮問会議では、骨太方針2026に盛り込まれた「中長期経済財政計画」の実行について議論が行われました。

  • 民間議員からの提案:各「重要戦略」と経済財政の目指す姿との整合性、各重要分野の施策の分析・検証と予算などへの反映、「経済・財政一体改革推進委員会」の再構築。
  • 総理発言:「経済・財政の状況」と「政策効果」を継続的に点検し、必要な見直しにつなげるとともに、中長期的な経済財政運営の考え方や見通しを示していく。
首相官邸「経済財政諮問会議」総理発言(2026年10月9日)
CHAPTER 08

今後のスケジュール

時期予定されている事項出典
2026年末日本成長戦略実行計画の策定(政府予算案の決定時)10/1 資料1
2026年末2027年度政府予算案(投資枠の予算額の確定)財務省
2026年末までAXの具体像・規制改革の原則・アクションプラン10/1 総理発言
2026年末まで建設分野の人手不足に関する政策パッケージ10/1 総理発言
2026年末まで地域未来戦略実現フレーム(仮称)8/28 資料3
来年度予算まで特別会計・つなぎ国債の法的措置の検討10/1 資料3
2027年1月頃PDCAの「D」:施策の取組状況の整理10/16 資料2
2027年春官民投資ロードマップの改訂等10/16 資料2
今後5年間集中投資期間(2030年頃までの5か年の投資事業計画)10/1 資料1
📌

次回以降の進捗モニタリング編

先行して検討が進められた品目の個別の進捗を、概算要求や各WGの公表資料をもとに順次整理する予定です。17分野別の整理は、年末の日本成長戦略実行計画の策定後に行います。

免責事項

本レポートは就職・転職および投資判断の参考情報として作成されたものであり、特定の投資・転職行動を推奨するものではありません。掲載データは各記載出典(政府・省庁の公表資料)に基づきますが、数値の正確性・完全性を保証するものではありません。投資判断は自己責任において行ってください。本レポートの内容は作成時点の情報に基づいており、予算編成・政策変更等により実態が変化する可能性があります。概算要求額は要求段階の金額であり、予算額として確定したものではありません。個別企業に関する投資推奨は一切含みません。データ基準時点は2026年10月です。

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