| 企業・機関 | 水素等での役割 | 重点製品 | 事業化ステージ |
|---|---|---|---|
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三菱重工業
(7011) |
ガスタービン(混焼・専焼)・水素製造(SOEC等)・アンモニア分解(HyMACS) | 水素アンモニア混焼/専焼タービン。JAC形(45万kW)での30%混焼実証済み・中型H-25形での100%専焼実証済み。2030年に大型100%専焼実用化目標。アンモニア分解システムHyMACSの世界初パイロット実証成功(2025年12月)。 | 実証→商用化(2030年大型100%専焼目標) |
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川崎重工業
(7012) |
液化水素関連機器(運搬船・貯蔵タンク・受入基地)・水素ガスタービン・水電解装置 | 世界初の液化水素運搬船「すいそふろんてぃあ」建造済み。JSE(日本水素エネルギー)幹事として川崎臨海部に国内受入基地建設着工(2025年5月)。水素事業規模:2030年に3,000億円・2040年に5,000億円計画。 | 商用化実証段階(大型化・スケールアップ中) |
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旭化成
(3407) |
アルカリ水電解装置(システム一式) | 1975年からのイオン交換膜法食塩電解技術(50年の蓄積)を水電解に転用。川崎製造所に新工場建設決定(投資約310億円・2028年度稼働)。年間2GW超の水電解生産能力構築目標(食塩電解含め3GW超)。 | 量産投資決定(2028年稼働予定) |
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JERA
(非上場・東電・中部電合弁) |
アンモニア混焼火力発電(需要側) | 2024年7月:碧南火力発電所(愛知県)で石炭火力への20%アンモニア混焼実証試験成功。2027年からの商業運転を予定。アンモニア混焼の商業規模実証としては世界最大級。 | 実証成功→2027年商業運転予定 |
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岩谷産業
(8088) |
水素ステーション・液化水素供給・水素インフラ整備 | 国内水素ステーション運営でシェア最大級(イワタニ水素ステーション)。液化水素の製造・供給・貯蔵の一貫事業を展開。川崎重工との連携でHySTRAコンソーシアムに参画。 | 商用段階(ステーション運営中) |
三菱重工業(7011)のJ/JAC形ガスタービン(最新鋭・タービン入口温度1,650℃級)は2025年に累計受注**172台超**・稼働時間**300万時間突破**という実績に達しています(三菱重工業 ガスタービン事業概要資料・2025年10月)。世界のガスタービン市場の年間発注量は2024年に**57.4GW**(2019〜2020年頃の約40GWから大幅増加)となり、2025年は上半期だけで41.7GWに達し年間では70GW程度になる見込みです(同)。北米では2025年上半期で前年通年の発注量を超えています。
三菱重工は高砂製作所(兵庫県高砂市)に「高砂水素パーク」を整備しており、水素の製造・貯蔵・発電(利用)まで一貫して検証できる世界初の拠点として運用しています(三菱重工業 公式)。主な実証の進捗は以下の通りです。JAC形(45万kW級)での**水素30%混焼**:2023年11月に世界初の地域電力網接続状態での大型ガスタービン発電実証に成功。中型H-25形(4万kW級)での**水素100%専焼**:2024年に実証開始。大型JAC形での**100%専焼**は2025年度以降にマルチクラスター燃焼器の開発完了後・**2030年までに実用化**を目標としています(ニュースイッチ・2024年)。
三菱重工は2025年12月10日、独自のアンモニア分解システム「HyMACS(ハイマックス)」を用いて、蒸気を加熱源として原料のアンモニアを分解し、純度**99%の水素**を製造することに成功したと発表しました(ITmedia・2025年12月)。同社の調べによれば、蒸気加熱方式によるパイロットスケールでの水素製造は**世界初**です。アンモニアは液化水素(-253℃)と異なり-33℃で液化できるため輸送インフラが既存のケミカルタンカーが使えるメリットがあり、HyMACSはアンモニアから水素を効率的に抽出する手段として位置づけられています。
川崎重工業(7012)は世界各国から約50件程度の水素関連プロジェクトの検討依頼を受けており、水素事業規模を**2030年に3,000億円・2040年に5,000億円**に達する計画としています(川崎重工業 サステナビリティボンド IR資料)。川崎重工業の全社売上高は約**2兆1,000億円**(2024年3月期)であり、水素事業は中長期の成長ドライバーと位置づけられています。
川崎重工業は世界初の液化水素運搬船「すいそふろんてぃあ」を建造し、2022年に日豪間での液化水素国際サプライチェーン実証(日本・オーストラリア間パイロットプロジェクト)を成功させました(川崎重工業 公式・HySTRA)。これは外部環境編で示した「液化水素サプライチェーン全体の製造能力は世界唯一」という技術優位の中核的事例です。
川崎重工業が幹事会社を務める日本水素エネルギー株式会社(JSE)は、2025年5月に液化水素サプライチェーン構築に向けた商用化実証における国内基地(神奈川県川崎市川崎区・JFEスチール東日本製鉄所京浜地区跡地)の建設工事に着工しました(川崎重工業・JSE プレスリリース・2025年5月26日)。GI基金事業の「液化水素サプライチェーンの商用化実証」の一環であり、世界初の商用規模の液化水素受入基地となる計画です。
豪州ビクトリア州での褐炭由来のブルー水素製造計画が2024年に頓挫した結果、2030年に予定していた大型輸送船(16万m³)を4分の1の規模の中型船(4万m³)に変更することが明らかになっています(自然エネルギー財団・2025年5月)。この計画変更は「水素コスト低減計画の大きな変更」につながるものであり(同)、外部環境編が示した「一時の高水準の予測からは減速しつつも堅調に推移」という状況の具体例です。川崎重工業は「液化水素船でのグローバルサプライチェーン構築事業は全くトーンダウンすることなく、着実に進めていく」(西村氏・2025年3月)としています(ニュースイッチ・2025年3月)。
旭化成(3407)は2025年10月23日、川崎製造所(神奈川県川崎市)においてクリーン水素製造用アルカリ水電解システムの生産能力を拡大するための新工場建設計画を正式に決定しました(旭化成 プレスリリース・2025年10月23日)。投資額は約**310億円**(うち最大1/3はGXサプライチェーン構築支援事業補助金)で、**2028年度の稼働開始**を予定しています。新工場では電解用枠・電解用膜それぞれで年間**2GW超**の生産能力を備え、既存の食塩電解プロセス向け設備と合わせて年間**3GW超**の生産能力を構築します(同)。
旭化成は1975年よりイオン交換膜法食塩電解事業を手掛けており、膜・電解槽・電極・運転技術・モニタリングシステムに至るまで食塩電解に関する幅広い技術を50年にわたり蓄積しています(旭化成 プレスリリース・2025年10月)。食塩電解(塩化ナトリウム水溶液を電気分解して塩素・苛性ソーダ等を製造)の技術は、水電解(水を電気分解して水素・酸素を製造)と原理的に共通部分が多く、イオン交換膜・電解槽・電極の技術を転用できます。「水電解市場においてキープレーヤーとなることを目指している」とし、2025年度から本格的な事業化フェーズへ移行しています(同)。
JERA(東京電力フュエル&パワーと中部電力の合弁・非上場)は2024年7月、愛知県の碧南火力発電所(100万kW級の石炭火力)で**20%のアンモニア混焼**の実証試験に成功しました(IEEI・2025年2月)。JERAは世界最大規模の石炭火力事業者であり、この実証は「石炭火力にアンモニアを混焼することで、追加的な設備投資を最小限に抑えながらCO2排出量を削減できる」可能性を示す大規模な実証例です。**2027年からの商業運転**を予定しています(同)。
アンモニア混焼は「化石燃料から完全に脱却する」ことなく、既設の石炭火力をそのまま活用しながら段階的にCO2排出量を削減できる手段です。日本には石炭火力発電の依存度が高いアジア諸国(インドネシア・ベトナム・フィリピン等)へのアンモニア混焼技術の輸出という「経済安全保障×技術輸出」の機会があります。外部環境編で示した「AZEC(アジア・ゼロエミッション共同体)構想」の具体的な技術提供の中核がJERAのアンモニア混焼実証です。
日本成長戦略会議 第3回「先行して検討を進めている主要な製品技術等の官民投資ロードマップ素案」(2026年3月)は「供給側は安定した需要が見込めず能増投資に踏み込めない」「需要側は大規模水素の輸送技術の未確立や燃料価格高騰の影響もあり、投資判断に遅れが生じている」と明示しています。川崎重工業が水素事業を2030年3,000億円・2040年5,000億円という長期スパンで計画を立てているのは、この「鶏と卵」問題の解消に時間がかかるという認識を反映しています。
現時点の水素事業の収益構造は「市場収益」よりも「政府補助金(GI基金・GXサプライチェーン構築支援)+実証費用」が中心です。旭化成の310億円投資の最大1/3はGXサプライチェーン構築支援補助金で賄われます。川崎臨海部の国内基地建設もGI基金事業として実施されます。水素社会推進法に基づく「価格差支援」(水素コストと化石燃料コストの差の補填)が本格始動することで、民間の商用投資が動き始めるという段階的な構造です。
三菱重工業がガスタービン事業で世界シェア4割・累計受注172台超という安定した事業基盤を持つことは、水素・アンモニア対応ガスタービンへの研究開発投資の原資として機能しています。JAC形ガスタービンが市場活況(2025年上半期の発注量が前年通年を上回るペース)にある状況は、水素対応型への転換需要(既設ガスタービンの燃焼器改造等の更新市場)も同時に生み出します(三菱重工業 ガスタービン事業概要・2025年10月)。
川崎重工業の豪州ビクトリア州での褐炭由来ブルー水素製造計画の頓挫(2024年)は、「供給源となる海外プロジェクトの許認可取得・設備建設に必要な時間の長さと不確実性」を示しています(川崎重工業 GI基金説明資料)。液化水素の国際サプライチェーン構築は「製造地(海外)」「運搬」「受入地(日本)」の全ての工程が揃って初めて成立しますが、それぞれが長いリードタイムと高い不確実性を持ちます。川崎臨海部の国内基地が建設着工した一方で、海外の供給側の開発に遅れが生じるという構造問題が明らかになっています。
旭化成の川崎製造所新工場の2028年度稼働は日本の水電解装置量産体制構築の最初の大きなマイルストーンです。ただし「装置の大型化・モジュール化や要素技術の開発・実証、量産体制構築が道半ば。コスト低減が必要」という課題が残っており(資料2・2026年3月)、2028年稼働後もコスト競争力の確立には更なる取り組みが必要です。欧州(ノルウェーのNelやベルギーのJohnCockerill等)・中国(厦門柯勒ガス等)の水電解装置メーカーも量産投資を進めており、競争は継続します。
日本成長戦略会議 第3回「先行して検討を進めている主要な製品技術等の官民投資ロードマップ素案」(2026年3月)は燃料電池の課題として「①水素インフラ不足/運営費の高さ、②車両価格の高さ、③水素価格の高さの3つ巴の課題から、社会実装で急伸する中国に遅れ」と明示しています。FCバス・FCトラック等の商用燃料電池車分野では中国が補助金と量産による価格低減で市場を拡大しており、日本企業との競争が激しくなっています。
| 章 | 指標名 | 数値・事実 | 出典・時点 |
|---|---|---|---|
| 第2章 | 三菱重工 J/JAC形ガスタービン累計受注 | 172台超(2025年) | 三菱重工業 ガスタービン事業概要 2025年10月 |
| 第2章 | 三菱重工 J/JAC形 累計稼働時間 | 300万時間突破(2025年) | 同上 |
| 第2章 | 三菱重工 大型ガスタービン 水素100%専焼 実用化目標 | 2030年(マルチクラスター燃焼器完成後) | ニュースイッチ |
| 第2章 | 三菱重工 HyMACS(アンモニア分解システム) | 蒸気加熱方式によるパイロットスケール水素製造・世界初成功(2025年12月)・純度99% | ITmedia 2025年12月 |
| 第2章 | ガスタービン市場 年間発注量(2024年) | 57.4GW(2024年)・2025年上半期だけで41.7GW | 三菱重工業 ガスタービン事業概要 2025年10月 |
| 第3章 | 川崎重工 水素事業規模計画 | 2030年3,000億円・2040年5,000億円 | 川崎重工業 サステナビリティボンド IR資料 |
| 第3章 | 川崎臨海部 液化水素国内基地 建設工事着工 | 2025年5月(JSE幹事・GI基金事業) | 川崎重工業・JSE PR 2025年5月26日 |
| 第3章 | 川崎重工 液化水素運搬船 計画変更 | 大型船(16万m³)→中型船(4万m³)(豪州計画頓挫の影響) | 自然エネルギー財団 2025年5月 |
| 第4章 | 旭化成 水電解新工場 投資額 | 約310億円(最大1/3はGXサプライチェーン補助金) | 旭化成 PR 2025年10月23日 |
| 第4章 | 旭化成 水電解新工場 稼働予定・生産能力 | 2028年度稼働・年間2GW超(食塩電解含む3GW超) | 同上 |
| 第5章 | JERAのアンモニア混焼実証 | 2024年7月:碧南火力で石炭火力20%アンモニア混焼実証成功・2027年商業運転予定 | IEEI 2025年2月 |
【免責事項】本レポートは就職・転職および投資判断の参考情報として作成されたものであり、特定の投資・転職行動を推奨するものではありません。「政策目標として示されている」と注記した数値は政府が目標として掲げた値であり達成を保証するものではありません。JERAは非上場企業のため財務詳細の開示は限定的です。官民投資の具体的金額は2026年夏の取りまとめ予定であり本時点では未確定です。データ基準時点は2026年04月です。
© 2026年04月 産業構造分析レポート ── 水素等(内部環境編)