官民投資ロードマップで2040年度までに官民6.2兆円の投資が想定されている「水素等」。7月の決定後に動いた、水素大動脈構想実現会議のモビリティ分野ワーキンググループ、第8回水素閣僚会議、経済産業省の2027年度概算要求までを、一次資料の事実と数値で整理します。
「水素等」は、戦略17分野のうち資源・エネルギー安全保障・GX分野の「主要な製品・技術等」です。2026年3月の素案で先行して検討が進められ、7月21日に官民投資ロードマップとして決定されました。
| 製品 | 素案に示された日本の強み・方向性 |
|---|---|
| 水素・アンモニア混焼/専焼タービン | 小規模から発電向け大規模まで世界に先行して商用化。市場シェアの約4割を占めるポジションを活用 |
| 水電解装置 | 耐久性、長期の実証経験、アルカリ型・PEM型・SOECなど多様な方式。量産投資支援でコストダウンとシェア拡大 |
| 液化水素関連機器 | 世界初の液化水素運搬船の開発・製造など、世界で唯一サプライチェーン全体で設備を製造可能。ローディングアーム等の国際標準化で先行 |
| 燃料電池 | セル性能、高耐久性・長寿命、量産技術に強み。欧州・米国・中国で市場シェア拡大を目指す |
素案は、社会実装に向けた最大の課題を「需要創出と価格低減」とし、燃料電池については水素インフラ不足、車両価格、水素価格の3つの課題から、社会実装で中国に遅れているとしています。
ロードマップが投資の呼び水に挙げる水素社会推進法に基づく支援について、経済産業省・資源エネルギー庁の審議会資料(2026年3月〜4月)では、次の状況が示されています。7月〜10月に新たな認定を公表した一次資料は、本レポート作成時点で確認できませんでした。
| 価格差支援の認定案件(資料の掲載順) | 概要 |
|---|---|
| 豊田通商ほか | グリーン水素(愛知製鋼知多工場、年間約1,600トン) |
| レゾナックほか | 水素・アンモニア案件 |
| JERAほか | アンモニア案件 |
| 三井物産ほか | アンモニア案件 |
| やまなしハイドロジェンカンパニー・サントリーほか | グリーン水素(山梨県北杜市、年間1,607トン) |
| やまなしハイドロジェンカンパニー・ヒメジ理化ほか | グリーン水素(福島県田村市・浪江町、年間1,177トン) |
| 時期 | 内容 | 出典 |
|---|---|---|
| 2026年7月 | 経済産業省が「水素・アンモニア保安室」を設置 | 経済産業省資料(9月3日) |
| 2026年9月3日 | 「水素大動脈構想実現会議」の第1回モビリティ分野ワーキンググループを開催 | 経済産業省 |
| 2026年9月10日 | 第8回水素閣僚会議を幕張メッセで開催し、議長サマリーを発出 | NEDO・経済産業省 |
経済産業省の資料によれば、水素大動脈構想は「産業界のコミットの下、官民一体で水素・アンモニアの社会実装を進める重点的な取組群」で、まずは燃料電池自動車(FCV)などモビリティ分野から取り組むとしています。実現会議は2026年6月に第1回が開かれ、モビリティ分野WGは年内をめどに中間整理を行う予定とされています。
NEDOと経済産業省の共催で9月10日に開かれ、議長サマリーでは、水素・アンモニアのエネルギー安全保障や産業サプライチェーンの強靱化における意義、官民連携による需要創出、国際連携による市場形成の重要性が示されたとされています。
経済産業省の2027年度概算要求には、水素等に関する次の事業が計上されています。
| 事業名 | 2027年度要求額 | 前年度等 | 区分 |
|---|---|---|---|
| 水素等のサプライチェーン構築のための価格差に着目した支援事業 | 655億円 | 2026年度当初 363億円 | 投資枠(GX) |
| 低炭素水素等拠点整備支援事業 | 275億円 | 2026年度当初 415億円 | 投資枠(GX) |
| 競争的な水素等サプライチェーン構築に向けた技術開発事業 | 78億円 | 2026年度当初 78億円 | エネルギー対策特別会計 |
| クリーンエネルギー自動車の普及促進に向けた充電・充てん設備等導入促進事業 | 426億円 | 2025年度補正 500億円 | 投資枠(GX) |
| 指標 | 数値 | 出典・時点 |
|---|---|---|
| 官民投資額(想定) | 6.2兆円(2040年度まで) | 官民投資ロードマップ参考資料(2026年7月) |
| 経済波及効果(想定) | 85.3兆円(2040年度まで) | 同上 |
| 導入目標 | 2030年最大300万t/年、2040年1,200万t/年、2050年2,000万t/年程度(政策目標として示されている値) | 素案(2026年3月) |
| 関連市場の見通し | 2050年に世界で約30〜40兆円規模 | 素案(2026年3月) |
| 価格差支援 | 計画申請27件、6件認定 | 資源エネルギー庁資料(2026年4月) |
| 拠点整備支援 | 申請12件、2件認定 | 同上 |
| モビリティの官民目標 | 10年間で大規模ST30か所、大型トラック1,500台 | 経済産業省(2026年9月3日) |
| 価格差支援事業 | 655億円(2027年度要求、前年度当初363億円) | 経済産業省(2026年8月) |
| 拠点整備支援事業 | 275億円(2027年度要求、前年度当初415億円) | 同上 |
本レポートは就職・転職および投資判断の参考情報として作成されたものであり、特定の投資・転職行動を推奨するものではありません。掲載データは各記載出典(政府・省庁の公表資料)に基づきますが、数値の正確性・完全性を保証するものではありません。投資判断は自己責任において行ってください。本レポートの内容は作成時点の情報に基づいており、予算編成・政策変更等により実態が変化する可能性があります。概算要求額は要求段階の金額であり、予算額として確定したものではありません。企業名は政府の公表資料に記載された事実として掲載したもので、個別企業に関する投資推奨は一切含みません。データ基準時点は2026年10月です。