MARKET SUPPORTER AI | 進捗モニタリング編 No.17← トップページへ
日本成長戦略 進捗モニタリング編 No.17|資源・エネルギー安全保障・GX分野

水素等、決定後の進捗(2026年7月〜10月)
価格差支援に655億円の要求、「水素大動脈構想」のモビリティWGが始動

官民投資ロードマップで2040年度までに官民6.2兆円の投資が想定されている「水素等」。7月の決定後に動いた、水素大動脈構想実現会議のモビリティ分野ワーキンググループ、第8回水素閣僚会議、経済産業省の2027年度概算要求までを、一次資料の事実と数値で整理します。

作成:2026-11-04 | データ基準時点:2026年10月

CHAPTER 01

ロードマップ上の位置づけと目標

「水素等」は、戦略17分野のうち資源・エネルギー安全保障・GX分野の「主要な製品・技術等」です。2026年3月の素案で先行して検討が進められ、7月21日に官民投資ロードマップとして決定されました。

6.2兆円
官民投資額(想定)2040年度まで
85.3兆円
経済波及効果(想定)2040年度まで
2,000万t
2050年に年間2,000万t程度の水素等の導入(政策目標として示されている値)
導入量の目標は、2030年に最大300万t/年、2040年に1,200万t/年、2050年に2,000万t/年程度です(政策目標として示されている値)。経済波及効果は品目間で重複があるため合算できないとされています。

現状認識(素案)

  • 水素・アンモニアは、脱炭素に加えて国産エネルギーの活用手段として、エネルギー安全保障の観点からも関心が拡大しているとされています。市場・産業全体の成長は、一時の高水準の予測からは減速しつつも堅調に推移しているとしています。
  • 中国・欧州・インド等を中心に、政府支援と組み合わせた投資が進んでいるとされています。
  • 水素・アンモニア関連市場は、2050年に世界で約30〜40兆円規模に拡大するとみられるとしています。
  • 石油の中東依存が9割という中で、製造手法が多様な水素等は供給国の多角化につながる可能性があるとしています。

素案で示された勝ち筋:鍵となる4製品

製品素案に示された日本の強み・方向性
水素・アンモニア混焼/専焼タービン小規模から発電向け大規模まで世界に先行して商用化。市場シェアの約4割を占めるポジションを活用
水電解装置耐久性、長期の実証経験、アルカリ型・PEM型・SOECなど多様な方式。量産投資支援でコストダウンとシェア拡大
液化水素関連機器世界初の液化水素運搬船の開発・製造など、世界で唯一サプライチェーン全体で設備を製造可能。ローディングアーム等の国際標準化で先行
燃料電池セル性能、高耐久性・長寿命、量産技術に強み。欧州・米国・中国で市場シェア拡大を目指す

素案は、社会実装に向けた最大の課題を「需要創出と価格低減」とし、燃料電池については水素インフラ不足、車両価格、水素価格の3つの課題から、社会実装で中国に遅れているとしています。

日本成長戦略会議 第3回「先行して検討を進めている主要な製品技術等の官民投資ロードマップ素案」(2026年3月) 内閣官房「戦略17分野における『主要な製品・技術等』の官民投資ロードマップ 参考資料」(2026年7月)
CHAPTER 02

決定前までの支援の進み具合(価格差支援・拠点整備支援)

ロードマップが投資の呼び水に挙げる水素社会推進法に基づく支援について、経済産業省・資源エネルギー庁の審議会資料(2026年3月〜4月)では、次の状況が示されています。7月〜10月に新たな認定を公表した一次資料は、本レポート作成時点で確認できませんでした。

27件→6件
価格差に着目した支援:計画申請27件、2026年3月までに6件認定
12件→2件
拠点整備支援:申請12件、2026年3月27日付で2件認定
価格差支援の認定案件(資料の掲載順)概要
豊田通商ほかグリーン水素(愛知製鋼知多工場、年間約1,600トン)
レゾナックほか水素・アンモニア案件
JERAほかアンモニア案件
三井物産ほかアンモニア案件
やまなしハイドロジェンカンパニー・サントリーほかグリーン水素(山梨県北杜市、年間1,607トン)
やまなしハイドロジェンカンパニー・ヒメジ理化ほかグリーン水素(福島県田村市・浪江町、年間1,177トン)
拠点整備支援で認定された2件は、北海道電力ほか(苫小牧など)とJERAほか(碧南など)のアンモニア案件です。拠点整備支援には、令和8年度〜令和12年度の5年間で総額2,196億円が計上されているとされています。個別案件の支援額は資料に記載されていません。
資源エネルギー庁 水素・アンモニア課 資料(2026年3月27日) 資源エネルギー庁 燃料供給基盤整備課 資料(2026年4月17日)
CHAPTER 03

7月〜10月の主な動き

時期内容出典
2026年7月経済産業省が「水素・アンモニア保安室」を設置経済産業省資料(9月3日)
2026年9月3日「水素大動脈構想実現会議」の第1回モビリティ分野ワーキンググループを開催経済産業省
2026年9月10日第8回水素閣僚会議を幕張メッセで開催し、議長サマリーを発出NEDO・経済産業省

水素大動脈構想とモビリティ分野WG

経済産業省の資料によれば、水素大動脈構想は「産業界のコミットの下、官民一体で水素・アンモニアの社会実装を進める重点的な取組群」で、まずは燃料電池自動車(FCV)などモビリティ分野から取り組むとしています。実現会議は2026年6月に第1回が開かれ、モビリティ分野WGは年内をめどに中間整理を行う予定とされています。

  • 官民の目標として、今後10年間で商用車向け大規模水素ステーション30か所と大型トラック1,500台の導入が示されています。
  • 燃料電池商用車の重点地域は、福島県、東京都・神奈川県、愛知県、兵庫県、福岡県を中核とする5地域です(2025年5月公表)。

第8回水素閣僚会議

NEDOと経済産業省の共催で9月10日に開かれ、議長サマリーでは、水素・アンモニアのエネルギー安全保障や産業サプライチェーンの強靱化における意義、官民連携による需要創出、国際連携による市場形成の重要性が示されたとされています。

経済産業省「水素モビリティ分野における最近の政策動向」水素大動脈構想実現会議 第1回モビリティ分野WG 事務局資料(2026年9月3日) NEDO「第8回水素閣僚会議の開催」開催報告
CHAPTER 04

2027年度概算要求(経済産業省)

経済産業省の2027年度概算要求には、水素等に関する次の事業が計上されています。

事業名2027年度要求額前年度等区分
水素等のサプライチェーン構築のための価格差に着目した支援事業655億円2026年度当初 363億円投資枠(GX)
低炭素水素等拠点整備支援事業275億円2026年度当初 415億円投資枠(GX)
競争的な水素等サプライチェーン構築に向けた技術開発事業78億円2026年度当初 78億円エネルギー対策特別会計
クリーンエネルギー自動車の普及促進に向けた充電・充てん設備等導入促進事業426億円2025年度補正 500億円投資枠(GX)
表の事業名・金額は経済産業省「令和9年度 経済産業省関係 概算要求等概要」の記載です。表は横にスクロールできます。充電・充てん設備等導入促進事業は水素ステーションを含む事業で、水素専用ではありません(9月3日の資料では国庫債務負担行為を含め総額436億円とされています)。GI基金や水電解装置・燃料電池の量産投資支援(GXサプライチェーン構築支援)は、同資料から水素向けの金額を特定できなかったため記載していません。概算要求は要求段階の金額です。
経済産業省「令和9年度 経済産業省関係 概算要求等概要」(2026年8月)
CHAPTER 05

数値の整理と今後の確認ポイント

指標数値出典・時点
官民投資額(想定)6.2兆円(2040年度まで)官民投資ロードマップ参考資料(2026年7月)
経済波及効果(想定)85.3兆円(2040年度まで)同上
導入目標2030年最大300万t/年、2040年1,200万t/年、2050年2,000万t/年程度(政策目標として示されている値)素案(2026年3月)
関連市場の見通し2050年に世界で約30〜40兆円規模素案(2026年3月)
価格差支援計画申請27件、6件認定資源エネルギー庁資料(2026年4月)
拠点整備支援申請12件、2件認定同上
モビリティの官民目標10年間で大規模ST30か所、大型トラック1,500台経済産業省(2026年9月3日)
価格差支援事業655億円(2027年度要求、前年度当初363億円)経済産業省(2026年8月)
拠点整備支援事業275億円(2027年度要求、前年度当初415億円)同上

今後の確認ポイント

  • 価格差に着目した支援・拠点整備支援の追加認定の有無
  • 水素大動脈構想実現会議モビリティ分野WGの中間整理(年内めど)
  • 年末の2027年度政府予算案での価格差支援事業などの予算額
  • 年末に策定される日本成長戦略実行計画での位置づけと、2027年春のロードマップ改訂
📌

関連記事

戦略17分野シリーズでは、資源・エネルギー安全保障・GX分野の外部環境・内部環境を整理しています。進捗モニタリング編 No.01(総論)では日本成長戦略全体の進捗をまとめています。

Market Supporter AI トップページへ戻る ほかの戦略17分野・官民投資ロードマップの記事はトップページからご覧いただけます

免責事項

本レポートは就職・転職および投資判断の参考情報として作成されたものであり、特定の投資・転職行動を推奨するものではありません。掲載データは各記載出典(政府・省庁の公表資料)に基づきますが、数値の正確性・完全性を保証するものではありません。投資判断は自己責任において行ってください。本レポートの内容は作成時点の情報に基づいており、予算編成・政策変更等により実態が変化する可能性があります。概算要求額は要求段階の金額であり、予算額として確定したものではありません。企業名は政府の公表資料に記載された事実として掲載したもので、個別企業に関する投資推奨は一切含みません。データ基準時点は2026年10月です。

← Market Supporter AI トップへ戻る | 一般教養の記事一覧へ

HOME
トップへ