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日本成長戦略 進捗モニタリング編 No.02|造船分野

次世代船舶、決定後の進捗(2026年7月〜10月)
造船業再生基金の認定8件と2つのクラスター計画

官民投資ロードマップの62品目のうち、7月の決定後に最も具体的な動きが出ている品目の一つが「次世代船舶」です。造船業再生基金による供給確保計画の認定、瀬戸内・九州の戦略産業クラスター計画、2027年度の概算要求、ロードマップのPDCAまでを、一次資料の事実と数値で整理します。

作成:2026-10-20 | データ基準時点:2026年10月

CHAPTER 01

ロードマップ上の位置づけと目標

次世代船舶は、戦略17分野のうち造船分野の「主要な製品・技術等」です。2026年3月の素案で先行して検討が進められ、7月21日に日本成長戦略本部で官民投資ロードマップとして決定されました。

1.0兆円
官民投資額(想定)2034年度まで
9.7兆円
経済波及効果(想定)2034年度まで
1,800万総トン
2035年の国内建造目標(2024年比倍増・市場規模約5兆円)(政策目標として示されている値)

現状認識(素案)

  • 国内の建造量は2019年の1,600万総トンから2024年の900万総トンへ減少し、国内船主の1年間の造船需要を下回る状況とされています。
  • ゼロエミッション船等の建造需要は、2035年に建造需要の6割程度に達すると見込まれています。
  • 船価の約7割を材料費(鋼材・舶用機器等)が占め、受注から竣工までの期間は近年3〜4年とされています。

素案で示された投資の内訳

2035年までに官民で1兆円規模の投資を想定し、内訳は「非価格競争力向上のためのグリーン投資」(官民2,800億円規模)と「次世代船舶の建造を含む造船能力の抜本的向上」(官民7,300億円規模)とされています。

官民投資額は、主要企業へのヒアリング結果の積み上げと市場・投資の伸び率などによる推計で、予算編成やPDCAを通じて精査・改定される予定とされています。次世代船舶の対象期間は2034年度までで、他品目の2040年度までの金額とは単純比較できません。
日本成長戦略会議 第3回「先行して検討を進めている主要な製品技術等の官民投資ロードマップ素案」(2026年3月) 経済財政諮問会議 第8回 資料1「戦略17分野の『主要な製品・技術等』における官民投資額」(2026年6月24日) 同 第11回 資料4「官民投資ロードマップ 参考資料」(2026年7月21日)
CHAPTER 02

造船業再生基金:供給確保計画の認定8件

政府は経済安全保障推進法に基づく特定重要物資である船舶の部品に「船体」を追加し、造船業再生基金を造成しました。国土交通省は2026年9月4日に供給確保計画を初めて3件認定し、9月11日に5件を追加で認定しました。

8件
認定された供給確保計画(9月4日3件・9月11日5件)
約3,110億円
最大助成額の合計(令和8〜16年度)
9,000億円規模
8件合計の官民投資の規模
認定日事業者最大助成額
9月4日今治造船、多度津造船、スチールハブ約1,138億円
9月4日ジャパン マリンユナイテッド、JMUアムテック、有明スチールセンター約494億円
9月4日名村造船所、函館どつく約499億円
9月11日三菱造船約400億円
9月11日新来島グループ(新来島どっく、新来島豊橋造船、新来島高知重工、新来島サノヤス造船)約320億円
9月11日川崎重工業約156億円
9月11日大島造船所約61億円
9月11日内海造船約43億円
合計(8件)約3,110億円

支援の対象は、省力化・自動化設備の整備、ドック拡張、クレーン導入などの大規模投資です。国土交通省は、造船業再生ロードマップ(2025年12月26日公表)と日本成長戦略で掲げた建造量倍増の実現に向け、計画を順次認定するとしています。

最大助成額は、令和8〜16年度の期間における上限額です。実際の助成額は事業の進捗に応じて決まります。基金の総額と、船体を特定重要物資に追加した日付は、認定の発表資料には記載されていません。
国土交通省 報道発表「造船業再生基金に係る供給確保計画を初認定」(2026年9月4日) 国土交通省 報道発表「造船業再生基金に係る供給確保計画の認定」(2026年9月11日) 国土交通省海事局「海事レポート2026」(2026年9月)
CHAPTER 03

戦略産業クラスター計画:瀬戸内・九州

地域未来戦略(2026年7月21日閣議決定)に基づく戦略産業クラスター計画のうち、次世代船舶は瀬戸内地域と九州地域の2件が公表されています。

項目瀬戸内地域九州地域
範囲に入る県岡山県、広島県、山口県、徳島県、香川県、愛媛県、高知県福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県
地域の現状許可造船所約103社(全国の約4割)、新造船建造量約486万総トン(全国の約5割)新造船建造量約320万総トン(全国の約3割)
拠点企業・投資の例川崎重工業(坂出)液化水素運搬船の建造・実証と生産体制整備/今治造船(多度津・西条)新燃料タンク生産設備・大型艤装プラットフォーム/尾道造船(尾道)艤装プラットフォーム・パイプ工場新設ジャパンマリンユナイテッド(熊本県長洲町)艤装プラットフォーム増強/大島造船所(長崎県西海市)燃料タンク生産能力増強ほか/名村造船所(佐賀県伊万里市)燃料用タンク生産設備・ゴライアスクレーン新設ほか
官民設備投資(KGI)2034年度までに約5,000億円2034年度までに約3,000億円
うち2030年度累積(KPI)約2,800億円約1,700億円
付加価値増加額(KGI)2034年度までに約3兆5,000億円2034年度までに約2兆1,000億円
造船人材の育成(KGI)2034年度までに累計約3,400人2034年度までに累計約3,300人
インフラ整備の例高松港 複合一貫輸送ターミナルの岸壁整備など港湾・道路・橋梁の大型化・耐震化、航路の浚渫、工場間を結ぶ高規格道路

KGI・KPIの数値は、各クラスター計画で目標として示されている値です。

内閣官房「次世代船舶 戦略産業クラスター計画(瀬戸内地域)」概要資料 内閣官房「次世代船舶 戦略産業クラスター計画(九州地域)」概要資料 内閣官房「地域未来戦略に関する3類型の計画」
CHAPTER 04

地域産業クラスター計画(都道府県)

都道府県が主導する地域産業クラスター計画でも、造船・海洋関連の計画が公表されています(内閣官房の公表ページ、2026年10月20日確認)。

策定主体計画名・産業領域
香川県造船・建機等鋼構造物関連分野(次世代造船及びクレーン等を核とする鋼構造物産業領域)
愛媛県海洋関連産業分野(次世代船舶、船用機器、洋上風力関連部材、電装・制御、保守管理等)
長崎県海洋関連分野(造船・防衛産業、エネルギー分野を核とする海洋関連産業領域)
大分県造船・船舶産業分野(船舶関連産業)
内閣官房「地域未来戦略に関する3類型の計画」B.地域産業クラスター計画一覧
CHAPTER 05

2027年度概算要求

内閣府がまとめた「令和9年度海洋関連予算概算要求の概要」には、造船・船舶に関する次の事業が掲載されています。

事業名府省2027年度要求額2026年度当初
我が国造船業の再生国土交通省2.2億円+事項要求新規
ゼロエミッション船等の建造促進事業環境省248.1億円149.1億円
「事項要求」は金額を示さずに要求し、予算編成過程で額を検討するものです。概算要求は要求段階の金額で、予算額は年末の政府予算案の決定に向けて精査されます。
内閣府総合海洋政策推進事務局「令和9年度海洋関連予算概算要求の概要」
CHAPTER 06

官民投資ロードマップのPDCA

2026年10月16日の第5回戦略分野分科会で、「官民投資ロードマップ」で掲げた主な施策の取組状況が報告されました。報告対象はフィジカルAI、次世代船舶、ゲームの3品目で、次世代船舶はその一つです(資料4、非公開)。

同分科会で示されたPDCAの進め方は、次のとおりです。

  • 予算事業・税制措置・制度改革等の取組状況を2027年1月頃に整理する。
  • その後、各分野のWG等で施策の見直しの要否を検証する。
  • 結果を2027年春の官民投資ロードマップの改訂等に反映する。
内閣官房 第5回戦略分野分科会 議事次第・資料2(2026年10月16日)
CHAPTER 07

数値の整理と今後の確認ポイント

指標数値出典・時点
官民投資額(想定)2034年度までで1.0兆円官民投資ロードマップ(2026年7月)
経済波及効果(想定)9.7兆円(2034年度まで)同上
建造量目標1,800万総トン(2035年)(政策目標として示されている値)素案(2026年3月)
建造量の現状900万総トン(2024年)素案(2026年3月)
供給確保計画の認定8件・最大助成額約3,110億円国土交通省(2026年9月4日・11日)
8件の官民投資規模9,000億円規模国土交通省(2026年9月11日)
クラスター計画の官民設備投資(KGI)瀬戸内約5,000億円・九州約3,000億円(2034年度まで)内閣官房 戦略産業クラスター計画
環境省 ゼロエミッション船等建造促進248.1億円(2027年度要求)内閣府 海洋関連予算概算要求の概要

今後の確認ポイント

  • 造船業再生基金による供給確保計画の追加認定(国土交通省は順次認定するとしています)
  • 年末の2027年度政府予算案での「我が国造船業の再生」事項要求の扱い
  • 年末に策定される日本成長戦略実行計画での次世代船舶の位置づけ(3類型のどれに入るか、5か年の投資事業計画)
  • 2027年1月頃の取組状況の整理と、2027年春のロードマップ改訂
📌

進捗モニタリング編について

No.01(総論)では、日本成長戦略全体の予算・実行計画・特別会計・地域未来戦略の進捗を整理しています。次回以降も、PDCAの報告対象となった品目から順に整理する予定です。

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免責事項

本レポートは就職・転職および投資判断の参考情報として作成されたものであり、特定の投資・転職行動を推奨するものではありません。掲載データは各記載出典(政府・省庁の公表資料)に基づきますが、数値の正確性・完全性を保証するものではありません。投資判断は自己責任において行ってください。本レポートの内容は作成時点の情報に基づいており、予算編成・政策変更等により実態が変化する可能性があります。企業名は政府の公表資料に記載された事実として掲載したもので、個別企業に関する投資推奨は一切含みません。データ基準時点は2026年10月です。

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