官民投資ロードマップの62品目のうち、7月の決定後に最も具体的な動きが出ている品目の一つが「次世代船舶」です。造船業再生基金による供給確保計画の認定、瀬戸内・九州の戦略産業クラスター計画、2027年度の概算要求、ロードマップのPDCAまでを、一次資料の事実と数値で整理します。
次世代船舶は、戦略17分野のうち造船分野の「主要な製品・技術等」です。2026年3月の素案で先行して検討が進められ、7月21日に日本成長戦略本部で官民投資ロードマップとして決定されました。
2035年までに官民で1兆円規模の投資を想定し、内訳は「非価格競争力向上のためのグリーン投資」(官民2,800億円規模)と「次世代船舶の建造を含む造船能力の抜本的向上」(官民7,300億円規模)とされています。
政府は経済安全保障推進法に基づく特定重要物資である船舶の部品に「船体」を追加し、造船業再生基金を造成しました。国土交通省は2026年9月4日に供給確保計画を初めて3件認定し、9月11日に5件を追加で認定しました。
| 認定日 | 事業者 | 最大助成額 |
|---|---|---|
| 9月4日 | 今治造船、多度津造船、スチールハブ | 約1,138億円 |
| 9月4日 | ジャパン マリンユナイテッド、JMUアムテック、有明スチールセンター | 約494億円 |
| 9月4日 | 名村造船所、函館どつく | 約499億円 |
| 9月11日 | 三菱造船 | 約400億円 |
| 9月11日 | 新来島グループ(新来島どっく、新来島豊橋造船、新来島高知重工、新来島サノヤス造船) | 約320億円 |
| 9月11日 | 川崎重工業 | 約156億円 |
| 9月11日 | 大島造船所 | 約61億円 |
| 9月11日 | 内海造船 | 約43億円 |
| 合計(8件) | 約3,110億円 | |
支援の対象は、省力化・自動化設備の整備、ドック拡張、クレーン導入などの大規模投資です。国土交通省は、造船業再生ロードマップ(2025年12月26日公表)と日本成長戦略で掲げた建造量倍増の実現に向け、計画を順次認定するとしています。
地域未来戦略(2026年7月21日閣議決定)に基づく戦略産業クラスター計画のうち、次世代船舶は瀬戸内地域と九州地域の2件が公表されています。
| 項目 | 瀬戸内地域 | 九州地域 |
|---|---|---|
| 範囲に入る県 | 岡山県、広島県、山口県、徳島県、香川県、愛媛県、高知県 | 福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県 |
| 地域の現状 | 許可造船所約103社(全国の約4割)、新造船建造量約486万総トン(全国の約5割) | 新造船建造量約320万総トン(全国の約3割) |
| 拠点企業・投資の例 | 川崎重工業(坂出)液化水素運搬船の建造・実証と生産体制整備/今治造船(多度津・西条)新燃料タンク生産設備・大型艤装プラットフォーム/尾道造船(尾道)艤装プラットフォーム・パイプ工場新設 | ジャパンマリンユナイテッド(熊本県長洲町)艤装プラットフォーム増強/大島造船所(長崎県西海市)燃料タンク生産能力増強ほか/名村造船所(佐賀県伊万里市)燃料用タンク生産設備・ゴライアスクレーン新設ほか |
| 官民設備投資(KGI) | 2034年度までに約5,000億円 | 2034年度までに約3,000億円 |
| うち2030年度累積(KPI) | 約2,800億円 | 約1,700億円 |
| 付加価値増加額(KGI) | 2034年度までに約3兆5,000億円 | 2034年度までに約2兆1,000億円 |
| 造船人材の育成(KGI) | 2034年度までに累計約3,400人 | 2034年度までに累計約3,300人 |
| インフラ整備の例 | 高松港 複合一貫輸送ターミナルの岸壁整備など | 港湾・道路・橋梁の大型化・耐震化、航路の浚渫、工場間を結ぶ高規格道路 |
KGI・KPIの数値は、各クラスター計画で目標として示されている値です。
都道府県が主導する地域産業クラスター計画でも、造船・海洋関連の計画が公表されています(内閣官房の公表ページ、2026年10月20日確認)。
| 策定主体 | 計画名・産業領域 |
|---|---|
| 香川県 | 造船・建機等鋼構造物関連分野(次世代造船及びクレーン等を核とする鋼構造物産業領域) |
| 愛媛県 | 海洋関連産業分野(次世代船舶、船用機器、洋上風力関連部材、電装・制御、保守管理等) |
| 長崎県 | 海洋関連分野(造船・防衛産業、エネルギー分野を核とする海洋関連産業領域) |
| 大分県 | 造船・船舶産業分野(船舶関連産業) |
内閣府がまとめた「令和9年度海洋関連予算概算要求の概要」には、造船・船舶に関する次の事業が掲載されています。
| 事業名 | 府省 | 2027年度要求額 | 2026年度当初 |
|---|---|---|---|
| 我が国造船業の再生 | 国土交通省 | 2.2億円+事項要求 | 新規 |
| ゼロエミッション船等の建造促進事業 | 環境省 | 248.1億円 | 149.1億円 |
2026年10月16日の第5回戦略分野分科会で、「官民投資ロードマップ」で掲げた主な施策の取組状況が報告されました。報告対象はフィジカルAI、次世代船舶、ゲームの3品目で、次世代船舶はその一つです(資料4、非公開)。
同分科会で示されたPDCAの進め方は、次のとおりです。
| 指標 | 数値 | 出典・時点 |
|---|---|---|
| 官民投資額(想定) | 2034年度までで1.0兆円 | 官民投資ロードマップ(2026年7月) |
| 経済波及効果(想定) | 9.7兆円(2034年度まで) | 同上 |
| 建造量目標 | 1,800万総トン(2035年)(政策目標として示されている値) | 素案(2026年3月) |
| 建造量の現状 | 900万総トン(2024年) | 素案(2026年3月) |
| 供給確保計画の認定 | 8件・最大助成額約3,110億円 | 国土交通省(2026年9月4日・11日) |
| 8件の官民投資規模 | 9,000億円規模 | 国土交通省(2026年9月11日) |
| クラスター計画の官民設備投資(KGI) | 瀬戸内約5,000億円・九州約3,000億円(2034年度まで) | 内閣官房 戦略産業クラスター計画 |
| 環境省 ゼロエミッション船等建造促進 | 248.1億円(2027年度要求) | 内閣府 海洋関連予算概算要求の概要 |
本レポートは就職・転職および投資判断の参考情報として作成されたものであり、特定の投資・転職行動を推奨するものではありません。掲載データは各記載出典(政府・省庁の公表資料)に基づきますが、数値の正確性・完全性を保証するものではありません。投資判断は自己責任において行ってください。本レポートの内容は作成時点の情報に基づいており、予算編成・政策変更等により実態が変化する可能性があります。企業名は政府の公表資料に記載された事実として掲載したもので、個別企業に関する投資推奨は一切含みません。データ基準時点は2026年10月です。