| 業態 | 主な役割 | 代表プレイヤー | 収益の性格 |
|---|---|---|---|
| 大手造船所(専業) | 大型商船(ばら積み・コンテナ・タンカー・LNG船等)の設計・建造を中心とする造船専業。国内建造量の大半を担う。 | 今治造船(国内最大手・非上場)、ジャパンマリンユナイテッド(JMU・今治造船出資)、日本シップヤード(今治造船とJMUの共同出資) | 船舶建造受注収益。1隻あたり数十〜数百億円の大型受注。「受注後3〜4年で竣工・入金」という長期事業サイクル。為替の影響大(円安で受注競争力・収益が改善)。 |
| 重工系造船(複合事業) | 防衛・航空・エネルギー等の多角的な事業を持ちながら、造船部門でLNG船・艦艇等の高付加価値船を建造。 | 三菱重工業(長崎造船所・下関造船所等) | 造船部門は全社売上の一部。防衛・航空宇宙が業績を牽引。造船では主に海上自衛隊向け艦艇・LNG船等の高付加価値船に特化。 |
| 舶用機器メーカー | 船舶用エンジン・燃料タンク・燃料供給システム・推進装置等の舶用機器を設計・製造する。次世代燃料船の「コア技術」を担う。 | 川崎重工業(舶用エンジン)、ヤンマー(4ストロークエンジン)、ジャパンエンジンコーポレーション(2ストロークエンジン)、IHI原動機、三井E&S(燃料タンク・燃料供給システム) | 舶用機器販売収益。次世代船舶(アンモニア・水素)の普及で需要が増加する構造。GI基金の主要な技術開発実施者として補助金収入も。 |
| 海運会社(需要側) | 船舶を発注・保有・運航し、荷主の貨物を海上輸送する。造船所への発注者・次世代燃料船の「初期需要創出者」として産業を牽引する役割。 | 日本郵船(9101)、商船三井(9104)、川崎汽船(9107) | 海運サービス収益(運賃)。海運市況(景気・荷動き・紅海情勢等)の影響を強く受ける景気敏感業種。三社ともコロナ特需後の財務体力を活かしてLNG船・次世代燃料船へ積極投資中。 |
| 船級協会・設計・検査 | 船舶の設計承認・品質検査・型式証明等を担う。次世代船舶の安全基準策定において国際的に重要な役割。 | 日本海事協会(ClassNK・日本で最大の船級協会) | 検査・認証サービス収益。次世代船舶の安全基準整備で役割が拡大。 |
2024年〜2025年の日本の造船業の収益は、円安(輸出企業として円安は収益にプラス)・建造量回復・次世代燃料船の単価上昇という3要因で改善しています。今治造船の2025年3月期売上高は前期比5%増の4,646億円と増収を達成しています(日経・2025年7月)。受注残は約4年分(82隻・420万総トン)を積み上げており、当面の建造スケジュールは充足しています。
外部環境編で確認した通り、ゼロエミッション船は従来船より大幅にコストが高くなります。アンモニア燃料タンクは体積が約2.7倍必要であり(次世代環境船舶開発センター)、エンジン・燃料供給システム・安全装置等の追加コストが乗ります。この「コスト高のゼロエミッション船の初期需要を誰が発注するか」という問題は、政策支援(GX移行債・海運税制)によって支援される方向が示されています(国交省)。
造船所への発注者である海運会社(日本郵船・商船三井・川崎汽船等)は海運市況(運賃)の影響を強く受ける景気敏感業種です。コロナ特需(2021〜2022年)の超高収益で財務体力を強化した三大海運は現在、その資金でLNG船・次世代燃料船への投資を進めています。しかし2026年3月期はコンテナ船市況のピークアウトで各社減益が見込まれており、発注意欲への影響が注視されています。
| 指標 | 数値 | 出典・時点 |
|---|---|---|
| 売上高 | 4,646億円(2025年3月期・前期比5%増) | 日経 2025年7月・マイナビ2027 |
| 純利益 | 300億7,900万円(2025年3月期・前期比142%増) | 官報決算データベース |
| 利益剰余金 | 4,214億9,200万円(2025年3月期) | 同上 |
| 総資産 | 1兆1,605億円(2025年3月期) | 同上 |
| 資本金 | 300億円 | マイナビ2027 |
| 竣工量 | 68隻・308万総トン(2025年3月期・前期比14%減) | 日経 2025年7月 |
| 受注量 | 82隻・420万総トン(2025年3月期・約4年分) | 同上 |
| グループ従業員 | 3,229名(構内協力工含め約18,257名) | マイナビ2027 |
| 創業 | 1901年(今治市小浦町) | 今治造船公式 |
| 建造実績 | グループ全体3,000隻達成(2025年2月) | LogisticsToday 2025年2月 |
| 次世代燃料船受注 | 2025年3月期受注82隻のうち6隻がメタノール焚きばら積み貨物船 | 日経 2025年7月 |
今治造船とジャパンマリンユナイテッド(JMU・国内2位)は2020年に共同出資会社「日本シップヤード株式会社」を設立しています。LNG船を除くすべての一般商船・海洋浮体構造物の設計・販売等を担い、国内1・2位の連携により中韓造船業との競争力強化を図っています(deallab 2025年)。日本シップヤードはGI基金「次世代船舶の開発」プロジェクトの技術開発実施者にも選定されています(国交省・NEDO 2025年)。
商船三井(9104)の2025年3月期の売上高は1兆7,755億円・経常利益4,197億円(2024年3月期から回復)です(マネラボ・2026年3月)。LNG船を世界最大級の約107隻運航(発注残含め132隻・2025年3月期時点)しており、15〜20年の長期契約が中心です。2023〜2025年度の投資額1兆2,000億円のうち、LNG輸送船などを中心に9,000億円まで意思決定済みです(ニュースイッチ・2024年)。
日本郵船・商船三井・川崎汽船の海運大手3社は、2030年度までにLNG運搬船を合計で4割超増やす計画を持っています(2025年1月報道・かぶリッジ)。脱炭素の移行期においてLNG船は「過渡期の主力燃料輸送船」として需要が増加しており、三大海運の発注が日本造船所の受注を支える構造があります。
| 企業 | 売上高 | 自己資本比率 | 特記事項 |
|---|---|---|---|
| 日本郵船(9101) | 2兆円超(2025年3月期) | 67.6% | 業界最大規模。ONE(コンテナ船合弁)の業績が貢献。2025年7月にオランダ物流会社を約2,100億円で買収。 |
| 商船三井(9104) | 1兆7,755億円 | — | LNG船世界最大規模。23〜25年度投資額1兆2,000億円。風力推進装置「ウインドチャレンジャー」を実装。 |
| 川崎汽船(9107) | — | 74.6%(最高水準) | 自己資本比率が3社で最高。液化CO2輸送事業・洋上風力発電支援船事業に参入。 |
グリーンイノベーション(GI)基金「次世代船舶の開発」プロジェクト(2021年開始・NEDO・国交省)の技術開発実施者は以下の企業・機関です(国交省・NEDO・2025年)。
2024年8月23日、世界初の商用アンモニア燃料船(タグボート)が竣工しました(国交省・NEDO・2025年)。日本郵船とIHI原動機が共同開発し、日本郵船子会社の新日本海洋社が東京湾内で大型船けん引業務に使用します。
2024年11月末までの間、東京湾内において実証運航を実施しました。重油使用時と比較して最大約95%のGHG排出量削減を達成しています(同上)。2023年12月には、純国産エンジンを搭載するアンモニア燃料アンモニア輸送船の建造契約も締結されました(同上)。
造船業界の就労者数は約7〜8万人で、15年間ほぼ横ばいで推移しています。内訳は「技能者(現場)約8割・技術者(設計・研究開発)約2割」という構成です(造船業界キャリア記事 2017年時点の国交省データ)。社内工(直用)と社外工(下請)が混在しており、今治造船グループでは直用3,229名に対して構内協力工含めた総員は約18,257名と約5.7倍の規模です。
資料2(2026年3月)は「設計や現場において人材不足が深刻化。特に次世代船舶は従来の船舶より複雑で工数が多いため、技術力が高い設計者や技能者が必要」と明示しています。建造量の増加と次世代船舶の技術的複雑化が重なる中で、人材確保が業界全体の課題です。今治造船は2025年3月に技能実習生の受け入れ停止処分(5年間)を受けており(出入国在留管理庁・2025年3月)、技能者確保に新たな課題が生じています。
国内最大手の今治造船は2025年3月25日、認定していた技能実習計画が出入国在留管理庁より全て取り消され、今後5年間の技能実習生の受け入れ停止処分を受けました(Wikipedia・2025年)。造船業は下請・協力工への依存度が高く(今治造船グループでは直用3,229名に対して協力工含む総員約18,257名)、外国人技能実習生がその一部を担っていました。この処分は建造体制に影響を与える可能性がある構造的な問題として業界に注目されています。
造船所の建造能力拡大に必要なドライドック・超大型クレーン等の設備投資は1基数十〜数百億円規模で、投資回収に長期間かかります。資料2(2026年3月)は「建造能力拡大には長期間・多額の設備投資が必要」と明示しており、官民1兆円規模の投資が2035年目標達成に不可欠です。
次世代船舶の技術開発(GI基金)は主に既存の大手重工・舶用機器メーカーが担っており、スタートアップの参入は限定的です。海洋無人機(海洋ドローン)分野ではAUV官民プラットフォームが設置されていますが、次世代船舶分野でのスタートアップ参入機会は現状では少ない状況です。
| 章 | 指標名 | 数値 | 出典・時点 |
|---|---|---|---|
| 第3章 | 今治造船 売上高 | 4,646億円(2025年3月期・前期比5%増) | 日経 2025年7月 |
| 第3章 | 今治造船 竣工量 | 68隻・308万総トン(前期比14%減) | 同上 |
| 第3章 | 今治造船 受注量(受注残) | 82隻・420万総トン(約4年分) | 同上 |
| 第3章 | 今治造船 グループ人員 | 直用3,229名・協力工含め約18,257名 | マイナビ2027 |
| 第3章 | 今治造船 次世代燃料船受注 | 2025年3月期受注のうち6隻がメタノール焚き | 日経 2025年7月 |
| 第4章 | 商船三井 売上高 | 1兆7,755億円(2025年3月期) | マネラボ 2026年3月 |
| 第4章 | 商船三井 LNG船 | 約107隻運航(発注残含め132隻・2025年3月期) | 同上 |
| 第4章 | 商船三井 投資額 | 2023〜2025年度で1兆2,000億円 | ニュースイッチ 2024年 |
| 第4章 | 三大海運 LNG船増強計画 | 2030年度までに合計4割超増加 | かぶリッジ 2026年1月 |
| 第6章 | 世界初アンモニア燃料船竣工 | 2024年8月23日(タグボート)・重油比最大約95%GHG削減 | 国交省・NEDO 2025年 |
| 第7章 | 造船の仕事 平均年収 | 約459万円(求人ボックス・2025年4月・参考値) | 求人ボックス 2025年4月 |
| 第7章 | 今治造船 船舶設計職 予定年収 | 500万〜700万円(広島工場・doda求人情報) | doda |
| 第7章 | 造船業界就労者数 | 約7〜8万人(技能者8割・技術者2割) | 国交省データ(2017年) |
【免責事項】本レポートは就職・転職および投資判断の参考情報として作成されたものであり、特定の投資・転職行動を推奨するものではありません。今治造船は非上場企業のため財務詳細の開示は限定的です。海運会社の業績は海運市況の影響を強く受け大きく変動します。年収データは公開された求人情報に基づく参考値であり会社全体の水準を保証するものではありません。「政策目標として示されている」と注記した数値は政府が目標として掲げた値であり達成を保証するものではありません。データ基準時点は2026年04月です。
© 2026年04月 産業構造分析レポート ── 次世代船舶(内部環境編)