| 戦略17分野 ⑲ 次世代型太陽電池(ペロブスカイト太陽電池等) | 政策実装・官民投資編 2026年05月
JAPAN GROWTH STRATEGY — NEXT-GEN SOLAR / PEROVSKITE — POLICY MONITOR
19
次世代型太陽電池(ペロブスカイト太陽電池等)
政策実装・官民投資編
官民投資ロードマップ素案(日本成長戦略会議 第3回、2026年3月)構造に基づく政策モニタリングレポート
2040年 国内導入目標
約20GW
政策目標として示されている値
積水化学 SOLAFIL
2026年3月27日
事業開始。日本初のフィルム型商用販売
中国GCL ペロブスカイト
2026年7月
タンデム型の量産販売を日本でも開始予定
積水化学 堺工場投資額
約3,150億円
5年間でGW級ライン構築。GX補助で半額支援
CHAPTER 00 政策実装サマリー(2026年04月〜05月)
// ANALYST NOTE
2026年3月27日、積水化学工業がフィルム型ペロブスカイト太陽電池「SOLAFIL(ソラフィル)」の事業を正式開始し、日本で初めての商用販売が始まった。大阪府堺市(旧シャープ工場)への約3,150億円投資・GXサプライチェーン構築支援事業(半額補助)が確定し、2027年度の100MW稼働ラインが具体化している。一方で中国GCL傘下のGCLペロブスカイトが2026年7月をめどにタンデム型ペロブスカイト太陽電池の量産販売を日本でも開始する予定であり、タンデム型では中国勢が先行する状況も生じている。環境省は2026年度から地方公共団体・民間事業者向けの導入支援補助を開始し、同年3月30日には政府保有建築物へのペロブスカイト太陽電池の率先導入方針を公表した。
2026年3月27日
SOLAFIL事業開始
積水化学のフィルム型ペロブスカイト太陽電池「SOLAFIL」が商用販売開始。日本初の商用フィルム型製品
約3,150億円
積水化学 堺工場投資
5年間でGW級ライン構築。GXサプライチェーン構築支援事業で半額補助
約9万kW
政府建築物ポテンシャル
政府保有建築物へのペロブスカイト太陽電池の設置可能量の試算(環境省、2026年3月30日)
約30%
ヨウ素の世界シェア
ペロブスカイト太陽電池の主原料ヨウ素について日本が世界シェアの約30%を占める。資源面での強み
直近2ヶ月の重要動向(2026年4〜5月)
// 官の動き
  • 2026年3月30日 :環境省が「政府部門におけるペロブスカイト太陽電池の率先導入について」を公表。政府保有建築物へのペロブスカイト太陽電池導入を率先して進める方針を決定。政府建築物の設置可能量は約9万kWと試算 環境省 2026.3
  • 環境省:地方公共団体・民間事業者向けの導入支援補助を2026年度より開始。第1回公募で5件(計約80kW)を採択 環境省 2026.3
  • GI基金(648億円):積水化学・パナソニック・東芝・エネコートテクノロジーズ等へ研究開発・実証を支援中。2030年度に年間製造能力200〜300MW以上の量産構想を有する3社がGI基金を活用した研究開発を進行 経産省 2026.3
  • GXサプライチェーン構築支援事業:積水化学の生産設備構築費用の約半額を補助(フィルム型・レーザー加工装置を対象に2024年末に2社採択済み) 経産省 2025.5
// 民の動き
  • 2026年3月27日 :積水ソーラーフィルム株式会社(積水化学グループ)がフィルム型ペロブスカイト太陽電池「SOLAFIL」の事業開始を発表。大阪府堺市の旧シャープ工場に100MWの生産ライン新設(2027年度稼働予定) 積水化学 2026.3
  • 2026年3月24日 :国内初のフィルム型ペロブスカイト太陽電池を用いた営農型太陽光発電設備の水田での取り組みを開始 積水化学 2026.3
  • 中国GCLペロブスカイト:タンデム型ペロブスカイト太陽電池の量産販売を2026年7月をめどに日本でも開始する予定。日本のカネカは2028年度の製品販売を計画しており、タンデム型では中国勢が先行する構図 ニュースイッチ 2026.4
  • リコー×東京都:東京都庁舎およびお台場海浜公園にペロブスカイト太陽電池を搭載した庭園灯41基の設置を発表(2026年3月) リコー 2026.3
重要プレイヤーマップ
区分 主要プレイヤー 政策対象・直近動向
フィルム型(量産先行) 積水ソーラーフィルム(積水化学) 2026年3月27日「SOLAFIL」事業開始。堺市工場2027年100MW稼働・2030年GW級目標
フィルム型(研究開発) エネコートテクノロジーズ、東芝、パナソニック GI基金でフィルム型の低コスト・大面積量産技術開発を継続
タンデム型(開発) カネカ、AGC+パナソニック環境エンジニアリング カネカは2028年度製品販売を計画。タンデム型では中国GCL傘下が2026年7月に先行
施工・設置技術 積水化学(積水ソーラーフィルム)、日軽エンジニアリング、NTTデータ 壁面設置に向けた改良工法開発(2025年10月〜2029年3月)
公共機関・実証フィールド 東京都、福岡市、環境省 東京都庁舎・お台場への設置、神戸空港実証、環境省率先導入方針
CHAPTER 01 1.現状認識と目指す姿【目標】
(1)現状
① 現状:中国がシリコン太陽電池の8割を占める中、ペロブスカイトで「逆転」の機会
// ROADMAP
シリコン太陽電池は、中国が世界のシェアの8割程度を占め、圧倒的な競争力を持ち、ペロブスカイト太陽電池においてはガラス型、タンデム型の研究開発や商業化を盛んに展開。ペロブスカイト太陽電池の競争力は、製造プロセス等のノウハウ(製造装置に化体しない複雑な材料加工や成形、温度・湿度の管理など)による部分が大きく、我が国が特に競争力・強みを有しうる技術は以下の2つ。(1)フィルム型:発電層を外気から保護する封止技術、実用化で鍵となる耐久性向上や大型化の製造技術。(2)タンデム型:ボトムセルであるシリコンの表面加工技術や成膜技術。
// WHY IT MATTERS
「製造プロセス等のノウハウによる部分が大きく、製造装置に化体しない」という表現が核心をついている。シリコン太陽電池は「設備を揃えればある程度の品質が出る」という装置産業的性格が強いが、ペロブスカイト太陽電池の製造は「温度・湿度の管理、複雑な材料加工や成形」という暗黙知的なノウハウが品質を左右する。この「ノウハウ勝負」の性格が、日本の「ものづくりの強み(精密加工・品質管理)」を活かしやすい領域だ。⑮バイオものづくりの「ウェット領域の強み」と同じ構造論理がここにある。
// 海外動向

中国 シリコン太陽電池で世界の8割を占める圧倒的な競争力に加え、ペロブスカイト太陽電池(ガラス型・タンデム型)でも研究開発・商業化を盛んに展開。GCL傘下のGCLペロブスカイトが2026年7月をめどに日本でもタンデム型量産販売を開始予定で、フィルム型では日本勢が先行しつつも圧倒的な製造能力を背景に追い上げてくるリスクがある。

(2)目標
2030年度までに14円/kWh・GW級量産体制/2040年までに国内約20GW導入
// ROADMAP
・2030年を待たずにGW級の量産体制の構築。・2040年までに約20GWの導入目標(政策目標として示されている値)。・フィルム型:2030年度までに14円/kWh以下の技術確立。・タンデム型:2030年にシリコン以下となる12円/kWh以下の野心的な技術確立等を目標。・その上で、海外展開についても、国内需要以上の導入を野心的に目指す。
// POLICY MONITOR NOTE
「フィルム型では約25GWの国内需要」「海外には約500GWの導入ポテンシャル」という数字は、シリコン太陽電池では設置できなかった「耐荷重性の低い屋根・壁面」という新市場が前提だ。2026年度から省エネ法定期報告書での屋根面積等の報告義務化(令和9年度〜)により、「ペロブスカイトReady」な実態把握が進み、量産後のスムーズな導入につながる「エコシステム設計」として機能する。
CHAPTER 02 2.勝ち筋と官民投資の具体像【道筋】
(1)フィルム型:早期の施工費込み発電コスト低減×「ペロブスカイトReady」社会の構築
// ROADMAP
フィルム型については、早期に施工費込みの発電コストを低減することが鍵。需要創出については、野置きのメガソーラーとは異なる、建物の屋根や壁面等への導入が可能であるという強みを生かし、国内では官公需を活用しつつ、国外でも実証支援などを通じ、初期需要の創出に取り組む。①技術開発の加速、②生産投資と需要創出を通じた量産コストの低減、③設置・施工方法の確立等を同時に進め2030年度までに14円/kWh以下の技術確立を目標に、早期にGW級の量産体制を構築する。
// 官の動き(直近2ヶ月)
  • 環境省率先導入方針(2026年3月30日):政府建築物約9万kWのポテンシャルを活用した率先導入を推進 環境省 2026.3
  • 令和8年度より3年間:GI基金採択事業者の生産品に対する固定資産税の課税特例を重点化。地方公共団体が国庫補助を活用して導入する事業に地方財政措置を実施予定 ロードマップ素案 2026.3
// 民の動き(直近2ヶ月)
  • 積水ソーラーフィルム:「SOLAFIL」事業開始(2026年3月27日)。水田での営農型太陽光(国内初)、リコー×東京都との庭園灯設置等、多様な設置形態の実績を積み上げ中 積水化学 2026.3
(2)タンデム型:高効率×住宅用初期市場×中国依存懸念国への展開
// ROADMAP
タンデム型については、耐久性・高効率の付加価値が高く評価される住宅用を初期市場として、国内リプレース需要の取り込みや中国依存を懸案とする国への展開を視野に入れる。2030年にシリコン以下となる12円/kWh以下の野心的な技術確立等を目標とした研究開発支援と並行して、量産体制整備を早急に進める。
// WHY IT MATTERS
「中国依存を懸案とする国への展開を視野に入れる」という表現は、ペロブスカイト太陽電池の地政学的な競争優位を端的に示す。欧米・アジア等の国々がシリコン太陽電池での中国依存から脱却を目指す中、日本製ペロブスカイト太陽電池は「中国に依存しない脱炭素エネルギー技術」という付加価値を持つ。国内の約77GW(2025年3月時点)のシリコン太陽電池のリプレース市場も、長期的な需要の確実性を示す。
// 海外動向

中国(競合) GCLペロブスカイトが2026年7月をめどにタンデム型の量産販売を日本でも開始する予定。フィルム型では日本(積水化学)が先行しているが、タンデム型では中国勢の量産速度に注意が必要な局面に入っている。

米国・欧州 GI基金等を活用した米国等での海外実証が進行中。非価格価値(安全保障・脱中国依存)の具体化と国際標準化で、同志国との連携強化が政策パッケージに明記されている。

(3)官民投資の具体像
// ROADMAP
完成品および重要な周辺部素材・製造装置について、民間企業を中心に積極的な投資を実施。産業全体に関わる研究開発について、産総研・民間企業の連携により知見の共有を図る。【定量的インパクト】官民投資ロードマップの取りまとめまでに提示(2026年夏予定)。
CHAPTER 03 3.課題と政策パッケージ【政策手段】
① 国内投資支援
// ROADMAP
GI基金による事業者や大学等への研究開発支援を令和3年度より実施。GXサプライチェーン構築支援事業による事業者の量産のための設備投資支援を実施。需要家向けの導入支援を令和7年度より実施。
② 需要創出・市場確保・社会実装支援
// ROADMAP
(国内展開)初期は自治体・企業への導入を促進すべく、需要家向けの導入補助を今年度より実施。来年度は耐荷重性調査などを含めた建物単位での導入計画の作成に対して補助を拡大。令和9年度には省エネ法の定期報告書において屋根面積や積載荷重等の報告を求め、量産後にスムーズに導入が進む「ペロブスカイトReady」な社会を目指す。公共施設やインフラ空間での実証実装を強化し、公共調達等の官需による大規模な需要喚起を行う。さらに令和8年度より3年間、GI基金の採択事業者の生産品に対する固定資産税の課税特例を重点化。さらに地方公共団体が国庫補助を活用して公共施設等にペロブスカイト太陽電池を導入する事業について、新たに地方財政措置を実施予定。中長期的には、FIT/FIP制度の新区分による支援を開始する方向で検討を継続。安全性を考慮した設置・施工ガイドラインを令和7年度中に公表、随時アップデートを予定。(海外展開)GI基金等を活用した海外実証(米国等)。有志国と連携し公正な競争を確保する国際標準を策定。タンデム型は量産が始まり次第、海外での試験販売の実施を検討。
// WHY IT MATTERS
「ペロブスカイトReady」という表現がユニークだ。省エネ法の定期報告書で屋根面積・積載荷重等の報告を義務化することで、「どの建物にペロブスカイト太陽電池を設置できるか」というデータを事前に蓄積する。これが量産後の導入加速のインフラとして機能する設計だ。需要の実態把握→設置場所の可視化→量産コスト低下後の大規模導入という「ソフトインフラ先行型」の需要創出戦略だ。
③ 立地競争力強化
// ROADMAP
官民金融機関と連携したリスクマネー供給、ファイナンスや保険業界への情報提供。
④ 国際連携
// ROADMAP
国際標準化の策定に向けた、高度研究機関を有する同志国との連携。非価格価値の具体化、特定国の影響を受けにくいマーケットの構築。タンデム型量産に向けた同志国とのサプライチェーン連携。
// WHY IT MATTERS
「非価格価値の具体化」は、中国製品との価格競争を回避するために「中国に依存しない脱炭素技術」という安全保障上の価値を明示的にマーケティングする戦略だ。「特定国の影響を受けにくいマーケットの構築」とあわせ、中国シリコン太陽電池の8割支配という現状を「リスク」として認識する同志国のニーズに訴求するアプローチだ。
📋 続編:課題・政策パッケージ編
「なぜペロブスカイト太陽電池の量産化が難しいのか」「量産技術・施工技術の開発遅延リスク、中小サプライヤーのキャッシュフロー問題、過剰規制リスク」を整理した「課題・政策パッケージ編」も近日公開予定です。
▶ marketsupporter-ai.com で読む
出典
免責事項

本レポートは、公開されている政府資料・報道・企業IRをもとに編集した情報提供を目的としたものであり、投資助言・投資推奨を目的とするものではありません。データ基準時点:2026年04月〜05月。