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日本成長戦略 進捗モニタリング編 No.03|AI・半導体分野

フィジカルAI、決定後の進捗(2026年7月〜10月)
概算要求・AX指示・国産ロボット試作機・地域計画

官民投資ロードマップで2040年度までに官民10.5兆円の投資が想定されている「フィジカルAI(特にAIロボット)」。7月の決定後に示されたAI基本計画の改定、総理のAX指示、2027年度概算要求、国産汎用ロボットの試作機公開、地域のクラスター計画、ロードマップのPDCAまでを、一次資料の事実と数値で整理します。

作成:2026-10-21 | データ基準時点:2026年10月

CHAPTER 01

ロードマップ上の位置づけと目標

フィジカルAI(特にAIロボット)は、戦略17分野のうちAI・半導体分野の「主要な製品・技術等」です。2026年3月の素案で先行して検討が進められ、7月21日に日本成長戦略本部で官民投資ロードマップとして決定されました。

10.5兆円
官民投資額(想定)2040年度まで
144.4兆円
経済波及効果(想定)2040年度まで
20兆円
2040年に獲得を目指すAIロボット市場(世界シェア3割超)(政策目標として示されている値)

現状認識(素案)

  • AIロボット市場は2030年頃を境に急拡大し、2040年に約60兆円規模へ成長すると見込まれています。
  • 日本は産業用ロボット市場(約0.8兆円)で世界シェア約7割を持つ一方、サービスロボット市場(約2.8兆円)での世界シェアは1割強にとどまるとされています。
  • 素案は、AIモデルに加え、コンピューティング(ロジック半導体等)、制御系(マイコン等)、駆動系(アクチュエータ)、知覚系(各種センサー)を統合した「フィジカル・インテリジェント・システム」の競争力確立を目標に掲げています。
経済波及効果は産業連関分析による一次・二次波及効果の合算で、「主要な製品・技術等」の間で重複があるため、品目ごとの数字は合算できないとされています。官民投資額は予算編成やPDCAを通じて精査・改定される予定です。
日本成長戦略会議 第3回「先行して検討を進めている主要な製品技術等の官民投資ロードマップ素案」(2026年3月) 内閣官房「戦略17分野における『主要な製品・技術等』の官民投資ロードマップ 参考資料」(2026年7月)
CHAPTER 02

7月以降の政府方針:AI基本計画の改定とAX指示

人工知能基本計画(第Ⅱ期)の閣議決定(7月14日)

2026年7月10日に第5回人工知能戦略本部が開催され、7月14日に「人工知能基本計画(第Ⅱ期)」が閣議決定されました。9月18日には、2027年度概算要求におけるAI関連予算が公表されています。

総理によるAX指示(10月1日)

10月1日の第8回日本成長戦略会議で、総理は「高性能AIの社会実装は、我が国の成長戦略実現に不可欠」と述べ、関係大臣に年末までに次の3点をまとめるよう指示しました。

  1. 信頼できるAIで社会全体を駆動するAXの具体像
  2. AXに対応した規制・制度改革を進めるための原則
  3. 社会実装を加速するためのアクションプラン

同会議の「当面の検討課題(案)」には、投資環境整備として「AI戦略・AI社会実装に向けた対応」と、データセンターや半導体工場等の拡大に伴う「電力インフラへの対応」が挙げられています。

内閣府「AI戦略」ページ(人工知能基本計画(第Ⅱ期)2026年7月14日閣議決定ほか) 首相官邸「日本成長戦略会議」総理発言(2026年10月1日) 内閣官房 第8回日本成長戦略会議 資料2「当面の検討課題(案)」
CHAPTER 03

2027年度概算要求

経済産業省の2027年度概算要求には、フィジカルAI・AIロボットに関する次の事業が「強く豊かな日本」投資枠で計上されています。

事業名2027年度要求額区分
AIロボット・フィジカルAI向けマルチモーダル基盤モデル開発事業8,964億円投資枠
AIロボティクス戦略事業3,209億円投資枠
AIロボティクスの中核拠点事業1,333億円投資枠
廃炉フィジカルAI関連研究開発事業470億円投資枠
概算要求は要求段階の金額で、予算額は年末の政府予算案の決定に向けて精査されます。複数年度にわたる事業では、要求額が単年度の執行額と一致しない場合があります。
経済産業省「令和9年度 経済産業省関係 概算要求等概要」(2026年8月31日)
CHAPTER 04

研究開発・実証の進捗

マルチモーダル基盤モデル開発事業(NEDO)

NEDOの「AIロボット・フィジカルAIを見据えたマルチモーダル基盤モデル開発事業」は、2026年3月24日〜4月22日に公募が行われ、15件の申請を審査した上で、6月30日に実施予定先が決定されました。事業期間は2026〜2030年度で、2027年度以降は毎年度ステージゲート審査で継続の可否を判断するとされています。

国産汎用ロボット開発コンペティション(9月16日 試作機公開)

2026年9月16日の「フィジカルAI Summit」で、「国産汎用ロボット開発コンペティション」の開発成果が初めて公開されました。一般社団法人AI・ロボット協会(AIRoA)がNEDOの委託事業の一環として実施しているもので、7社が実用レベルの双腕モバイルマニピュレータの試作機を開発しています。

コンペティションの流れ(NEDO公表資料より)
  • 公募で採択された企業が、約6か月間で試作機を開発する。
  • 評価基準を満たした企業は、改良機の開発、さらに量産体制の構築へ進む。
  • 完成したロボットは、将来的にロボット基盤モデル開発のためのデータ収集用ロボットとして活用される予定。
NEDO「AIロボット・フィジカルAIを見据えたマルチモーダル基盤モデル開発事業」公募・採択ページ NEDO「フィジカルAI Summitにて『国産汎用ロボット開発コンペティション』の開発成果を初公開します」
CHAPTER 05

地域のクラスター計画

地域未来戦略(2026年7月21日閣議決定)に基づく計画のうち、フィジカルAI・ロボットを扱う都道府県の地域産業クラスター計画(B計画)は次のとおりです(内閣官房の公表ページ、2026年10月21日確認)。フィジカルAIを名称に含む戦略産業クラスター計画(A計画)はありません。

策定主体計画名・産業領域
福岡県・北九州市フィジカルAI分野における地域産業クラスター計画(社会実装型フィジカルAI産業領域)
山梨県成長産業横断型全県ファウンドリー化計画(医療機器・航空宇宙防衛分野・フィジカルAIを中核とする高精度ものづくり産業群)
大阪府ロボット分野における地域産業クラスター計画(府内企業ネットワークを核とするロボット産業領域)
福岡県・北九州市 フィジカルAI分野の目標(KGI)
  • 官民設備投資額:2035年度までの累計で6,000億円(2035年度単年で600億円)
  • 付加価値増加額:2035年度に2022年度比734億円増
  • 産業人材育成数:10年累計で20,000名(2035年度)

主な取組として、実証フィールドの提供や実装の伴走支援を行う「フィジカルAIサンドボックス」、実装型SIerの育成などを行う「フィジカルAI社会実装LABO」が挙げられ、国家戦略特区制度で規制改革案を提案中とされています。

KGIの数値は、計画で目標として示されている値です。

内閣官房「地域未来戦略に関する3類型の計画」B.地域産業クラスター計画一覧 福岡県・北九州市「フィジカルAI分野における地域産業クラスター計画」概要資料
CHAPTER 06

官民投資ロードマップのPDCA

2026年10月16日の第5回戦略分野分科会で、「官民投資ロードマップ」で掲げた主な施策の取組状況が報告されました。報告対象はフィジカルAI、次世代船舶、ゲームの3品目で、フィジカルAIの資料(資料3)は非公開です。

同分科会で示されたPDCAの進め方は、次のとおりです。

  • 予算事業・税制措置・制度改革等の取組状況を2027年1月頃に整理する。
  • その後、各分野のWG等で施策の見直しの要否を検証する。
  • 結果を2027年春の官民投資ロードマップの改訂等に反映する。
内閣官房 第5回戦略分野分科会 議事次第・資料2(2026年10月16日)
CHAPTER 07

数値の整理と今後の確認ポイント

指標数値出典・時点
官民投資額(想定)10.5兆円(2040年度まで)官民投資ロードマップ参考資料(2026年7月)
経済波及効果(想定)144.4兆円(2040年度まで)同上
市場獲得目標2040年に20兆円・世界シェア3割超(政策目標として示されている値)素案(2026年3月)
AIロボット市場の見通し2040年に約60兆円規模素案(2026年3月)
経産省 基盤モデル開発事業8,964億円(2027年度要求・投資枠)経済産業省(2026年8月)
経産省 AIロボティクス戦略事業3,209億円(同上)同上
経産省 AIロボティクスの中核拠点事業1,333億円(同上)同上
国産汎用ロボット開発コンペ7社が試作機を開発・9月16日に公開NEDO(2026年9月)
北九州 B計画 官民設備投資(KGI)2035年度まで累計6,000億円福岡県・北九州市 計画概要

今後の確認ポイント

  • 年末に取りまとめられるAXの具体像・規制改革の原則・アクションプラン
  • 年末の2027年度政府予算案での各事業の予算額
  • 年末に策定される日本成長戦略実行計画での位置づけ(3類型のどれに入るか、5か年の投資事業計画)
  • 国産汎用ロボット開発コンペの評価結果と、改良機・量産段階への移行
  • 2027年1月頃の取組状況の整理と、2027年春のロードマップ改訂
📌

関連記事

フィジカルAIの企業動向とサプライチェーンは、官民投資ロードマップシリーズ Layer 2-B'「フィジカルAI」編で整理しています。進捗モニタリング編 No.01(総論)、No.02(次世代船舶)もあわせてご覧ください。

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免責事項

本レポートは就職・転職および投資判断の参考情報として作成されたものであり、特定の投資・転職行動を推奨するものではありません。掲載データは各記載出典(政府・省庁・NEDOの公表資料)に基づきますが、数値の正確性・完全性を保証するものではありません。投資判断は自己責任において行ってください。本レポートの内容は作成時点の情報に基づいており、予算編成・政策変更等により実態が変化する可能性があります。概算要求額は要求段階の金額であり、予算額として確定したものではありません。個別企業に関する投資推奨は一切含みません。データ基準時点は2026年10月です。

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