官民投資ロードマップで2040年度までに官民10.5兆円の投資が想定されている「フィジカルAI(特にAIロボット)」。7月の決定後に示されたAI基本計画の改定、総理のAX指示、2027年度概算要求、国産汎用ロボットの試作機公開、地域のクラスター計画、ロードマップのPDCAまでを、一次資料の事実と数値で整理します。
フィジカルAI(特にAIロボット)は、戦略17分野のうちAI・半導体分野の「主要な製品・技術等」です。2026年3月の素案で先行して検討が進められ、7月21日に日本成長戦略本部で官民投資ロードマップとして決定されました。
2026年7月10日に第5回人工知能戦略本部が開催され、7月14日に「人工知能基本計画(第Ⅱ期)」が閣議決定されました。9月18日には、2027年度概算要求におけるAI関連予算が公表されています。
10月1日の第8回日本成長戦略会議で、総理は「高性能AIの社会実装は、我が国の成長戦略実現に不可欠」と述べ、関係大臣に年末までに次の3点をまとめるよう指示しました。
同会議の「当面の検討課題(案)」には、投資環境整備として「AI戦略・AI社会実装に向けた対応」と、データセンターや半導体工場等の拡大に伴う「電力インフラへの対応」が挙げられています。
経済産業省の2027年度概算要求には、フィジカルAI・AIロボットに関する次の事業が「強く豊かな日本」投資枠で計上されています。
| 事業名 | 2027年度要求額 | 区分 |
|---|---|---|
| AIロボット・フィジカルAI向けマルチモーダル基盤モデル開発事業 | 8,964億円 | 投資枠 |
| AIロボティクス戦略事業 | 3,209億円 | 投資枠 |
| AIロボティクスの中核拠点事業 | 1,333億円 | 投資枠 |
| 廃炉フィジカルAI関連研究開発事業 | 470億円 | 投資枠 |
NEDOの「AIロボット・フィジカルAIを見据えたマルチモーダル基盤モデル開発事業」は、2026年3月24日〜4月22日に公募が行われ、15件の申請を審査した上で、6月30日に実施予定先が決定されました。事業期間は2026〜2030年度で、2027年度以降は毎年度ステージゲート審査で継続の可否を判断するとされています。
2026年9月16日の「フィジカルAI Summit」で、「国産汎用ロボット開発コンペティション」の開発成果が初めて公開されました。一般社団法人AI・ロボット協会(AIRoA)がNEDOの委託事業の一環として実施しているもので、7社が実用レベルの双腕モバイルマニピュレータの試作機を開発しています。
地域未来戦略(2026年7月21日閣議決定)に基づく計画のうち、フィジカルAI・ロボットを扱う都道府県の地域産業クラスター計画(B計画)は次のとおりです(内閣官房の公表ページ、2026年10月21日確認)。フィジカルAIを名称に含む戦略産業クラスター計画(A計画)はありません。
| 策定主体 | 計画名・産業領域 |
|---|---|
| 福岡県・北九州市 | フィジカルAI分野における地域産業クラスター計画(社会実装型フィジカルAI産業領域) |
| 山梨県 | 成長産業横断型全県ファウンドリー化計画(医療機器・航空宇宙防衛分野・フィジカルAIを中核とする高精度ものづくり産業群) |
| 大阪府 | ロボット分野における地域産業クラスター計画(府内企業ネットワークを核とするロボット産業領域) |
主な取組として、実証フィールドの提供や実装の伴走支援を行う「フィジカルAIサンドボックス」、実装型SIerの育成などを行う「フィジカルAI社会実装LABO」が挙げられ、国家戦略特区制度で規制改革案を提案中とされています。
KGIの数値は、計画で目標として示されている値です。
2026年10月16日の第5回戦略分野分科会で、「官民投資ロードマップ」で掲げた主な施策の取組状況が報告されました。報告対象はフィジカルAI、次世代船舶、ゲームの3品目で、フィジカルAIの資料(資料3)は非公開です。
同分科会で示されたPDCAの進め方は、次のとおりです。
| 指標 | 数値 | 出典・時点 |
|---|---|---|
| 官民投資額(想定) | 10.5兆円(2040年度まで) | 官民投資ロードマップ参考資料(2026年7月) |
| 経済波及効果(想定) | 144.4兆円(2040年度まで) | 同上 |
| 市場獲得目標 | 2040年に20兆円・世界シェア3割超(政策目標として示されている値) | 素案(2026年3月) |
| AIロボット市場の見通し | 2040年に約60兆円規模 | 素案(2026年3月) |
| 経産省 基盤モデル開発事業 | 8,964億円(2027年度要求・投資枠) | 経済産業省(2026年8月) |
| 経産省 AIロボティクス戦略事業 | 3,209億円(同上) | 同上 |
| 経産省 AIロボティクスの中核拠点事業 | 1,333億円(同上) | 同上 |
| 国産汎用ロボット開発コンペ | 7社が試作機を開発・9月16日に公開 | NEDO(2026年9月) |
| 北九州 B計画 官民設備投資(KGI) | 2035年度まで累計6,000億円 | 福岡県・北九州市 計画概要 |
本レポートは就職・転職および投資判断の参考情報として作成されたものであり、特定の投資・転職行動を推奨するものではありません。掲載データは各記載出典(政府・省庁・NEDOの公表資料)に基づきますが、数値の正確性・完全性を保証するものではありません。投資判断は自己責任において行ってください。本レポートの内容は作成時点の情報に基づいており、予算編成・政策変更等により実態が変化する可能性があります。概算要求額は要求段階の金額であり、予算額として確定したものではありません。個別企業に関する投資推奨は一切含みません。データ基準時点は2026年10月です。