産業構造分析レポート 2026年03月発行 ── 航空・宇宙/ロケット・射場(内部環境編)
INDUSTRY ANALYSIS REPORT — INTERNAL ENVIRONMENT

業界分析|高市政権「戦略17分野」
航空・宇宙
先行検討技術⑨ロケット・射場(内部環境編)

就職・転職検討者向け 株式投資家向け 数字と事実のみ記載
本レポートのデータ基準時点:2026年03月 / 各章の統計は最新確定値または推計値(推計と明記)を使用

目次 — TABLE OF CONTENTS


CHAPTER 00

この内部環境編の立ち位置

外部環境編との接続:外部環境編では、世界宇宙産業54兆円(2022年)・宇宙打上げ市場CAGR 12.6%・SpaceXが2024年に132回・世界の50%超を打上げる一強構造・日本は3回/年・国内衛星の国内打上げ比率50%・H3目標コスト約50億円・宇宙戦略基金3,000億円・2030年年30回以上の打上げ目標(政策目標として示されている)という外部構造を整理しました。本編ではその前提を受け、「外部の構造がこの産業の業態・収益・人材にどのような特性として現れているか」を数字と事実で記述します。
本編でやること/やらないこと
  • 【やること】三菱重工(H3プライムコントラクタ)・IHI(LE-9エンジン・固体ロケット)・三菱電機(衛星製造)という大手プレイヤーの収益構造の実態を数値で記述する
  • 【やること】インターステラテクノロジズ(IST)・スペースワンという民間新規参入ロケット企業の財務・資金調達の実態を記述する
  • 【やること】「官需依存・打上げ1回あたり費用が大きい・回収に時間がかかる」という収益構造の特殊性を示す
  • 【やること】宇宙関連エンジニアの人材市場の実態(年収・職種・希少性)を整理する
  • 【やらないこと】特定銘柄の投資推奨・勝ち負けの断定・良し悪しの評価
本レポート基本方針
CHAPTER 01

業界内プレイヤー構成

日本のロケット産業の主要プレイヤー4業態

業態 主な役割 代表プレイヤー 収益の性格
基幹ロケット
プライムコントラクタ
H3ロケットの機体システム開発・製造・打上げサービス事業化。JAXAと協働して2014年より開発を推進。打上げ後は三菱重工が打上げサービス事業者として運営。 三菱重工業(H3の開発プライム・打上げサービス事業者) 官需(政府衛星打上げ)中心のフロー収益。打上げ回数に比例。現状は年数回のオーダー。商業打上げ受注拡大が課題。宇宙事業は「航空・防衛・宇宙」セグメント内の一機能であり単独の財務開示なし。
ロケットエンジン・
固体ロケット
H3搭載LE-9エンジン(液体水素・液体酸素)の開発・製造。固体ロケットモーター(イプシロンS等)の開発。防衛用固体ロケット技術も保有。 IHI(LE-9エンジン)、IHIエアロスペース(固体ロケット・スペースワン出資企業) エンジン製造収益。打上げ増加に比例して需要増加。民間航空機エンジンと同様の技術基盤を持つが、ロケット向けは打上げ回数が少ないため規模は限定的。
人工衛星製造・
宇宙機器
人工衛星の設計・製造・試験。宇宙機器(探査機・補給機等)の開発。打上げ需要の創出に直結。 三菱電機(衛星バス)、NEC(衛星電子機器)、NECスペーステクノロジー等 衛星1基あたりの製造収益。打上げ頻度が上がれば製造需要も増加する連動関係。政府衛星・民間衛星双方に対応。
民間新規参入
ロケット企業
小型ロケットを開発・製造・打上げサービスとして提供する民間スタートアップ。宇宙戦略基金・SBIRの支援を受けて開発中。 スペースワン(カイロスロケット・和歌山)、インターステラテクノロジズ(ZEROロケット・北海道)、将来宇宙輸送システム等 開発段階にあり収益は限定的。公的支援(SBIR・宇宙戦略基金)と民間資金調達を組み合わせた先行投資フェーズ。量産・商業打上げ確立が収益化の前提。
【注記】三菱重工・IHIの宇宙事業関連の財務数値は「航空・防衛・宇宙」等のセグメント全体の数値に含まれており、ロケット事業単体の収益は独立開示されていません。
三菱重工 宇宙事業キャリア採用ページ(2026年3月) 宙畑「SBIRフェーズ2採択3社」(2024年9月)
CHAPTER 02

バリューチェーンと利益の所在

ロケット産業の収益構造の本質

ロケット産業の収益構造は、民間航空機産業と根本的に異なります。民間航空機は年間数百〜千機以上の製造・納入による量産型フロー収益ですが、ロケットは年数回〜数十回という少量の打上げサービス収益が基本です。このため、固定費(開発費・施設維持費・人件費)を少ない打上げ回数で回収しなければならない構造となっており、「打上げ1回あたりのコスト」を下げるには打上げ頻度を増やすしかないという循環があります。

現状の日本では年数回程度の打上げしかなく、三菱重工の宇宙事業は「航空・防衛・宇宙」セグメント全体の規模と比較して宇宙単独の収益は小さいとされています(軍研ノート・2025年10月の分析では「宇宙セグメントの売上は全体の数%」と記述)。固定費を広い事業基盤(防衛・民間航空・エネルギー等)で分担できる多角経営企業でなければ、ロケット単独事業の収益化は困難という産業構造が成立しています。

官需依存という収益の前提条件

現状の日本のロケット打上げ収益は、政府衛星(情報収集衛星・防衛衛星・気象衛星・科学観測衛星等)の打上げが主要収益源です。Eutelsatとの商業打上げ契約(2024年)は初の本格的な商業受注として注目されましたが、収益の大部分は引き続き官需です。「官需依存性が高い」ことは資料2(2026年3月)にも明示されており、SpaceXのような民間需要(コンステレーション向け)を大量獲得するには価格・頻度・信頼性での競争力が必要です。

軍研ノート「三菱重工の防衛産業」(2025年10月) 日本成長戦略会議 第3回 資料2(2026年3月)
CHAPTER 03

収益構造の全体像

業態別 収益構造の特性

業態別 収益構造の特性(2026年3月時点)
  • 【三菱重工(H3プライム)】H3ロケットの開発プライムコントラクタかつ打上げサービス事業者。全社では2025年3月期に売上収益5兆271億円・事業利益3,831億円・当期利益2,454億円とすべて過去最高を達成(三菱重工決算・2025年5月)。ただし宇宙事業はこのうち「全体の数%」程度とされ、全社業績の主要ドライバーはエネルギー(GTCC)・防衛・民間航空機エンジンです。H3商業打上げ受注の拡大が宇宙事業単独の収益向上の鍵となります。
  • 【IHI(LE-9エンジン・固体ロケット)】LE-9エンジンはH3のメインエンジンとしての製造収益が発生。固体ロケットモーターはIHIエアロスペース(子会社)が担当。H3打上げ回数増加に連動してエンジン製造需要が増加する構造。IHI全社は2025年3月期に受注高・売上収益・営業利益・当期利益すべてで過去最高を達成しましたが、これは主に民間航空機エンジン事業・防衛事業の回復による影響が大きく、ロケットエンジン単体の貢献は限定的です。
  • 【スペースワン(カイロスロケット)】2018年設立(キヤノン電子・IHIエアロスペース・清水建設・日本政策投資銀行が出資)。累計資金調達額が200億円超(2024年10月発表)。カイロスロケット初号機の打上げは2024年3月13日に打上げ失敗(飛行中断処置)。同年12月に予定していた2号機打上げは2025年以降に延期。SBIRフェーズ2採択(最大12.3億円)。2020年代中に年間20機の打上げ・2030年代に30機の「宇宙宅配便」を目標としています(スペースワン)。
  • 【インターステラテクノロジズ(ZEROロケット)】北海道大樹町を拠点に液体燃料ロケットZEROを開発中。累計資金調達額約107億円(Buffett Code)に加えSBIRフェーズ2で最大46.3億円の交付が決定(2024年9月)。シリーズEラウンドで31億円調達(2024年8月・SBIグループ・NTTドコモ等が参画)。2025年1月にはウーブン・バイ・トヨタと資本業務提携し、量産可能なモノづくりへの転換を目指しています。ロケット事業と人工衛星事業の垂直統合を目指しています。
三菱重工業 2024年度(2025年3月期)決算資料(2025年5月) The Bridge「スペースワン、累計調達200億円超」(2024年10月) 宙畑「SBIRフェーズ2採択」(2024年9月) Spida「IST シリーズEで31億円」(2024年8月)
CHAPTER 04

主要企業の財務指標概要

【注記】下表の三菱重工・IHIの数値は全社または「航空・防衛・宇宙」セグメント全体の数値であり、ロケット・宇宙事業単体の数値ではありません。民間新規参入企業(スペースワン・IST)は非上場または未上場のため財務詳細は限定的です。
企業 指標 数値 出典・時点
三菱重工業(全社) 売上収益 5兆271億円(2025年3月期・過去最高) 三菱重工決算 2025年5月
三菱重工業(全社) 事業利益 3,831億円(2025年3月期・過去最高) 同上
三菱重工業(全社) 当期利益 2,454億円(2025年3月期・過去最高) 同上
三菱重工業 航空・防衛・宇宙 事業利益 999億円(2024年度・防衛・宇宙を含むセグメント全体) 三菱重工決算資料 2025年5月
IHI(全社) 2025年3月期の業績 受注高・売上収益・営業利益・当期利益すべて過去最高 IHI決算 2025年5月
スペースワン 累計資金調達額 200億円超(2024年10月時点) The Bridge 2024年10月
スペースワン SBIR フェーズ2交付額(上限) 12.3億円(フェーズ2・令和8年3月末まで) 文科省 2024年9月
インターステラテクノロジズ 累計資金調達額(Buffett Code) 約107億円(2025年時点) Buffett Code
インターステラテクノロジズ SBIR フェーズ2交付額(上限) 46.3億円(フェーズ2・令和8年3月末まで) 文科省 2024年9月
将来宇宙輸送システム SBIR フェーズ2交付額(上限) 50億円(フェーズ2・令和8年3月末まで) 同上
5兆271 億円 三菱重工 全社売上収益
(2025年3月期・過去最高)
200億超 スペースワン 累計資金調達額
(2024年10月)
約107億 IST 累計資金調達額
(Buffett Code 2025年)
SBIR最大
3社計108億
民間ロケット3社への
フェーズ2公的支援上限
三菱重工業 2024年度(2025年3月期)決算(2025年5月) 文科省 SBIR フェーズ2採択結果(2024年9月)
CHAPTER 05

人件費構造と労働集約性

大手重工・JAXA・民間スタートアップの処遇差

ロケット産業の人件費構造は、所属する組織によって大きく異なります。三菱重工の全社平均年収は約1,017.7万円(2024年度有証報告書・JAC Recruitment集計)と大手重工の水準にあります。JAXAの平均年収はOpenWork(社員投稿ベース・参考値)によると729万円で、研究開発職779万円・技術職768万円が相対的に高い水準です。民間スタートアップ(IST・スペースワン等)は未上場のため処遇の公式データは限られていますが、ベンチャー的な報酬体系(ストックオプション等)が用いられるケースも見られます。

ロケット技術の高度専門性と人員不足

資料2(2026年3月)は「人材不足、経験人材の流動性の低さ」をボトルネックとして明示しています。ロケット開発に必要な推進系・構造・制御・誘導・安全・品質保証等の専門技術者は、航空機産業同様に長期育成が必要な希少人材です。宇宙産業全体で約100社超のスタートアップが参入している状況で、限られた専門人材の獲得競争が激化しています(宙畑・2024年12月)。

JAC Recruitment「宇宙関係業界の平均年収」(2026年2月・2024年度有証報告書ベース) OpenWork JAXA平均年収(社員投稿ベースの参考値・36人回答) 日本成長戦略会議 第3回 資料2(2026年3月)
CHAPTER 06

人材市場の実態(概要)

宇宙・ロケット関連の主要職種

宇宙・ロケット関連 主要職種(6職種)
  • 【ロケット設計・開発エンジニア(推進・構造・制御)】ロケットエンジン・機体構造・飛行制御・誘導系の設計開発を担う。航空宇宙工学・機械工学・電気工学の複合的な専門知識が必要。国内では三菱重工・IHI・JAXA・民間スタートアップが主な就職先。大手メーカーでの宇宙関連エンジニアの年収は三菱重工の全社平均(約1,017.7万円)に準じた水準が多く、専門性・役職による変動がある。
  • 【宇宙機(衛星)設計エンジニア】人工衛星・探査機・補給機等の設計・開発・試験を担う。三菱電機・NEC・NECスペーステクノロジー等が主な就職先。衛星需要が増加するとともに需要が増加する構造にある。
  • 【打上げ射場・地上設備エンジニア】射場設備・追跡管制設備・燃料製造保管設備・発射管制等を担う。種子島宇宙センター等の現場勤務が基本。老朽化設備の更新・新規射場整備が進む局面で需要増加が見込まれる。
  • 【品質保証・安全性エンジニア】ロケット・衛星の品質保証・信頼性管理・安全性検証を担う。「打上げ失敗リスクが事業継続に直結する」という産業特性から、特に重視される職種。三菱重工の宇宙事業キャリア採用ページにも専用の品質保証職種が明記されている。
  • 【宇宙ビジネス・事業開発職】衛星データ利活用・商業打上げ受注・国際協力・スタートアップ連携等の事業開発を担う。技術系出身者の他、異業種(商社・金融・コンサル等)からの参入も見られる。宙畑の調査では「歴史が浅く多様な新規市場が拡大している今だからこそ、新規事業企画・事業開発経験者は高く評価される傾向」とされる(JAC Recruitment・2026年2月)。
  • 【宇宙スタートアップ・オールラウンダー】IST・スペースワン等の小規模スタートアップでは、一人が複数の職種を兼任することが多い。ロケット開発の全工程に関与できる一方、処遇は大手より変動が大きい。宇宙戦略基金・SBIRによる公的支援が人件費の一部を担う構造にある。
約1,017.7 万円 三菱重工 全社平均年収
(2024年度有証報告書)
729 万円 JAXA 平均年収
(OpenWork・社員投稿ベース参考値)
779 万円 JAXA 研究開発職
平均年収(同上)
約100社超 国内宇宙スタートアップ数
(2024年時点・経産省)
【注記】三菱重工の全社平均年収は宇宙事業部門に特化した数値ではなく全社平均です。OpenWorkのJAXA平均年収は社員投稿ベース(36人回答)の参考値であり、公式公表値ではありません。実際の処遇は職種・役職・経験により大きく異なります。
JAC Recruitment「宇宙関係業界の平均年収」(2026年2月) OpenWork JAXA(社員投稿ベース・36人・参考値) 経産省「国内外の宇宙産業の動向」(2024年3月)
CHAPTER 07

現場と本部の非対称性

「官需依存・単年度予算」という制度的制約

ロケット産業の収益の大部分は政府衛星打上げであり、その予算は国の宇宙予算の枠内で決まります。単年度予算の制約により、民間企業が長期の設備投資・人材育成計画を立てにくいという構造的課題があります。宇宙戦略基金のアンカーテナンシー(政府による打上げサービスの計画的調達)はこの課題への対応策として示されていますが、2026年3月時点では実施に向けた制度整備の段階です(資料2・2026年3月)。

「打上げ失敗リスクが事業継続に直結する」という非対称性

航空機産業では品質問題発生時にリコール・修理費用・信頼回復という段階的な対処が可能ですが、ロケットの打上げ失敗は衛星の全損・信頼失墜・調査期間中の打上げ停止(数ヶ月〜1年程度)という連鎖を生みます。H3試験機1号機失敗(2023年3月)の後、H3は約1年間打上げを停止して原因究明・対策を実施しました。民間スタートアップにとっては1回の失敗が資金繰り・顧客受注・スタッフ士気に直結するリスクが内在しています。

SBIR支援の「2026年4月に次のステージゲート審査」という集中点

SBIRフェーズ3のステージゲート審査は2026年4月に実施される予定で、3社がさらに2社に絞られる予定です(宙畑・2024年9月)。採択された企業は1社あたり最大140億円の支援を受けられる一方、採択されなかった企業は支援が打ち切られるという集中点があります。この審査を控えた時期(2025〜2026年)は、各スタートアップにとって結果の集中した期間となります。

日本成長戦略会議 第3回 資料2(2026年3月) 宙畑「SBIRフェーズ2採択3社」(2024年9月)
CHAPTER 08

構造的に忙しさが増幅する理由

H3の段階的高度化と商業受注拡大の同時進行

三菱重工はH3の定常運用(政府衛星打上げ)・アップグレード1(ライドシェア対応)の開発・商業打上げ受注の拡大・次期基幹ロケットへの技術繋ぎという複数のタスクを同時並行で進める必要があります。H3の打上げ成功実績は2024〜2025年に積み上がりつつあるものの、商業打上げを本格拡大するには価格・頻度・柔軟性でSpaceXとの差別化が必要であり、担当者への業務集中が生じやすい構造があります。

民間スタートアップの「打上げ実証・量産化・資金調達」の三重並行

IST・スペースワン等の民間スタートアップは、次号機の打上げ実証・量産化に向けた設計改良・次の資金調達ラウンドの準備という3つのタスクを同時に進める必要があります。SBIRの次のステージゲート審査(2026年4月)を控えた準備も加わり、小規模な組織にとっての業務集中度は高い状態にあります。

老朽化設備の更新と高頻度化への対応という二重課題

射場・試験設備の老朽化対応(整備後50年近くの設備)と、打上げ高頻度化(現状年数回→目標年30回以上)に対応するための設備増強は同時並行で進める必要があります。老朽化対応だけでも数百億〜数千億円規模の投資が必要とされる中、高頻度化のための射場増設・新規射点整備もマストの課題です。

日本成長戦略会議 第3回 資料2(2026年3月) JAXA H3プロジェクトチーム資料(2025年3月)
CHAPTER 09

誤解されやすいポイント

誤解されやすいポイント(5点)
  • 【「三菱重工の業績好調=ロケット事業が好調」】三菱重工の2025年3月期の業績は全社で過去最高ですが、主要ドライバーはエネルギー(GTCC)・防衛・民間航空機エンジンであり、宇宙事業は「全体の数%」とされています。宇宙事業単独の収益は全社業績からは読み取れません。
  • 【「H3が成功したからSpaceXと競争できる」】H3は2024年に打上げ成功実績を積み上げましたが、SpaceXは同年に132回打上げ(世界50%超)。打上げ頻度・コスト・柔軟性の差は依然として大きく、同等競争には射場増設・コスト削減・量産化という前提条件があります。
  • 【「宇宙スタートアップは資金豊富だから安定している」】IST・スペースワン等は累計100〜200億円超の調達実績がありますが、ロケット開発のコストは莫大であり、量産・商業打上げが確立するまでは先行投資段階が続きます。次のSBIRステージゲート審査(2026年4月)での採択有無が事業継続に影響を与える可能性があります。
  • 【「宇宙産業は儲かる産業になった」】世界市場は拡大していますが、日本のロケット産業の収益は官需依存・打上げ回数が少ない・設備老朽化という構造的制約の中にあります。三菱重工の全社好業績は主に防衛・エネルギーが牽引しており、宇宙事業単独の「儲かる産業化」は政策目標達成(2030年年30回以上)が前提です。
  • 【「宇宙エンジニアは高収入」】三菱重工の全社平均年収は約1,017.7万円と高いですが、これは全事業の平均値です。スタートアップ勤務の場合は処遇が異なります。一方でJAXAは公的機関の処遇水準(平均729万円・OpenWork参考値)であり、民間大手より低い場合もあります。
本レポート第1〜8章の総括
CHAPTER 10

内部環境の整理

数値サマリー

指標名 数値 出典・時点
第4章 三菱重工 全社売上収益(2025年3月期) 5兆271億円(過去最高) 三菱重工決算 2025年5月
第4章 三菱重工 全社事業利益(2025年3月期) 3,831億円(過去最高) 同上
第4章 スペースワン 累計資金調達額 200億円超(2024年10月) The Bridge 2024年10月
第4章 IST 累計資金調達額 約107億円(2025年) Buffett Code
第4章 SBIR フェーズ2 IST交付上限 46.3億円(令和8年3月末まで) 文科省 2024年9月
第6章 三菱重工 全社平均年収 約1,017.7万円(2024年度有証) JAC Recruitment 2026年2月
第6章 JAXA 平均年収 729万円(OpenWork・社員投稿ベース参考値) OpenWork

構造的に固定されやすい要素

構造的に固定されやすい要素
  • 三菱重工が日本の基幹ロケット(H3)のプライムコントラクタ・打上げサービス事業者という地位は、競合の新規参入がない限り変化しない
  • 官需依存(政府衛星打上げが主要収益源)という構造は、商業打上げが本格拡大するまで変化しない
  • 射場・試験設備の老朽化対応の緊急性は、投資を決定しても完工まで数年を要するため短期解消しない
  • 民間スタートアップ(IST・スペースワン等)が量産・商業打上げを確立して収益化するには、現在から数年以上の時間軸が必要
  • ロケット専門技術者の国内希少性は、育成に長期間を要するため短期解消しない
  • SBIR次のステージゲート審査(2026年4月)での採択結果が、採択されなかった企業の事業継続に直接影響する可能性がある
本レポート第1〜9章の集約
CHAPTER 11

有料版への橋渡し

FOR CAREER — 就活・転職向け有料版

三菱重工(大手)vs IST・スペースワン(スタートアップ)、どちらに入るか

  • 三菱重工宇宙事業・IHI・JAXA(大手・公的機関)とIST・スペースワン・将来宇宙輸送システム(スタートアップ)の処遇・キャリアパス・業務の性格の具体的比較
  • ロケット設計エンジニア・推進系・構造系・制御系・品質保証・射場エンジニア・宇宙ビジネス職という職種別の詳細年収レンジとスキル要件
  • SBIR審査(2026年4月)通過/不通過が採用計画に与える影響の考え方
  • 宇宙スタートアップへの転職で「異業種からの参入者が評価されやすい職種」はどれか
  • 宇宙産業全体の採用倍率と、大学院進学率(航空宇宙系は約8割が院進)という参入ルートの実態
FOR INVESTMENT — 投資判断向け有料版

宇宙産業の「三菱重工の全社業績」と「宇宙事業単独」の乖離を読む

  • 三菱重工の全社業績(過去最高)と宇宙事業単独の収益規模(全体の数%水準)の乖離の構造的理由
  • H3商業打上げ受注拡大(Eutelsat等)が三菱重工の財務にどの規模感で影響するかの考え方
  • IST・スペースワンへの投資環境——SBIRフェーズ3最大140億円の採択有無(2026年4月)という分水嶺
  • 宇宙戦略基金3,000億円のうちロケット関連テーマへの配分と、関連上場企業(三菱重工・IHI・清水建設・キヤノン電子等)への波及の読み方
  • 2030年「年30回以上の打上げ」という政策目標が達成された場合の産業規模変化の試算方法

【免責事項】本レポートは就職・転職および投資判断の参考情報として作成されたものであり、特定の投資・転職行動を推奨するものではありません。掲載データは各記載出典に基づきますが、数値の正確性・完全性を保証するものではありません。投資判断は自己責任において行ってください。三菱重工・IHIのセグメント財務数値は宇宙事業単独ではなくより広いセグメント全体の数値を含む場合があります。OpenWorkのJAXA平均年収は社員投稿ベースの参考値です。スペースワン・ISTは非上場のため財務詳細の開示は限定的です。データ基準時点は2026年03月です。

© 2026年03月 産業構造分析レポート ── ロケット・射場(内部環境編)

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