本レポートは、高市政権「戦略17分野」海洋の「海洋無人機(海洋ドローン)」の外部環境を、就職・転職検討者および株式投資家向けに数字と事実のみで記述します。所管は内閣府(海洋)です。
良し悪しの評価・投資推奨・将来予測は行いません。
日本成長戦略会議 第3回「先行して検討を進めている主要な製品技術等の官民投資ロードマップ素案」(2026年3月)は「世界のAUV、USV等の海洋無人機の市場は40〜50億ドル(出典:一般社団法人海洋産業研究・振興協会)、年平均8〜15%の成長が見込まれる」と示しています。同資料は「2030年頃には100億ドルを超える見込み」としています。
複数の調査機関の数値も同水準を示しています。世界UUV(無人潜水機)市場は2024年に48億ドル・2030年に111億ドル・CAGR 15.0%(市場調査レポート2024年10月)。世界AUV市場単体では2024年に21.1億ドル・2030年に56.5億ドル・CAGR 17.9%(Statistix MRC 2025年9月)。海洋AUV・ROV合計市場は2024年に33.1億ドル・2029年に59.7億ドル・CAGR 12.8%(The Business Research Company 2025年)と推計されています。
総合海洋政策本部は2023年12月に「AUVの社会実装に向けた戦略(AUV戦略)」を決定しました。「2030年までに我が国のAUV産業が育成され、海外展開まで可能となるよう、国主導の下で官民が連携して取り組む」と示しており(内閣府・2025年2月)、AUVを洋上風力発電インフラ管理・海洋資源開発・海洋調査・安全保障・海洋環境保全・防災減災等の広範な分野に導入することを目標としています。
内閣府 総合海洋政策推進事務局はAUV利用実証事業を令和6年度から実施し、2025年1月21日に成果報告会を開催しました。4件の利用実証試験(洋上風力発電施設への活用等を含む)の成果が報告され、2030年までの事業化に向けた各者の取組が示されました。「AUV官民プラットフォーム」の構築も進められています(内閣府・2025年2月)。
日本成長戦略会議 第3回「先行して検討を進めている主要な製品技術等の官民投資ロードマップ素案」(2026年3月)は「石油・ガス開発、安全保障等の分野で豊富な資金力を背景に欧米企業の産業化が先行」と明示しています。Kongsberg Maritime(ノルウェー)・Teledyne Marine(米国)・Saab AB(スウェーデン)・Oceaneering International(米国)・L3Harris Technologies(米国)等の欧米大手が市場をリードしており、上位5社で2024年の市場シェアの45.9%を占めています(GM Insights 2025年)。
日本は「造船技術等を背景に科学調査・技術開発等の分野を中心に技術基盤を発展させ、特に深海探査等の分野で強みを生かし世界をリードする取組を展開」している(資料2)ものの、産業規模では欧米と大きな差があります。
日本の排他的経済水域(EEZ)は約447万km²と世界第6位の広さを持ちます(国土面積37.8万km²の約12倍)。この広大な海域を従来の有人船舶で効率的に調査・監視するには膨大な人員とコストが必要であり、無人化・省人化のニーズが高い構造にあります。少子高齢化による人口減少が進む中で、海洋調査・監視・資源開発における省人化は不可欠な課題です。
資料2(2026年3月)は「近年、安全保障分野での無人アセットの重要性は格段に増大し、その強化が喫緊の課題。安全保障上の必要性とそれを実現する需要の拡大のためには、防衛利用と産業化が不可分なデュアルユース技術としての重要性が格段に上昇」と明示しています。ウクライナ・黒海での無人水上艦艇(USV)による実戦投入事例が海洋無人機の安全保障上の有効性を証明し、各国の調達スケジュールを加速させています。
アジア太平洋地域では中国の艦隊増強・インド太平洋への影響力拡大を背景に、日本・オーストラリア・インド等が海洋無人機の開発・調達を強化しています(GM Insights 2025年)。
南鳥島周辺の日本のEEZ海底にはレアアースを含む泥・マンガン団塊・海底熱水鉱床等の鉱物資源が確認されており、AUVを活用した海底資源調査が戦略的重要性を持っています。JAMSTECのSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)第3期では複数のAUVを活用した海洋資源調査・モニタリングが進められています。
資料2(2026年3月)は「複数の機体・機種を『群』として一体的に制御する新たな運用技術等が出現し、活用可能性が飛躍的に拡大」と示しています。従来の1機体・1オペレーターという運用から、AIによる群制御(複数AUVの協調運用)への移行が技術的な転換点として注目されています。JAMSTECは複数のAUVを同時に運用する実証試験(SIP第2期でのAUV隊列制御)にも成功しています。
水中通信の最大の制約は「電波が水中ではほとんど伝わらない」点です。現状では音響通信(ソナー)が主流ですが、通信速度・距離に制限があります。衛星通信を搭載したUSVが水中のAUVと音響通信で連携し、USVが衛星経由で陸上管制室にデータを送る「USV・AUV連携システム」が技術的な解決策として注目されています(JET-Robotics・2025年)。またAIによる異常検知・自律判断能力の向上が商用での普及を促進しています。
資料2(2026年3月)は「政府調達の規模・時期など、大規模需要の見通しの乏しさ」を最大の不確実性として明示しています。航空ドローン(民生)のような「明確な民間市場」がまだ形成されていないため、企業が先行投資をしにくい構造があります。この課題に対してAUV戦略では「官が主導して工程の共有を図り、関連動向等に応じて適時に更新する」とし、需要の可視化を政策的に進める方針が示されています。
資料2(2026年3月)は「新規産業であることに起因する保険負担の高止まり」「規制上の扱い等の制度面での見通しの乏しさ」をボトルネックとして明示しています。海洋無人機の商業運用には船舶安全法・港則法・海洋汚染防止法等の既存規制との整合性が必要であり、無人機特有のルール整備が進行中の段階です。
資料2(2026年3月)は「新たな技術の進展に伴い、スタートアップの新規参入等の機運が高まっており、こうした動向と連動した発展の好機」とも述べています。AI・センシング等のソフトウェア技術は既存の重工業より新興企業が有利な領域であり、SBIRなどを活用したスタートアップへの支援が政策的に明示されています。
資料1(2026年3月)は「海洋国家として、安全保障の観点から海を守り、また、成長の基盤として海を活かしていくことが重要であり、海洋無人機はその不可欠な要素」と位置づけています。海洋無人機は単なる民間産業ではなく、国家の海洋権益確保・経済安全保障の基盤インフラとして位置づけられています。
資料2(2026年3月)の勝ち筋は「機体単体(ハード)の省人化・高性能化等の技術開発を継続するとともに、複数の機体・機種の『群』としての利用や周辺技術と併せた運用サービスや取得する海洋データの利活用の方法(ソフト)も含めたパッケージ全体で高付加価値モデルを展開する」です。単なる機体製造業ではなく、データ・サービス込みのパッケージ展開で国際競争力を確立するという方針です。
資料2(2026年3月)は「海洋無人機関連産業のバリューチェーン及び分野横断的(造船・宇宙等)な連携体制の構築」を目指すべき機能として明示しています。造船業との連携(大型船舶・研究船へのAUV搭載)・宇宙との連携(衛星通信による水中・水上無人機の遠隔管制)が具体的な方向性として示されています。
| 章 | 指標名 | 数値 | 出典・時点 |
|---|---|---|---|
| 第1章 | 世界海洋無人機市場(現状) | 40〜50億ドル | 資料2 2026年3月(海洋産業研究・振興協会) |
| 第1章 | 世界市場 年平均成長率 | 8〜15% | 同上 |
| 第1章 | 世界市場(2030年頃) | 100億ドルを超える見込み | 同上 |
| 第1章 | 日本の目標(10年後) | 世界市場3割・40〜50億ドル程度(政策目標として示されている) | 同上 |
| 第1章 | 世界UUV市場(調査機関) | 48億ドル(2024年)→111億ドル(2030年)CAGR 15.0% | 市場調査レポート 2024年 |
| 第2章 | AUV戦略 決定 | 2023年12月(総合海洋政策本部) | 内閣府 |
| 第2章 | AUV利用実証事業 成果報告会 | 2025年1月21日(令和6年度・4件) | 内閣府 2025年2月 |
| 第2章 | 三菱重工 大型USV試作艇 | 2025年度に防衛装備庁と試作契約締結 | JET-Robotics 2025年 |
【免責事項】本レポートは就職・転職および投資判断の参考情報として作成されたものであり、特定の投資・転職行動を推奨するものではありません。市場規模数値は各調査機関の定義・算定方法が異なるため単純比較はできません。「政策目標として示されている」と注記した数値は政府が目標として掲げた値であり達成を保証するものではありません。データ基準時点は2026年04月です。
© 2026年04月 産業構造分析レポート ── 海洋無人機(海洋ドローン)(外部環境編)