入門編 商業段階の特殊製薬|製薬・バイオ全17回シリーズ 第8回

InMed Pharmaceuticals(INM)とはどんな会社? ― カンナビノイド原料供給が研究を支えたハイブリッド型製薬会社

株価・データ基準日:2026年9月16日(編集部確認時点)

⏰ InMedは現在、片頭痛治療薬開発会社Mentari Therapeuticsとの合併を進めており、2026年第4四半期の完了を目指しています。 完了すれば会社の姿は大きく変わる見通しです。本記事は、この転換点を踏まえた内容になっています。
InMed Pharmaceuticalsは、アルツハイマー病や眼科疾患向けの医薬品パイプラインと、レアカンナビノイド(大麻由来の希少成分)を 化粧品・健康食品業界向けに供給する子会社BayMedicaを両輪で持つ、ハイブリッド型の会社でした。BayMedicaの商業収益が研究開発を 下支えする構造を取ってきましたが、2026年になり、BayMedica事業は「非継続事業」に区分され、さらに片頭痛治療薬開発会社Mentari Therapeutics との全株式交換による合併を進めています。合併が完了すると、既存株主はInMedの製薬パイプラインの将来価値に連動する権利証書(CVR)を受け取り、 新会社はMentari Therapeuticsとして再出発する計画です。

1この会社は何をしている?

アルツハイマー病治療薬候補INM-901、眼疾患(加齢黄斑変性)治療薬候補INM-089、皮膚疾患治療薬候補INM-755など、 カンナビノイド受容体(CB1/CB2)をターゲットにした医薬品パイプラインを開発してきました。あわせて、子会社BayMedicaを通じて、 大麻に含まれる希少な成分(レアカンナビノイド)を化粧品や健康食品メーカー向けに供給する商業事業も展開しています。 この商業収益で研究開発費の一部をまかなう「ハイブリッド型」の構造を取ってきました。

2どのタイプの会社?

6分類のうち「商業段階の特殊製薬」に含まれますが、他社と異なり、承認薬の販売ではなく、原料供給という別事業の収益で研究を支える点が 特徴的でした。ただし2026年度(6月期)の決算では、このBayMedica事業は「非継続事業」として区分され、売上も前年の500万ドルから 320万ドルへ減少しています。さらに、片頭痛治療薬を開発する非上場企業Mentari Therapeuticsとの合併が進行中で、完了すればInMedという 会社自体が大きく姿を変える見通しです。

3ここがユニーク/4気をつける点

③ ここがユニーク

Mentari Therapeuticsとの合併は、2026年5月に契約が結ばれ、7月には追加で2億ドルの資金調達を実施するなど、合計で約4.9億ドルの 資金を確保した状態で合併を完了させる計画になっています。この資金は2029年までの運営資金と、主要な開発プログラムの重要な試験データ 取得までをカバーする水準とされています。既存のInMed株主は、合併完了時に普通株式に加えて、レガシーのパイプライン資産(INM-901、 INM-089、INM-755)の将来的な価値化に連動する CVR契約に基づき、将来特定の条件(資産の売却や薬の承認など)が達成された場合に追加の対価を受け取れる権利 を受け取る計画で、パイプラインの価値をゼロにせず株主に還元しようとする設計になっています。

④ 気をつける点

一方で、2026年度(6月期)の純損失は1,290万ドルに拡大し(前年820万ドル)、手元資金は2026年6月末時点でわずか220万ドルにまで 減少しています。過去には2026年3月と6月の2度、ナスダックから 上場維持基準取引所が定める、株式市場に上場し続けるための最低条件 (最低株価基準)に関する通知を受けています。合併は2026年第4四半期の完了を目指していますが、InMedとMentari双方の株主承認や、 目論見書の発効など複数の条件を満たす必要があり、確実に完了する保証はありません。合併が完了した場合、既存株主が保有するのは 主に片頭痛治療薬を開発する新会社の株式となり、CVRの価値がどの程度になるかも不確実です。

5数字で見るこの会社

指標数値これは何を意味するか
時価総額株価×発行済み株式数で計算する、会社の市場での大きさ 約750万ドル 2026年9月16日時点
株価 1.37ドル -
2026年度BayMedica売上高(非継続事業) 320万ドル(前年比▲36%) カンナビノイド原料供給事業の売上。今後の会社の姿からは切り離される見通し
2026年度通期純損失 1,290万ドル(前年820万ドル) 赤字幅が拡大
手元資金 約220万ドル(2026年6月30日時点) 合併完了前の同社単独での資金余力
Mentari合併後の想定資金規模 約4.9億ドル 2029年までの運営資金を見込む水準(Mentari側の資金調達を含む)

数値は2026年9月9日発表の2026年度(6月期)通期決算資料、および2026年9月16日時点の株価情報に基づく(編集部確認)。

6次に何が起きる?

Mentari Therapeuticsとの合併完了が2026年第4四半期(暦年)に予定されており、株主承認やForm S-4の発効などの手続きが進行中です。 完了すれば、新会社は「Mentari Therapeutics」としてティッカーMTRIで取引される見通しです。

7この記事のまとめ

InMed Pharmaceuticalsは、アルツハイマー病などの医薬品パイプラインと、カンナビノイド原料供給事業を組み合わせたハイブリッド型の会社 でしたが、2026年に大きな転換点を迎えています。片頭痛治療薬開発会社との合併により、既存の事業構造は大きく変わる見通しで、株主には パイプラインの将来価値に連動するCVRが割り当てられる計画です。当サイトが継続的に追跡する対象の一つであり、特定の投資行動を推奨するものではありません。

用語集

CVR(コンティンジェント・バリュー・ライト)
契約に基づき、将来特定の条件(資産の売却や薬の承認など)が達成された場合に追加の対価を受け取れる権利
上場維持基準
取引所が定める、株式市場に上場し続けるための最低条件
時価総額
株価×発行済み株式数で計算する、会社の市場での大きさ

もっと詳しく知りたい方へ

→ 同じく上場維持基準の論点を含むABVC BioPharma(ABVC)入門記事を読む(第7回) → 製薬・バイオ17銘柄マップ記事を読む(全体像はこちら)

※この記事は、投資判断を勧めるものではありません。取り上げた銘柄は、当サイトが学習・情報提供の目的で継続的に追跡している対象であり、「おすすめの銘柄」ではありません。

※記事内の数値は、公表されている決算資料や株価情報をもとに編集部が確認・整理したものです。将来の業績や株価を保証するものではありません。「編集部試算」と記載した数値は、公表情報をもとに編集部が独自に計算したものです。

※Mentari Therapeuticsとの合併は、株主承認などの条件を満たす必要があり、完了する保証はありません。CVRの将来的な価値も不確実です。パイプラインの薬はまだ承認されていません。

投資の最終判断は、必ずご自身で行ってください。