入門編 商業段階の特殊製薬|製薬・バイオ全17回シリーズ 第7回

ABVC BioPharma(ABVC)とはどんな会社? ― 「上場維持基準」を学ぶ植物由来医薬品の会社

株価・データ基準日:2026年9月15日(編集部確認時点)

📘 この記事では新しい概念「上場維持基準」を扱います。米国の株式市場には、上場を続けるための最低条件(株価水準や株主資本の額など)が定められており、 これを満たせないと上場廃止のリスクが生じます。学校の進級基準のようなもので、満たせなければ「退場」になりかねません。
ABVC BioPharmaは、植物由来(ボタニカル)の成分を活用した医薬品候補や、目の治療に使う医療機器を開発する、まだ承認された製品を持たない 臨床段階の会社です。他社に薬の権利をライセンス(貸し出し)して収入を得るモデルを取っていますが、実際に手元に入ってくる金額はごくわずかです。 2026年第2四半期は売上ゼロ、手元資金はわずか3万ドル強にまで落ち込み、「継続企業の前提に重要な疑義がある」との注記も付いています。 過去にはナスダックの 上場維持基準取引所が定める、株式市場に上場し続けるための最低条件 に抵触した経験もある銘柄です。

1この会社は何をしている?

うつ病、ADHD(注意欠陥・多動性障害)、がんなどを対象に、植物由来の成分を使った医薬品候補を複数開発しています。また、網膜剥離などの治療に使う 医療機器「Vitargus」も手がけています。自社で薬を最後まで開発・販売するのではなく、途中段階で他社にライセンスし、契約一時金や開発の節目ごとの 報酬(マイルストーン契約で決められた、開発の節目ごとに支払われる報酬の条件)、将来の売上に応じた ロイヤルティ他社の製品や技術が売れるたびに受け取る使用料 を受け取るモデルを採用しています。ただし、契約上の金額は数十億円規模と大きくても、実際に回収できた金額はこれまでわずかにとどまっています。

2どのタイプの会社?

6分類のうち「商業段階の特殊製薬」に分類されますが、実態としては承認済みの製品による売上がまだない、より初期段階に近い会社です。 ここで学びたいのが「上場維持基準」という論点です。米国の株式市場(ナスダックなど)には、上場を続けるための最低条件が定められており、 これを満たせないと上場廃止のリスクが生じます。

3ここがユニーク/4気をつける点

③ ここがユニーク

植物由来という切り口で、うつ病治療薬(ABV-1504、第2相試験完了)や成人ADHD治療薬(ABV-1505、第2相試験中)など、複数の候補を同時に 進めている点が特徴です。ライセンス先(ForSeeCon Eye社、OncoX BioPharma社など)との契約は、将来的に合計で数億ドル規模の収入に つながる可能性がある内容になっています。BioKeyケイマンという子会社の分離(スピンオフ)を2026年8月に完了させるなど、 事業構造の整理も進めています。

④ 気をつける点

2026年第2四半期の売上高はゼロ、純損失は81万ドル(上半期累計では250万ドル)を計上しました。手元資金は2026年6月末時点でわずか 3.2万ドルにまで減少しており(2025年末は68.1万ドル)、 運転資本短期的に使える資金の余裕度を示す指標(流動資産-流動負債) は528万ドルの赤字となっています。会社自身が財務諸表に「継続企業の前提に重要な疑義がある」と明記している状況です。過去にはナスダックから、 最低株価(1株1ドル以上)や株主資本額の基準を満たしていないとする通知を複数回受けており、その都度対応してきた経緯があります。 ライセンス契約の潜在的な規模は大きいものの、これまでに実際に回収できた金額はごくわずかで、契約上の金額をそのまま将来の収益と見なすことは できません。

5数字で見るこの会社

指標数値これは何を意味するか
時価総額株価×発行済み株式数で計算する、会社の市場での大きさ 約3,150万ドル 2026年9月15日時点
株価 1.00ドル前後 52週レンジ0.71〜3.40ドル。ナスダック上場維持基準の最低ライン(1ドル)付近で推移
2026年Q2売上高 ゼロドル 承認済み製品による売上はまだない
Q2純損失 81万ドル(上半期累計250万ドル) 研究開発と運営にかかる費用が主因
手元資金 約3.2万ドル(2026年6月30日時点) 2025年末(68.1万ドル)から大幅減少。極めて乏しい水準
運転資本 ▲528万ドル 短期的な資金繰りが厳しい状態を示す

数値は2026年8月12日発表の第2四半期決算資料、および2026年9月15日時点の株価情報に基づく(編集部確認)。

6次に何が起きる?

次回決算発表は2026年11月16日に予定されています。手元資金がほぼ枯渇に近い状態にあるため、今後の資金調達(増資など)の有無と、その規模・条件が 最大の注目点となります。ナスダックの上場維持基準に関する新たな通知が出るかどうかも、引き続き確認すべきポイントです。

7この記事のまとめ

ABVC BioPharmaは、植物由来の医薬品候補を複数抱える臨床段階の会社で、ライセンス収入を軸としたビジネスモデルを取っています。契約上の 潜在的な収入規模は大きいものの、実際の資金繰りは非常に厳しく、継続企業の前提に疑義がある状況です。上場維持基準という、米国株特有の論点を 学ぶのに適した銘柄でもあります。当サイトが継続的に追跡する対象の一つであり、特定の投資行動を推奨するものではありません。

用語集

上場維持基準
取引所が定める、株式市場に上場し続けるための最低条件
マイルストーン
契約で決められた、開発の節目ごとに支払われる報酬の条件
ロイヤルティ
他社の製品や技術が売れるたびに受け取る使用料
運転資本
短期的に使える資金の余裕度を示す指標(流動資産-流動負債)
時価総額
株価×発行済み株式数で計算する、会社の市場での大きさ

もっと詳しく知りたい方へ

→ Aytu(AYTU)入門記事を読む(第4回) → Biofrontera(BFRI)入門記事を読む(第5回) → Daré Bioscience(DARE)入門記事を読む(第6回) → 製薬・バイオ17銘柄マップ記事を読む(全体像はこちら)

※この記事は、投資判断を勧めるものではありません。取り上げた銘柄は、当サイトが学習・情報提供の目的で継続的に追跡している対象であり、「おすすめの銘柄」ではありません。

※記事内の数値は、公表されている決算資料や株価情報をもとに編集部が確認・整理したものです。将来の業績や株価を保証するものではありません。「編集部試算」と記載した数値は、公表情報をもとに編集部が独自に計算したものです。

※「継続企業の前提に重要な疑義がある」との注記は、今後の資金調達や事業継続に不確実性があることを意味します。パイプラインの薬はまだ承認されていません。

投資の最終判断は、必ずご自身で行ってください。