日本版DOGE × 地方自治体
変わりゆく制度環境の中で、どんな準備があり得るのか？
PART3では業界別の影響を整理しました。
本記事（PART4）では、地方自治体 に焦点を当て、
「制度変更を踏まえてどのような対応が“選択肢”になり得るのか」
を示唆型でまとめます。
自治体の状況は地域ごとに大きく異なるため、
本記事は
「こうすべき」ではなく「こうした検討余地もあるかもしれない」
という立て付けでお読みください。
1. 地方財政が置かれている構造と、DOGEの関わり
■（1）特定目的交付金への依存
地方交付税には、
- 普通交付税（自由度が高い）
- 特定目的交付金（使途が限定される）
の2種類があります。
日本版DOGEは、特定目的交付金の点検 を含む可能性があるため、
自治体によっては、
- 国の制度に左右されやすい
- 継続事業の予見性が揺らぐ可能性
といった点を、検討材料にすることも考えられます。
■（2）補助金制度の多層構造
国・都道府県・市町村の補助金が重層的に存在するため、
制度が見直される場合は、自治体側の事務負担や制度運用への影響が想定されます。
犬版DOGEの点検動向によっては、
- 類似制度の統合
- 補助率の変化
- 手続きの簡素化・再編
などの可能性が指摘されており、
こうした点も、事業計画の検討ポイントとして意識される場合があります。
■（3）基金（ファンド型）の扱い
基金は単年度会計の原則から外れ、
残高が積み上がり続ける構造が以前から議論されています。
会計検査院の指摘が続いていることから、
自治体としては、基金の活用状況を整理することが、
制度変更に備えた準備として選択肢になり得ます。
2. 地方自治体が検討し得る 5 つの方向性
制度の見直しは「守り」だけでなく、
自治体の主体性を高める機会にもなる可能性があります。
以下は、国の制度変更を想定した際、
自治体が“選択肢として検討し得る方向性”です。
■（1）事業の「成果指標（KPI）」を整理する
点検の対象になり得る事業について、
成果の見える化を進めておくと、制度改正時の説明に役立つケースがあります。
例：
- 来訪者数や利用者満足度
- コスト削減の波及
- 税収や地域経済への寄与
「成果の見える化」を事前に進めておくことは、
事業の継続性を考える上で、検討価値のある取り組みといえます。
■（2）補助金の依存度を把握し、事業計画に反映する
補助金制度が再編される場合に備えて、
自治体がどの事業でどの制度に依存しているかを把握しておくと、
制度変更時の影響度を評価しやすくなります。
必要に応じて、
- 代替財源の検討
- 民間協働の可能性
- 都道府県との役割分担の再確認
などを、事前に整理しておくことも選択肢として考えられます。
■（3）官民連携や地域主導の取り組みを拡張する余地
国の制度設計に左右されにくい事業運営として、
- PPP/PFI
- 官民連携
- 民間データを活用した施策
といったアプローチは、
自治体の主体性を高める可能性があります。
地域事情に応じて、こうした仕組みを検討する自治体も増えています。
■（4）データ活用体制の整備
事業効果の可視化にはデータが不可欠であり、
制度変更の際、自治体内で比較的ニーズが高まる分野です。
- 観光データ
- 移動データ
- 医療・福祉データ
- 商業統計
- 防災データ
などを整理し、
必要に応じて地域版DMPを整えることは、
政策判断の精度向上を目指すうえで有効な選択肢の一つです。
■（5）財政の「選択と検討」を進める
人口減少やインフラ更新など、自治体が直面する課題は多岐にわたります。
制度変更に備えて、
- どの事業を優先するか
- 維持・縮小を検討する事業は何か
- 地域の強みとして伸ばしたい分野
を、内部で議論しておくことは、
財政運営の安定につながる可能性があります。
3. 各自治体の取り組みが評価されやすくなる“傾向”
日本版DOGEの議論が進む中で、
自治体が外部から評価されやすい“傾向”として語られている内容をまとめます。
あくまで「こうした傾向が見られる」という紹介です。
■（1）データや成果に基づく政策形成
いわゆる EBPM（エビデンスに基づく政策立案）は、
外部からの説明に役立つとされ、評価されやすい面があると指摘されます。
■（2）民間企業と連携した地域活性化の取り組み
観光や産業分野では、
民間事業者との協働によって成功している自治体の例も見られます。
■（3）人口減少に向けた明確な戦略
移住促進・子育て支援・産業誘致など、
人口戦略が明確な自治体は、外部から評価されるケースが報告されています。
4. 制度変更時に特に検討が必要とされる可能性がある分野
自治体の行政運営において、
以下の領域は国の制度変更の影響を受けやすいとされています。
- 地域公共交通（バス・鉄道）
- 公共施設の維持管理
- 地域医療・介護
- 観光地域づくり支援（DMO）
- 防災・減災基金
- 商店街・地域商業支援
これらの分野について、
制度変更があった場合の業務影響を事前に整理しておくと、
検討が円滑に進みやすいという声もあります。
まとめ：制度変更は“自治体の主体性を広げる機会”にもなりうる
日本版DOGEの議論は、
単なる「削減」ではなく、
自治体が主体的に施策を考える余地を広げる可能性も指摘されています。
本記事で紹介した項目は、
制度変更に備えて「どんな準備があり得るか」を整理したものです。
自治体ごとに事情は大きく異なるため、
地域の状況に合わせて、適宜検討の参考にしていただければ幸いです。
出典
- 総務省「地方財政白書」
- 財務省「政策コスト分析」
- 会計検査院「基金関連指摘事項」
- 日経新聞／毎日新聞／FNN／Bloom道／nippon.com 報道
