はじめに|海外進出の成否は「誰に相談するか」で決まる
海外進出というと、
どの国に出るか、税率はいくらか、補助金はあるのか──
そうした情報に目が行きがちです。
しかし、直近の中堅・中小企業の海外進出を見ていると、
失敗の原因は、制度や国選びよりも「支援者選び」にあるケースが非常に多い
という現実が見えてきます。
海外進出は、
「専門家がいれば成功する」話ではありません。
誰に、どこまで、何を任せるのか。
この整理ができているかどうかで、結果は大きく変わります。
1|中堅・中小企業の海外進出には、どんな支援者がいるのか?
まずは全体像を整理します。
海外進出に関わる支援者は、決して少なくありません。
主な支援者の分類
- 公的機関
- 情報提供、相談、現地支援
- 金融機関
- 資金調達、海外ネットワーク
- 税理士・会計事務所
- 税務、会計、組織設計
- 現地専門家・コンサルタント
- 法務、労務、商習慣対応
- 商社・業界団体
- 商流、パートナー紹介
- IT・BPO・進出支援会社
- 業務設計、実務代行
問題は、
**「支援者がいないこと」ではなく、
「多すぎて選べないこと」**です。
2|支援者ごとの「できること」と「できないこと」
海外進出でよくある誤解は、
「誰かに頼めば、全部やってくれる」という発想です。
しかし実際には、
それぞれの支援者には明確な役割の限界があります。
公的機関
- できること:情報提供、初期相談、現地紹介
- できないこと:経営判断の代行、個別戦略の決定
金融機関
- できること:資金面の支援、ネットワーク提供
- できないこと:事業そのものの是非判断
税理士・会計事務所
- できること:税務・会計・制度整理
- できないこと:進出そのものの最終判断
現地専門家
- できること:現地実務・法制度対応
- できないこと:日本本社を含めた全体最適設計
👉
誰も「経営者の代わり」に判断はしてくれない。
3|海外進出で本当に必要な支援とは何か?
経営者が海外進出で本当に悩むのは、
税率の細かい計算や制度の条文ではありません。
多くの場合、悩みの本質は次の点にあります。
- なぜ海外に出るのか
- どこまでやるのか
- いつ判断を見直すのか
- 誰が最終的に決めるのか
つまり必要なのは、
**「答え」ではなく、「判断を整理する支援」**です。
4|支援者選びでよくある失敗パターン
ここで、実際によく見られる失敗を整理します。
失敗①|専門性だけで選ぶ
「この人は詳しそうだから」と任せるが、
全体を誰も見ていない。
失敗②|丸投げする
「海外は分からないから任せる」
結果、責任の所在が曖昧になる。
失敗③|相談相手が分断される
税理士、銀行、現地専門家が
それぞれ別の前提で話を進めてしまう。
👉
失敗の多くは、海外そのものではなく、
進め方の設計ミスです。
5|支援者を選ぶときに経営者が見るべきポイント
では、どんな支援者を選ぶべきなのでしょうか。
重要なのは、
「知識が多いか」よりも、次の点です。
- 自社の目的を理解しようとするか
- 「やらない選択肢」も話題に出すか
- 撤退条件の話を避けないか
- 他の支援者との連携を前提にしているか
👉
答えを出す人ではなく、
判断を整理してくれる人かどうか。
6|海外進出は「支援者の役割分担」でうまくいく
海外進出では、
1人の万能な専門家を探す必要はありません。
- 情報を集める支援者
- 実務を担う支援者
- 判断を整理する支援者
この役割を分けて考える方が、
結果的にリスクは小さくなります。
まとめ|海外進出で最も重要なのは「支援者の使い方」
海外進出は、
特別な会社だけの挑戦ではなくなりました。
一方で、
誰に相談し、どう進めるかという点で、
企業間の差は確実に広がっています。
- 支援者はすでに十分に存在する
- 問題は、選び方と使い方
- 海外進出は
専門家任せではなく、経営判断そのもの
これが、直近の海外進出の現実です。
出典
- JETRO「日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査」
- JETRO「海外進出日系企業実態調査」
- 中小企業庁「中小企業白書」