はじめに|広告は「景気」だけで決まらない産業になった
広告市場は景気の影響を受けます。
ただし近年は、景気の良し悪し以上に 「広告予算の配分先がどこへ移るか」 が競争環境を決めています。
この外部環境編では、まず 市場規模(広告費) と 伸びの中心、そして 新しい成長領域と制約条件 を押さえます。
1|市場規模:日本の広告費は約7.7兆円、成長を牽引するのはネット
1-1. 総広告費:7兆6,730億円(2024年)
2024年の総広告費は 7兆6,730億円。
過去最高を更新し、近年は成長が続いています。
1-2. インターネット広告費:3兆6,517億円(2024年)
2024年のインターネット広告費は 3兆6,517億円。
総広告費に占める構成比は 47.6% とされ、広告の重心はネット側に寄っています。
「広告市場が伸びている」というより、「伸びを作っているのはネット」であり、さらにネットの中でも伸びる領域が偏っている、という理解が重要です。
2|伸びの中心:動画とソーシャルが“伸びを作る”
インターネット広告の中でも、伸びを牽引しているのは 動画 と ソーシャル です。
- 動画広告:8,439億円(前年比123.0%)
- ソーシャル広告:1兆1,008億円(前年比113.1%)(推計開始以降はじめて1兆円を突破)
また、広告種別の構成比(媒体費ベース)では、
- 検索連動型:約4割(40.3%)
- 動画:28.5%
- ディスプレイ:25.8% という整理が示されています。
まとめると、「検索で底堅く、伸びは動画・ソーシャルで作る」が直近の市場構造です。
3|“新しい伸び場”:リテールメディアが広告の定義を変える
近年、広告業界で最も重要な構造変化の一つが リテールメディア です。
リテールメディアとは、ECや小売(店舗)が持つ
- 会員基盤
- 購買データ
- 商品棚(検索・レコメンド・店頭サイネージ等) を広告商品化し、広告主に提供する領域です。
市場規模の目安として、2024年の国内リテールメディア広告市場は
- 4,692億円(前年比125%)
- 内訳:EC事業者 4,142億円、店舗事業者 550億円 という見通しが示されています。
ここで重要なのは、広告が「認知のため」だけでなく、「購買データに直結する投資」へ寄っていくことです。
代理店・広告会社の競争軸も、媒体運用だけでなく “購買に近い場所の設計” へ移っていきます。
4|計測環境:プライバシー強化で“見える化”が難しくなる
広告は「出したら終わり」ではなく、計測→改善 を回す産業です。
一方で、プライバシー強化(ブラウザやOSの方針、規制・世論)は、計測の前提を揺らしています。
その結果、広告実務は次の方向へシフトします。
- 追跡依存の最適化 → 「媒体内最適化(閉じた環境)」が増える
- 完全な因果推定 → 「推計(統計・モデリング)」の比重が増える
- 外部データ依存 → 「自社/小売の1st partyデータ」活用が重要になる
計測の制約が増えるほど、単なる運用スキルより「データ設計・意思決定設計」が価値になります。
5|リアル施策:人流回復で“底堅いが伸びは限定”の位置づけに
人流回復やイベント需要を背景に、プロモーション領域も底堅く推移しています。
2024年の「プロモーションメディア広告費」は 1兆6,850億円(前年比101.0%) という整理が示されています。
リアル施策は戻るが、広告の“伸びの主役”がネットに移った構造は変わりません。
よって、リアルの復調を追い風にできる会社もある一方で、業界全体の重心はネット側です。
6|外部環境まとめ:広告業界は「配分先の大移動」の途中
- 総広告費は大きい(約7.7兆円)
- 伸びを作るのはネット(約3.65兆円、比率47.6%)
- ネットの中でも動画・ソーシャルが伸びを牽引
- リテールメディアが伸び、“購買に近い広告”が増える
- 計測制約が増え、データ設計・意思決定設計の価値が上がる
次の②内部構造・収益編では、
この環境の中で広告会社・代理店が どこで利益を出しているのか を、構造として分解します。
出典
- 電通「2024年 日本の広告費」
- 電通「2024年 日本の広告費 インターネット広告媒体費 詳細分析」
- CARTA HOLDINGS「リテールメディア広告市場調査」