第0章|この外部環境編の立ち位置
本レポートは、SaaS・クラウド業界について、
「どのような外部環境の箱の中で成立している産業なのか」を整理することを目的としています。
本レポートで扱うこと
- 市場・制度・マクロ条件の整理
- 個社努力では動かせない外部前提の明確化
本レポートで扱わないこと
- 成長性や将来性の評価
- 儲かる・厳しいといった判断
- 経営戦略・キャリア論
対象とする業界定義
本レポートで扱うSaaS・クラウド業界とは、
インターネット経由でソフトウェアやIT基盤を提供する事業を指します。
含む範囲
- 業務用SaaS(ERP、CRM、HR、会計 等)
- クラウド基盤(IaaS、PaaS)
含まない範囲
- SI・受託開発
- 通信キャリア
- コンテンツ配信事業
第1章|市場規模と成長の実態(定量)
市場規模
国内のSaaS・クラウド市場は、数兆円規模とされています。
IT関連市場の中では拡大が続いています。
成長の内訳
成長の中心は、
- オンプレミスからクラウドへの置き換え
- 新規需要の創出というより、既存IT予算の再配分
にあります。
第2章|制度・政策との関係性(P)
SaaS・クラウド業界は、
通信・金融などと比較すると 制度関与度は相対的に低位です。
一方で、
- 個人情報保護法
- セキュリティ・ガイドライン
といった 横断的ルールの影響は強く受けています。
価格や参入を直接規定する制度は限定的ですが、
「守るべき前提条件」は年々増加しています。
第3章|経済的前提条件(E)
価格決定の自由度
SaaS・クラウドは、
比較的自由に価格を設定できる事業モデルです。
ただし実際には、
- 競合比較の容易さ
- 乗り換え検討コストの低下
により、価格下落圧力が常に存在しています。
コスト構造
- 初期開発費
- 継続的なインフラ費用
- 人件費(特にエンジニア・CS)
スケール前は固定費負担が重くなりやすい構造です。
第4章|社会・利用環境の変化(S)
SaaS・ファティーグ(SaaS疲れ)の顕在化
近年、企業現場では
導入SaaSの増えすぎによる管理負荷が問題視されています。
- 管理画面の乱立
- ツール間で分断されたデータ
- ID・権限管理の煩雑化
これらは、
- 利便性向上のために導入したはずのSaaSが
- 逆に業務負荷を増やす
という状況を生み出しています。
この傾向は、
顧客側の解約(チャーン)を押し上げる外部圧力として作用し始めています。
第5章|技術・DXの位置づけ(T)
SaaS・クラウド業界では、
技術は競争優位の源泉になり得ます。
一方で、
- 技術の陳腐化スピードが速い
- セキュリティ要求が高度化している
ため、
技術投資は優位性とリスクを同時に内包しています。
第6章|参入・撤退の制約(L)
参入制約
- 初期資本は比較的少額
- 技術力・人材が主な障壁
撤退制約と市場の変化
SaaSは一度導入されると、
- 業務データ
- 業務フロー
が深く結びつきます。
そのため近年は、
プラットフォーム・ロックインへの警戒感が高まっています。
顧客は導入時点で、
- データ移行の可否
- 乗り換えコスト
- サービス終了時の出口設計
を厳しく評価するようになっています。
これは、
SaaS事業者側にとって 新たな参入・拡大の制約条件となっています。
第7章|外部環境の整理
- 市場は拡大しています
- 制度関与は相対的に低位です
- 価格決定の自由度はありますが、競争圧力は強いです
- SaaS疲れが顧客側で顕在化しています
- ロックインへの警戒が導入判断を厳しくしています
これらは、
個社努力では動かしにくい外部前提条件です。
第8章|次に読むべき資料
これらの外部環境は、
SaaS・クラウド業界の内部において、
- 解約率(チャーン)
- カスタマーサクセスの負荷
- プロダクト設計と営業の摩擦
といった 構造的歪みを生み出しています。
それらが、
現場や収益モデルにどのように影響しているのかは、
次の SaaS・クラウド業界分析②|内部環境編 で整理します。
関連記事
出典
- 経済産業省「DXレポート」
- 総務省「情報通信白書」
- IPA「情報セキュリティ白書」
- Gartner 各種レポート(SaaS利用動向・チャーン要因)