一般教養知識・情報2026-02-07

ビジネスを学ぼう!業界分析|ERP(基幹業務システム)業界 内部環境編

ERP(基幹業務システム)業界について、業界内部の構造、収益の流れ、現場の実態といった内部環境を整理する。外部環境編で示した前提条件が、どのような歪みとして現れているのかを確認する。

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第0章|この内部環境編の立ち位置

本レポートは、「業界分析|ERP業界 外部環境編」の続編として位置づけられています。

外部環境編では、制度、マクロ経済、社会構造、技術といった
業界の外側から与えられた前提条件を整理しました。

本資料では、それらの前提条件が、
業界内部の構造や収益の流れ、現場の実態としてどのように現れているのか
を確認していきます。

本資料においても、企業戦略やキャリア選択に関する評価・提言は行いません。
あくまで、構造の説明にとどめます。


第1章|業界内プレイヤー構成

ERP業界は、複数のプレイヤーによる分業構造によって成立しています。

中心に位置するのは、ERPベンダーとシステムインテグレーター(SI)です。
ERPベンダーは、製品の開発と知的財産(IP)を保有し、
製品仕様や価格体系、提供範囲の主導権を握っています。

一方、SIは顧客企業ごとの業務要件に応じて、
ERPの設計、構築、カスタマイズ、運用支援を担います。
ここでは、労働力の提供が価値の源泉となります。

この構造は、
「知財(IP)を持つ側」と「労働力を提供する側」という
役割分担として整理することができます。

また、ERPベンダーは製品の標準化を進めることで、
開発効率の向上やサポート負荷の低減を目指します。
一方で、SI側は顧客ごとの個別要件に応じた
カスタマイズやアドオン開発によって売上を立てています。

このため、標準化を進めたいベンダーと、個別対応で収益を得るSIとの間には、
構造的な利害の相反が存在しています。

この分業と力関係は、長年にわたって固定化しており、
短期的に大きく変化するものではありません。


第2章|収益構造の全体像(How)

ERP業界の収益構造は、
第1章で述べたプレイヤー構成と密接に結びついています。

ERPベンダーは、
ライセンス料やサブスクリプション利用料といった形で、
製品を軸にした継続的な収益を得ます。

一方、SIや導入支援事業者の売上は、
プロジェクト単位で発生する人月ベースの収益が中心です。
個別の業務要件に対応するほど、
売上は増える一方で、必要な人員や工数も同時に増加します。

この結果、
売上の拡大とコストの増加がほぼ同時に発生しやすく、
規模拡大が必ずしも利益拡大に直結しない構造が生まれています。

保守・運用フェーズでは比較的安定した収益が見込まれますが、
ここでも人手を介在させる限り、
収益性には一定の制約が残ります。

※本章では、
どのプレイヤーが有利かといった評価は行いません。


第3章|人件費構造と労働集約性

ERP業界の内部環境を理解するうえで、
人件費構造は極めて重要な要素です。

ERP導入・運用の現場では、
業務知識とIT知識を併せ持つ人材が不可欠であり、
教育や育成には時間がかかります。

売上は基本的に、
人数 × 人月単価 × 稼働時間
という形で決まります。

このため、
稼働時間には物理的な上限が存在し、
売上の伸びには明確な限界が生じます。

人員を増やせば対応力は上がりますが、
同時に人件費も増加します。
結果として、業界全体として
労働集約的な構造から抜け出しにくい状況が続いています。

この「時間の壁」は、
後述する第5章の「忙しさの増幅」と強く結びついています。


第4章|現場と本部の非対称性

ERP業界では、
現場と本部の間に非対称な関係が生じやすい構造があります。

製品方針、価格体系、サポート範囲といった
根本的な意思決定は、
ベンダーや本部側が握っています。

一方、現場では個別案件ごとの要件定義や調整、
トラブル対応が日常的に発生します。

さらに、
ERP導入プロジェクトでは多層構造が形成されやすく、
エンドユーザーと開発現場の間に
一次請け、二次請け、三次請けが介在するケースも少なくありません。

この構造により、
要件定義時の意図や背景が、
開発現場に届くまでに変質・減衰しやすくなります。

結果として、
認識のズレが現場で顕在化し、
追加調整や手戻りが発生する要因となります。


第5章|なぜ「忙しさ」が増幅しやすいのか

ERP業界では、
外部環境の変化が、
内部の忙しさとして現れやすい傾向があります。

制度改正や法対応には期限が設定されることが多く、
顧客業務の停止を避けるため、
納期の柔軟性は限定されがちです。

一方で、
第3章で述べたように、
人月単価と稼働時間には物理的な上限があります。

そのため、
業務量が増加した場合でも、
短期間で対応力を引き上げることは難しく、
既存人材への負荷集中という形で調整が行われます。

こうした状況が重なることで、
忙しさが構造的に増幅しやすい環境が形成されます。


第6章|業界内部で誤解されやすいポイント

ERP業界では、
市場規模や成長率、クラウド化といった言葉が、
実態以上に単純化されて語られることがあります。

しかし、
市場が存在することと、
現場の負荷や収益構造が改善することは、
必ずしも同義ではありません。

本章では、
こうした指標と実態の間に
乖離が生じやすい可能性があることを確認するにとどめます。


第7章|内部環境の整理(判断はしない)

ERP業界の内部環境を整理すると、
外部環境で示された制度・人材・技術の制約が、
分業構造、人件費依存、多層構造、忙しさの集中といった形で
内部に現れていることが確認できます。

これらは、
個人や単一企業の努力によって
短期的に解消できる性質のものではありません。


第8章|次に読むべき資料

本資料では、
ERP業界の内部構造と現場の実態を、
評価を加えずに整理しました。

この構造の中で、
どのような立ち位置が生まれやすいのか、
どの部分に意思決定の余地が残されているのかについては、
次の有料版で扱います。

無料版は、
あくまで構造理解までとします。


第9章|関連記事

業界分析|ERP(基幹業務システム)業界 外部環境編(無料)

出典

  • 各種IT市場・ERP市場調査レポート
  • IT業界白書
  • 経済産業省 公開資料

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