業界分析|内部環境分析(構造・収益・現場)
目的:
外部環境の前提が、業界内部でどう“歪み”として現れるかを理解することです。
第0章|この内部環境編の立ち位置
明確にすること
- 本稿は外部環境編の続編です
- 経営戦略・キャリア判断は行いません
👉 あくまで「構造説明」で止めます
第1章|業界内プレイヤー構成
事業者数と規模構成
- 制作会社数:約800〜900社
- 多くが従業員数50名未満の中小規模スタジオです
- 上場制作会社は一部に限られます
市場集中度
- エンドユーザー市場(約4.3兆円見込み)に対し、制作会社売上(約4,000億円台)は一部です
- 権利保有主体(製作委員会側)に売上が集中する構造です
制作工程は分業型で、
制作会社=受託的ポジションになりやすい構造です。
第2章|収益構造の全体像(How)
業界平均売上規模
- 中小制作会社の年間売上は数億円規模が中心です
- 上場制作会社は数百億円規模です
業界平均営業利益率
- 制作会社の営業利益率は数%台に留まる企業が多い構造です
- 権利を持つ主体(配信・商品化・音楽等)の方が利益率は高い傾向です
利益が残る工程
- 配信権
- 商品化権
- 海外ライセンス
制作工程そのものは利益が薄くなりやすい構造です。
2次利用分配の新しい兆し
従来は「一括受託(グロス請け)」が中心であり、
ヒット時の追加収益が制作会社に残りにくい構造でした。
2024年〜2025年にかけて、経産省主導で
製作委員会方式における制作会社への成功報酬型分配を促す指針が強化されています。
2026年現在、一部の大手制作会社では
- 成功報酬型契約
- 自社出資による権利保有
への移行が進み始めています。
ただし、業界全体で標準化された構造とは言えません。
第3章|人件費構造と労働集約性
人件費率
制作現場は人件費依存度が高い産業です。
外注・フリーランス報酬を含めると、人件費関連コストが大半を占めます。
売上/人
小規模スタジオでは
売上/人は高水準になりにくい構造です。
デジタル化と工数の実態
アナログからデジタル作画への移行は進んでいます。
しかし、
デジタル化=時短とはなっていません。
描線密度の上昇や撮影工程の高度化により、
1カットあたりの工数(人日)が増加しているケースもあります。
技術導入が、
労働集約性の軽減ではなく、
工程の高度化を通じた負荷増加につながっている側面があります。
第4章|現場と本部の非対称性
意思決定権限の所在
- 企画決定:製作委員会
- 予算配分:出資者側
- 制作進行管理:制作会社
制作会社は工程管理主体ですが、
予算決定権は限定的です。
本部比率/現場比率
制作会社内では、
作画・演出などの現場比率が高く、管理部門は少人数です。
管理業務比率とフリーランス新法の影響
2024年11月施行のフリーランス新法により、
- 書面(デジタル含む)による条件明示義務
- 支払いサイトの厳守
が求められるようになりました。
従来存在していた口頭発注は許容されなくなっています。
その結果、
- 契約管理業務の増加
- 支払い管理の厳格化
- 管理部門の実務負担増
が発生しています。
小規模スタジオでは、
この管理負荷増加が資金繰りに影響するケースもあります。
第5章|なぜ「忙しさ」が増幅しやすいのか
需要変動率
ヒット作品の有無による需要変動が大きい産業です。
稼働率
- 通常時でも高稼働
- 放送直前はピーク稼働
工数増加の構造
デジタル作画・3DCGの高度化により、
1カットあたりの制作要求水準が上昇しています。
視聴環境の高解像度化も影響しています。
結果として、
制作単価が大きく上がらない中で、工数だけが増える構造が生まれています。
離職率
若年層の離職が一定水準で継続しています。
第6章|業界内部で誤解されやすいポイント
誤解① 市場規模拡大=制作会社も高収益
エンドユーザー市場が約4兆円規模であっても、
制作会社売上は約4,000億円規模です。
市場総額と制作会社売上は一致しません。
誤解② 海外比率拡大=現場報酬増加
海外売上比率が約60%であっても、
権利配分構造により制作会社へ直接反映されるとは限りません。
第7章|内部環境の整理
構造的歪みの数値要約
- 市場規模:約4.3兆円(広義)
- 制作会社売上:約4,000億円台
- 制作会社数:約800〜900社
- 営業利益率:数%台中心
個人・企業努力で動かせない要素
- 製作委員会方式
- 権利配分構造
- 放送・配信枠の拘束
- 海外プラットフォーム依存
第8章|有料版への橋渡し
就活・転職向け有料版では
この構造の中で
**「詰みやすい人/逃げ道がある人」**を整理します。
経営企画・事業開発向け有料版では
- KPI構造
- ユニットエコノミクス
- 権利保有戦略の分解
👉 無料版は「構造理解」までです。
関連記事
出典
- 日本動画協会「アニメ産業レポート」
- 経済産業省 コンテンツ産業関連資料
- フリーランス・事業者間取引適正化等法関連資料