業界分析|内部環境分析(企業・収益・構造)
目的:
量子コンピュータ産業の企業構造・収益構造・技術構造など、産業内部の仕組みを整理することです。
第0章|内部環境編の位置づけ
外部環境編では
- 市場
- 政策
- 技術トレンド
- 人材
など、産業の外側の条件を整理しました。
本記事では
産業内部の構造
を整理します。
主に扱うテーマは以下です。
- 企業構造
- 収益モデル
- 技術開発体制
- 労働構造
- 装置産業との関係
第1章|企業構造
量子コンピュータ産業は、単一企業だけで成立する産業ではありません。
大きく以下の4つの主体で構成されています。
また現在、量子コンピュータ企業は
「フルスタック型」と「コンポーネント型」
の2つの戦略に分かれ始めています。
フルスタック型企業
ハードウェアからソフトウェア、クラウドまでを
自社で開発するモデルです。
主な企業
- IBM
- PsiQuantum
特徴
- 技術統合力が高い
- 大規模研究投資が必要
コンポーネント型企業
量子コンピュータの特定レイヤーに特化する企業です。
主な企業
- IonQ
- Rigetti
- Quantinuum
特化領域の例
- 量子ビット制御
- ミドルウェア
- 量子アルゴリズム
量子産業は現在
半導体産業のような分業構造へ移行する可能性
が指摘されています。
研究機関
量子研究の基礎部分を担います。
代表例
- MIT
- Caltech
- 東京大学
- 理化学研究所
多くのスタートアップは大学研究からスピンアウトしています。
装置メーカー
量子コンピュータの運用には特殊装置が必要です。
例
- 希釈冷凍機メーカー
- レーザー装置メーカー
- 計測装置メーカー
この分野は
計測機器産業
と重なっています。
第2章|収益構造
量子コンピュータ産業は
典型的な研究開発型産業
です。
主な収益源
現在の収益源は以下です。
- 政府研究資金
- 共同研究契約
- 量子クラウド利用料
QaaSモデル
量子コンピュータの主な提供形態は
Quantum as a Service(QaaS)
です。
ユーザーは
- クラウド経由
- API
を通じて量子計算を利用します。
プロフェッショナルサービス
現在の量子コンピュータ産業では、
純粋な計算リソース販売よりも
導入支援・コンサルティング
などの
プロフェッショナルサービス
が売上の重要な柱となっています。
多くの企業では
企業と共同でユースケースを探索する
共同研究契約
が実質的な営業キャッシュフローとなっています。
売上構造の特徴
量子企業の売上は
研究契約が中心
です。
例
- 政府研究契約
- 大企業共同研究
純粋な製品販売はまだ限定的です。
第3章|研究開発構造
量子コンピュータ企業の最大の特徴は
研究開発比率の高さ
です。
R&D比率
多くの企業で
売上の50%以上
が研究開発費となっています。
技術開発の分野
研究テーマは大きく3つあります。
量子ビット技術
量子ビットの物理実装
例
- 超電導量子ビット
- イオントラップ
エラー訂正
量子ビットは非常にノイズに弱いです。
そのため
量子エラー訂正
が最大の研究テーマとなっています。
制御ソフトウェア
量子計算を制御するソフトウェア
例
- 量子コンパイラ
- 量子回路設計
第4章|労働構造
量子コンピュータ産業は
高度研究者中心の産業
です。
人材構成
主要人材
- 量子物理学者
- 量子情報研究者
- 制御エンジニア
- ソフトウェアエンジニア
人材不足
量子研究者は世界でも
数万人規模
しかいません。
このため
人材獲得競争
が激しくなっています。
第5章|装置産業との関係
量子コンピュータは
装置産業依存
が非常に強い技術です。
必要装置
例
- 希釈冷凍機
- 高精度レーザー
- マイクロ波制御装置
代表企業
装置メーカー
- Bluefors
- Oxford Instruments
- Keysight
- 浜松ホトニクス
サプライチェーン依存
量子コンピュータの研究開発は
特定の装置メーカーへの依存度が高い
という特徴があります。
希釈冷凍機や特殊材料などは
世界でも供給企業が限られており、
装置供給のリードタイムが研究開発スケジュールを左右する
ケースもあります。
このため量子産業では
装置サプライチェーンが重要なボトルネック
とされています。
第6章|技術ロードマップ
量子コンピュータ産業では
次の技術段階が想定されています。
現在
NISQ
ノイズがある中規模量子コンピュータ
次の段階
FTQC
エラー訂正量子コンピュータ
実用化の条件
FTQC実現には
数百万量子ビット
が必要とされています。
第7章|資金調達構造
量子コンピュータ企業は
資本依存型産業
でもあります。
資金源
主な資金
- 政府研究資金
- ベンチャーキャピタル
- 大企業投資
代表的投資
例
- Amazon
- Intel
- 国家研究投資
スタートアップの特徴
量子スタートアップは
長期研究型企業
です。
収益化まで
10年以上
かかる可能性があります。
第8章|内部構造の整理
量子コンピュータ産業の内部構造
企業
- IT企業
- スタートアップ
- 研究機関
収益
- 研究契約
- QaaS
- プロフェッショナルサービス
技術
- 量子ビット
- エラー訂正
労働
- 高度研究者中心
装置
- 冷凍機
- 光学装置
第9章|次の記事
次の記事では
量子産業のもう一つの重要分野である
量子装置産業
について分析します。
出典
内閣府 量子技術イノベーション戦略
経済産業省 量子未来産業創出戦略
National Quantum Initiative Act
McKinsey Quantum Technology Report
BCG Quantum Computing Market Report
Nature Quantum Technology Review