はじめに|静岡は「やさしい」蒸溜所ではありません
静岡蒸溜所は、しばしば
「軽やか」「きれい」「飲みやすい」
と表現されます。
しかし、それは結果であって目的ではありません。
静岡が目指しているのは、
偶然のやさしさではなく、設計された繊細さ です。
蒸溜所の基本情報
- 所在地:静岡県静岡市
- 創業:2016年
- 生産規模:クラフト(少量生産)
富士山を望む内陸の山間部に位置し、
冷涼で湿度のある環境が、ゆっくりとした熟成を促します。
静岡蒸溜所の設計思想|「日本的な繊細さ」を再定義する
静岡蒸溜所の思想は明確です。
- クセを削るのではありません
- 香味を薄くするのでもありません
- 成分の取捨選択を、技術で行います
静岡は、
「何を残し、何を落とすか」
を最初から設計しています。
2基の蒸溜器|静岡の個性はここから始まります
静岡蒸溜所最大の特徴は、
性格の異なる2基の蒸溜器を併用している点です。
K蒸溜器(蒸気加熱)
K蒸溜器は、
2011年に閉鎖された伝説の 軽井沢蒸溜所 から移設されたものです。
「K」は
Karuizawa(軽井沢) の頭文字であり、
日本ウイスキーの歴史を静かに継承する存在でもあります。
- クリーンで再現性の高い酒質
- 青リンゴや洋ナシを思わせる果実香
- 静岡の透明感の核
W蒸溜器(薪直火蒸溜)
W蒸溜器は、
Wood(薪) の頭文字を意味します。
世界的にも稀な薪直火蒸溜で、
しかも燃料には 地元の間伐材 が使われています。
- 炎の揺らぎによる微細な香味変化
- ふくらみのあるボディ
- 針葉樹の森を思わせる清涼感
テロワール(地域性)へのこだわりが、
酒質にも自然に反映されています。
味わいの方向性(5タイプ分類)
- 主軸タイプ:🍏 フルーティ
- 副要素:🪵 クリーミー、穏やかな甘み
- 酒質:軽やかですが、輪郭は明確です
静岡のフルーティさは、
単なる果実味ではありません。
和菓子のような上品な甘み、
森を思わせる清涼感 が共存するのが特徴です。
代表的な銘柄
シングルモルト静岡 プロローグK
K蒸溜器の個性が前面に出た1本です。
- 透明感のある果実香
- クリーンで整った酒質
静岡の「基準点」となるボトルです。
シングルモルト静岡 プロローグW
薪直火蒸溜由来の厚みが感じられるタイプです。
- 穏やかなスモーク
- ふくらみのある味わい
Kとの違いを意識すると、
静岡の設計思想が見えてきます。
シングルモルト静岡 ユナイテッドS
KとW、
2基の原酒を融合させた表現です。
「S」には
Shizuoka(静岡)
Smooth(なめらかさ)
Selection(選び抜かれた原酒)
といった意味が込められています。
静岡蒸溜所の思想を
最も立体的に体感できる1本です。
💎 編集部おすすめの一本
シングルモルト静岡 ユナイテッドS
理由は明確です。
- 静岡の設計思想が1本に集約されています
- フルーティでありながら奥行きがあります
- 日本ウイスキーの「繊細さ」を理解しやすいです
静岡を知るなら、
この1本からが最も自然です。
静岡蒸溜所の位置づけ
三郎丸が
「個性を恐れてはいけない」と示した存在だとすれば、
静岡は
「繊細さは、感覚ではなく技術でつくれる」
と証明した蒸溜所です。
まとめ|静岡蒸溜所とは
日本ウイスキーの繊細さを、構造で語れる存在 です。
軽やかですが、薄くはありません。
やさしいですが、曖昧ではありません。
静岡蒸溜所は、
日本ウイスキーの透明感を
次の段階へ引き上げました。
出典
- 静岡蒸溜所 公式情報
- ウイスキー文化研究所
- Whisky Advocate