はじめに|法人税制は「姿勢」を問うフェーズへ
2026年度(令和8年度)の税制改正は、
法人税率の上下といった単純な話ではありません。
- どの企業が
- どの程度の余力を持ち
- 社会にどう貢献しているか
企業の“姿勢”そのものが、税制を通じて評価・選別される
段階に入ったといえます。
0. この記事で分かること
- 2026年4月から法人に何が起きるのか
- 防衛特別法人税はいくら増えるのか
- 中小企業でも注意すべき税制変更
- 社会保険料による実質コスト増
- 賃上げ・投資を巡る実務判断のポイント
1. 法人に影響する「3つの軸」
2026年度税制改正は、次の3つの軸で理解すると全体像が掴めます。
- 税金(法人税)
└ 防衛特別法人税・中小企業優遇の見直し - 人件費(社会保険料)
└ 子ども・子育て支援金による固定費増 - 優遇・不利の分岐点
└ 賃上げ・投資をしているかどうか
これらは個別ではなく、同時に効いてくる点が重要です。
2. 防衛特別法人税|計算イメージと設計思想
2-1. 制度の概要
- 開始時期:2026年4月以降に始まる事業年度
- 課税方式:法人税額への付加税(約4%)
- 計算方法:
- 法人税額 − 500万円
- その残額 × 約4〜4.5%
※ 法人税率(23.2%)そのものが上がるのではなく、
**計算後の税額に上乗せする「二階建て構造」**です。
2-2. なぜ「500万円控除」なのか
この500万円控除には、明確な政策意図があります。
政府試算では、
この控除により、日本の法人の約9割を占める中小企業の多くが課税対象外になる
と見込まれています。
つまり今回の防衛特別法人税は、
「日本の防衛基盤を、余力のある中堅・大企業が支える」
という、極めて意図的な設計です。
2-3. 企業規模別の影響イメージ
- 法人税額400万円 → 対象外
- 法人税額1,000万円 → 約20万円増
- 法人税額5,000万円 → 約180万円増
**「利益が出ている企業ほど比例的に効く」**仕組みです。
3. 中小企業でも安泰ではない|軽減税率の見直し
これまで中小企業には、
年800万円以下の所得部分に**軽減税率(15%)**が適用されてきました。
しかし2026年度以降、
**年所得が極めて大きい中小企業(例:10億円規模)**については、
- 軽減税率の適用除外
- 税率の引き上げ(17%前後へ)
といった見直しが進んでいます。
これは、
「中小企業であっても、規模・利益が大きければ大企業並みの負担を」
というメッセージです。
4. 子ども・子育て支援金|見えにくいが確実な固定費
4-1. 税金ではないが、企業負担は発生する
子ども・子育て支援金は、
社会保険料への上乗せという形で徴収されます。
- 労使折半
- 企業側の負担も必須
- 利益の有無に関係なく発生
4-2. 企業側の負担感(目安)
例:
- 従業員30名
- 平均年収500万円
2026年度:
- 企業負担分で 年数万円〜十数万円
2028年度(満額):
- 恒常的な人件費増として定着
5. 賃上げ要件|「やれば得」から「やらないと不利」へ
5-1. 賃上げは前提条件になりつつある
2026年度以降、賃上げは
「加点要素」ではなく、税制優遇の前提条件に近づいています。
加えて、一定規模以上の企業では、
- マルチステークホルダー方針の公表
- 取引先・下請けへの配慮
といったガバナンス要件も重視されます。
5-2. 赤字でも諦めない|賃上げ税制の繰越控除
賃上げをしても赤字だと、
その年は減税効果を享受できません。
しかし現在は、
- 未利用分の税額控除を最長5年間繰り越し可能
という制度があります。
これは、
「今は赤字でも、賃上げをしておけば
将来黒字化したときに税金を取り戻せる」
という、中長期視点での経営判断を後押しする仕組みです。
6. 投資減税|量ではなく「向き」が問われる
税制が評価する投資は、明確に方向づけられています。
- 評価されやすい:GX・省人化・デジタル化
- 評価されにくい:単なる更新・延命投資
**「どこに向かう企業か」**が、
税制を通じて問われています。
7. 実務対応チェックリスト
- 今期の法人税額はいくらか
- 防衛特別法人税の対象か
- 軽減税率の適用は継続されるか
- 賃上げ計画はあるか(繰越控除含む)
- 社会保険料増を織り込んだ損益計画か
まとめ|この詳細解説の付加価値
本記事の役割は、
**「うちの会社はいくら用意すればいいのか」**を
具体的にイメージできるようにすることです。
- 防衛税:対象かどうか
- 社会保険料:固定費としての増加
- 賃上げ:将来回収できる可能性
2026年度税制改正は、
経営判断そのものを問う改正になっています。