業界分析|外部環境分析(制度・市場・マクロ)
目的:
建設業が「どんなルールの箱の中にあるか」を、数字と事実中心に理解することです。
第0章|この外部環境編の立ち位置
やること
- 変えられない前提条件を示します
- 感情ではなく事実で整理します
やらないこと
- 将来予測は行いません
- 儲かる/厳しいという評価は行いません
- 戦略示唆は行いません
👉 判断は内部環境編に委ねます。
第1章|市場規模と成長の実態(定量)
建設投資総額
国土交通省公表値によると、
直近年度の建設投資総額は約70兆円規模です。
過去10年で大きな成長トレンドは見られず、
復興需要・公共投資・都市再開発などにより増減を繰り返しています。
公共/民間比率
- 公共投資:約30%前後
- 民間投資:約70%前後
建設業は公共投資の影響を受けますが、
市場全体の大半は民間投資です。
土木/建築内訳
公共投資は主に土木分野です。
民間投資は建築・住宅・再開発が中心です。
住宅着工戸数は長期的に減少傾向にあります。
👉 建設業は単一市場ではありません。
第2章|制度・政策との関係性(P)
建設業許可制度
一定規模以上の工事には建設業許可が必要です。
許可業者数は約45万社規模です。
重層下請構造(制度的前提)
建設業法により、
- 一括下請負の禁止
- 特定建設業許可制度
が定められています。
その結果、
元請 → 下請 → 孫請
という階層構造が制度的に固定されやすい状況です。
これは業界内部の分業構造を外部から規定する前提条件です。
公共調達制度と予定価格
公共工事は入札制度です。
発注者は「予定価格」を設定します。
労務費・資材費が上昇した場合、
市場実勢価格と予定価格が乖離すると
入札不調・不落
が発生します。
これは公共工事特有の制度的前提です。
国土強靭化計画
政府は国土強靭化5か年計画を実施しています。
総額は約15兆円規模です。
建設投資全体の一部に位置づけられます。
第3章|経済的前提条件(E)
価格決定権
- 公共工事は発注者主導(予定価格制度)です。
- 民間建築は発注者との相対交渉です。
建設業は完全な自由価格市場ではありません。
主要コスト構造
代表的な構成は以下の通りです。
- 人件費:約30%前後
- 材料費:約30〜40%
- 外注費:一定比率
鉄鋼・セメント価格は近年上昇傾向にあります。
業界平均営業利益率
大手ゼネコンの営業利益率は
概ね3〜6%台です。
高収益産業ではありません。
第4章|社会・人口動態の影響(S)
就業者数と高齢化
建設業就業者は約480万人です。
平均年齢は上昇傾向にあります。
55歳以上比率が高い状況です。
時間外労働の上限規制(2024年問題)
2024年4月より、
建設業にも時間外労働の上限規制が適用されました。
労働時間が法的に制限されることで、
実質的な供給可能量は物理的に制約されます。
有効求人倍率
建設業の有効求人倍率は
全産業平均より高水準です。
労働供給制約が明確です。
第5章|技術・DXの位置づけ(T)
- BIM導入は拡大傾向です。
- ICT施工も普及しています。
分類としては補助型技術です。
第6章|参入・撤退の制約(L)
- 建設業許可が必要です。
- 重層下請構造が商慣習として固定されています。
- 保証金・設備投資が必要です。
- 廃業率は一定数存在します。
参入は完全な自由市場ではありません。
第7章|外部環境の整理
- 市場規模:約70兆円
- 公共比率:約30%
- 重層下請構造が制度的に存在
- 予定価格制度による価格制約
- 営業利益率:低水準
- 技能労働者高齢化
- 時間外労働規制による供給制約
👉 建設業は、制度・価格制約・労働制約が同時に作用する産業構造の中にあります。
第8章|次におすすめの資料
外部環境が内部でどのような歪みを生むのかは、
内部環境編で扱います。
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出典
- 国土交通省「建設投資見通し」
- 国土交通省「建設業許可業者数」
- 国土交通省「国土強靭化計画」
- 総務省「労働力調査」
- 各社決算資料