業界分析|内部環境分析(構造・収益・現場)
目的:
外部環境の前提が、業界内部でどのような“歪み”として現れるのかを理解することです。
第1章|業界内プレイヤー構成
事業者数と規模分布
- 建設業許可業者数:約45万社です。
- 中小企業比率は大多数です。
- 上位5社の市場シェアは限定的です。
建設業は分散型産業です。
垂直分業とリスク移転構造
制度的前提として、
元請
→ 一次下請
→ 二次下請
→ 三次下請
という階層構造が存在します。
この構造では、
上位階層から下位階層へ流れるのは「仕事」だけではありません。
- 工期リスク
- 資材価格変動リスク
- 安全管理責任
も含まれます。
外部環境(資材高騰・工期遅延)の影響は、
階層ごとに吸収・分散される力学を持っています。
第2章|収益構造の全体像(How)
業界平均指標
- 大手ゼネコンの営業利益率は3〜6%台です。
- 業界全体として高利益率産業ではありません。
分業と収益分配
元請は受注・設計・管理に特化しています。
実施工は下請層が担っています。
予定価格制度の下では、
受注総額は発注段階で上限が規定されています。
その範囲内で階層ごとに分配される構造です。
外部環境の変動が発生した場合、
どの階層で吸収されるかは契約構造に依存します。
第3章|人件費構造と労働集約性
人件費率
- 人件費は約30%前後です。
- 外注費は一定比率を占めます。
一品生産という前提
建設業は製造業と異なり、
- 工場ではなく屋外現場で生産します。
- 毎回異なる地盤・天候条件があります。
- 周辺環境の制約があります。
同一仕様の大量生産ではありません。
この「一品生産」構造により、
標準化・自動化の効果は限定的になりやすいです。
時間外労働の上限規制
2024年4月より時間外労働の上限規制が適用されています。
労働時間が法的に固定されたことで、
投入可能な労働量は物理的に制限されています。
第4章|現場と本部の非対称性
意思決定の所在
- 価格決定は発注者です。
- 工期は契約で固定されています。
- 施工責任は現場が担います。
現場は価格決定権を持っていません。
書類対応と管理の重層化
公共工事では、
- 施工写真
- 品質検査書類
- 安全管理記録
など、多数の提出書類が必要です。
元請企業では、
- 施工管理
- 安全管理
- 書類作成
の管理業務比率が高い状況です。
時間外労働規制が適用された現在、
法定書類・安全管理対応の密度は維持されたまま、
実施工に割ける時間が相対的に制約されています。
第5章|なぜ「忙しさ」が増幅しやすいのか
- 需要波動の存在
- 工期固定
- 労働供給制約
- 階層構造による負荷分散
これらが同時に作用しています。
第6章|業界内部で誤解されやすいポイント
- 売上規模=利益安定ではありません。
- 公共依存=安定とは限りません。
- マネジメント=裁量拡大ではありません。
第7章|内部環境の整理
- 分散型産業(約45万社)です。
- 重層下請構造が制度的に存在します。
- リスクが階層間で移転します。
- 営業利益率は低水準です。
- 一品生産構造です。
- 書類管理の重層化があります。
- 労働時間規制による供給制約があります。
👉 外部環境の制約が、内部で階層構造と負荷分散として現れています。
第8章|有料版への橋渡し
無料版は構造理解までです。
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出典
- 国土交通省「建設業許可業者数」
- 国土交通省「建設投資見通し」
- 総務省「労働力調査」
- 各社決算資料