はじめに|なぜ“長期分野”を見るのか
AI・GX・防衛は、比較的短期で予算や受注が動きやすい分野です。
一方で、今回取り上げる
- 核融合
- コンテンツ
は、すぐに株価へ反映されるタイプの政策ではありません。
しかし、国家が「どこに未来を託すか」という思想は、むしろこの2分野に強く表れます。
本章で扱う2分野は、17分野の中でも性格が異なります。
- 核融合:エネルギー安全保障を軸とした**「危機管理投資」**
- コンテンツ:外貨獲得とブランド力強化を軸とした**「成長投資」**
本章では、短期的な業績指標ではなく、
10年単位の時間軸で国家戦略を読み解くことを目的とします。
第7章|核融合──“究極のエネルギー安全保障”という選択
7-1|政策レイヤー
核融合は、従来の原子力や再生可能エネルギーとは性質が異なります。
- CO₂排出をほぼ伴わない
- 燃料供給リスクが小さい
- 理論上は膨大な発電量
日本は国際共同プロジェクト(ITER等)にも参画しており、
研究開発段階から関与しています。
🔗 内閣官房 日本成長戦略本部
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/nipponseichosenryaku/
🔗 検討事項セット(公式PDF)
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/nipponseichosenryaku/honbu/dai1/kentoujikou_set.pdf
そして2026年現在、議論は単なる基礎研究から
「産業化・社会実装」フェーズへ移行しつつあります。
「フュージョンエネルギー・イノベーション戦略」の改定では、
2030年代の発電実証という具体的な出口が明示され、
研究から実装へのロードマップが整理されています。
この“出口の明確化”は、
- 民間企業の参入判断
- 危機管理型投資の呼び込み
- サプライチェーン形成
に直接影響します。
予算の性格は:
- 単年度型ではなく
- 基金・長期研究費型
- 実証フェーズ重視
つまり、短期利益ではなく国家の危機管理投資として位置づけられています。
7-2|企業レイヤー
核融合は、巨大なサプライチェーンを内包します。
主な関与領域:
- 超電導線材
- 極低温設備
- 精密加工
- 真空容器
- 高耐熱素材
- 制御システム
従来は「研究関連銘柄」として扱われがちでしたが、
2030年代の発電実証が具体化したことで、
実証設備受注
標準化競争
国際共同案件
といった産業化フェーズ特有の動きが重要になります。
第8章|コンテンツ──GDPではなく「影響力」を生む産業
8-1|政策レイヤー
コンテンツは単なるエンタメではありません。
- IP(知的財産)
- 海外売上
- 文化的影響力
- ブランド形成
2026年に向け、省庁横断的な司令塔機能の強化が進められています。
これは従来の「クールジャパン」型の抽象的プロモーションから、
- プラットフォーム依存からの脱却
- AI活用による制作効率化
- デジタル権利保護の高度化
- IPの戦略的海外展開
といった、より構造的・技術的な支援へのシフトを意味します。
特徴は:
- 補助金だけでなく
- 知財戦略
- 流通・配信強化
- 海外展開支援
という総合設計である点です。
第9章|短期株価では測れない国家戦略
AIや防衛は、比較的早く受注が見えます。
しかし、
- 核融合はエネルギー主権確立のための危機管理投資
- コンテンツは国際影響力強化のための成長投資
です。
ここで重要なのは、
「利益率」ではなく
「国家の方向性」
を読むことです。
結論|即効薬と体質改善
整理すると:
- AI・GX・防衛 → 即効性がある
- 核融合 → 危機管理投資
- コンテンツ → 成長投資
国家は両方を同時に動かそうとしています。
短期株価だけを見ていると、
後者の動きは見逃されやすい。
しかし、
10年後の産業構造は、むしろこちらに左右される可能性があります。
出典
・内閣官房 日本成長戦略本部
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/nipponseichosenryaku/
・日本成長戦略本部「検討事項セット」
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/nipponseichosenryaku/honbu/dai1/kentoujikou_set.pdf