業界分析|外部環境分析(制度・市場・マクロ)
目的:
この業界が「どんなルールの箱の中にあるか」を、数字と事実中心に理解します。
第0章|この外部環境編の立ち位置
本レポートで「やること」
- 変えられない前提条件を示します
- 感情ではなく事実で説明します
「やらないこと」
- 将来予測は行いません
- 儲かる/厳しいという評価は行いません
- キャリアや戦略への示唆は行いません
👉 判断は「内部環境編」に委ねます。
第1章|市場規模と成長の実態(定量)
市場規模(政府支出ベース)
日本の防衛費は、近年大きく増額されています。
- 2022年度:約5.4兆円
- 2023年度:約6.8兆円
- 2024年度:約7.9兆円
- 2025年度予算:約8.5兆円
また、2023〜2027年度の5年間で約43兆円規模の防衛力整備計画が示されています。
過去5年の成長率(概算)
2018年度(約5.2兆円)から2024年度(約7.9兆円)までの推移を見ると、
直近数年で増額幅が拡大しています。
この業界の主要企業(例)
日本の防衛装備分野において、主要な企業は以下の通りです。
- 三菱重工業
- 川崎重工業
- 三菱電機
これらの企業は、防衛装備品の設計・製造・統合を担う元請企業として位置づけられています。
成長の内訳(分類のみ)
- 数量要因:装備更新、弾薬備蓄など
- 単価要因:原材料価格上昇、為替影響など
- 制度要因:国家安全保障関連戦略の改定
第2章|制度・政策との関係性(P)
制度ビジネスか否か
防衛産業は、主要顧客が政府であるという構造を持ちます。
主な調達主体:
- 防衛省
- 防衛装備庁
市場売上の大部分が公的支出に依存しています。
制度変更の事実
- 2014年:防衛装備移転三原則
- 2022年:国家安全保障戦略の改定
- 2023年:防衛費増額方針の明確化
- 2023年:防衛生産・技術基盤強化法の施行
この法律により、国は単なる発注者にとどまらず、
- 製造設備への直接支援
- 事業承継支援
- 重要技術の維持支援
といった枠組みを持つことになりました。
価格は一般市場のような自由設定ではなく、契約・調達制度の枠組みで形成されます。
第3章|経済的前提条件(E)
価格決定権の所在
価格は政府調達契約を通じて決定されます。
企業が自由市場のように価格を設定する構造ではありません。
多くの装備品契約では、**原価計算方式(コストプラス方式)**が採用されています。
これは、
原価 + 一定率の利益
という形で価格が構成される方式です。
利益率は制度上の枠組みの中で規定される場合が多く、
自由市場型の価格競争とは構造が異なります。
主要コスト構成(分類)
- 高度技術者の人件費
- 特殊鋼・電子部品などの材料費
- 長期研究開発費
インフレ・為替圧力
原材料価格や為替変動は調達価格に影響しますが、
その吸収方法は契約条件ごとに異なります。
第4章|社会・人口動態の影響(S)
労働供給側
- 生産年齢人口は減少傾向です。
- 理工系人材の確保が前提となる産業です。
- 製造業の平均年齢は40代前半で推移しています。
需要側
国際安全保障環境の変化は政策決定に影響を与え得ますが、
本章では将来需要の断定は行いません。
第5章|技術・DXの位置づけ(T)
技術の性質
防衛装備は高度専門技術に依存します。
技術は「代替」ではなく「中核要素」として機能します。
主な技術領域(例)
- 航空機エンジン
- レーダー
- ミサイル誘導技術
- サイバー関連技術
現在の装備品は単一のハードウェアではなく、
- 大規模ソフトウェア
- 通信ネットワーク
- 統合制御システム
を含む複合体です。
主要装備の開発期間は10〜20年単位に及ぶ場合があります。
そのため、
- 技術陳腐化
- インフレによるコスト増加
- 契約期間中の仕様変更
といった要素が契約構造に影響します。
設計や製造工程のデジタル化は進んでいますが、
制度・安全保障要件との整合が前提となります。
第6章|参入・撤退の制約(L)
必要な要件
- 政府調達契約資格
- 輸出管理法令対応
- 機密情報管理体制
初期投資
- 専用設備投資は数十億円規模になる場合があります。
新規参入・退出
新規参入は限定的であり、
既存の大手重工・電機メーカーが中心的役割を担っています。
第7章|経済安全保障との距離
目的:
この産業が国家安全保障とどれだけ接続しているかを測ります。
① デュアルユース性
防衛関連技術は、
材料・センサー・通信など民生用途と重なる領域を持つ場合があります。
② 情報の機微性
装備の性能・設計・運用に関する情報は機微性が高いとされます。
情報管理体制は制度的要件となります。
③ 国家依存度
- 売上の大部分が政府案件に依存します。
- 5年間で約43兆円規模の整備計画が示されています。
④ 外資・海外依存度
一部部材や共同開発は国際連携の影響を受けます。
為替や輸出管理制度の影響を受ける可能性があります。
⑤ セキュリティ・クリアランス影響度
2024年に成立した経済安全保障関連法制により、
重要情報へのアクセスには適性評価制度が関係します。
防衛分野では、情報管理体制が実務上の前提条件となります。
第8章|外部環境の整理
数値サマリー
- 市場規模:約8兆円規模
- 5年計画:約43兆円
- 公的支出依存:極めて高い
- 価格形成:政府契約ベース
- 初期投資:高額
- 技術人材依存:高い
変えられない前提条件
防衛産業は、
- 単一巨大顧客に依存し、
- 価格決定権が政府側にあり、
- 高度技術と機微情報管理を前提とし、
- 巨額・長期案件中心で構成される
制度規定型産業です。
第9章|次におすすめの資料
外部環境で確定した
- 単一顧客構造
- 契約型価格形成
- 情報管理規制
- 参入制約
これらが業界内部でどのような構造的歪みを生むのかは、
「内部環境編」で扱います。
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出典
- 防衛省 予算資料
- 財務省 予算関連資料
- 国家安全保障戦略(2022年改定)
- 経済安全保障関連法(2024年)