業界分析|内部環境分析(構造・収益・現場)
目的:
外部環境の前提が、業界内部でどう“歪み”として現れるかを理解させます。
第0章|この内部環境編の立ち位置
明確にすること
- 外部環境編の続編である
- 経営戦略・キャリア判断はしません
👉
あくまで「構造説明」で止めます。
第1章|業界内プレイヤー構成
事業者数
防衛産業は多層構造で構成されています。
- 元請(プライム)企業:数社規模
- 1次下請:数十社規模
- 2次・3次下請:数百〜数千社規模
規模別構成比
- 売上の大半は上位数社に集中
- 事業者数ベースでは中小企業が多数
上位プレイヤーの集中度
主要プレイヤー例:
- 三菱重工業
- 川崎重工業
- IHI
- 三菱電機
防衛関連売上は上位数社に集中しています。
分業構造
- 垂直分業型
- 設計・統合:元請
- 部品供給:下請
力関係は固定的です。
受託適正化ガイドライン
2025年以降、「防衛産業における受託適正取引等の推進のためのガイドライン」が強化されています。
- 下請企業への適正な価格転嫁
- 取引条件の透明化
が制度的に求められています。
第2章|収益構造の全体像(How)
業界平均売上高
- 大手重工:売上数兆円規模
- 防衛売上比率:企業により10〜30%前後
業界平均営業利益率
- 重工大手の営業利益率:概ね3〜8%レンジ
利益率の制度的算定方式
防衛装備契約の多くは、原価計算方式(コストプラス方式)を採用しています。
従来は営業利益率が約8%水準とされていましたが、
近年は基盤維持を目的とした新算定方式が導入され、
- 最大約15%
- 平均約10%水準
を目安とする枠組みへ移行しています。
利益率の分布
- 元請:制度算定方式の影響を受ける
- 下請:価格交渉余地が限定的
利益が残る工程(事実)
- システム統合
- 研究開発・設計
- 長期保守契約
第3章|人件費構造と労働集約性
人件費率
製造業全体の人件費率は概ね15〜25%レンジです。
防衛関連部門は高度技術人材依存度が高い傾向があります。
売上/人
大手重工では、1人あたり売上は約2,000万〜3,000万円レンジです。
労働時間と売上
開発案件は数年単位に及び、
長期プロジェクト型の売上構造を持ちます。
人手不足率
理工系人材は慢性的に不足傾向とされています。
第4章|現場と本部の非対称性
意思決定権限の所在
- 価格:政府契約
- 仕様:調達要件に基づく
- 納期:契約条件依存
現場裁量は限定的です。
本部比率/現場比率
大型案件は本部主導で管理され、
現場は契約条件内での遂行が中心となります。
管理業務比率
- 品質保証
- 情報管理
- 契約管理
管理業務の比率が高い構造です。
第5章|なぜ「忙しさ」が増幅しやすいのか
需要変動率
防衛費増額に伴い、受注量が増加しています。
需要超過の状況
弾薬・装備品分野では、
- 受注増加
- 生産能力不足
が同時に発生しています。
生産体制の構造変化
従来は「多品種少量生産」に最適化されていましたが、
近年は量産体制への移行が求められています。
稼働率
- 平均稼働率は高水準
- 特定部門でピーク集中が発生します
欠員時の業務増加率
高度技術職は代替が難しく、
欠員時の業務増加率が高くなりやすい構造です。
離職率
製造業平均離職率は約10%前後です。
第6章|業界内部で誤解されやすいポイント
よく語られる指標
- 防衛費増額
- 売上成長率
実態指標
- 営業利益率は製造業平均レンジ内
- 価格は契約ベースで算定
- 利益率は制度算定方式の影響を受ける
売上拡大と利益率は必ずしも連動しません。
第7章|内部環境の整理
構造的に歪みが出やすい点
- 売上は上位数社に集中
- 利益率は制度算定方式の枠内
- 高度技術人材への依存度が高い
- 量産体制への急激な移行が進行中
個人・企業努力の限界点
- 価格決定権は政府側にあります
- 契約仕様が固定的です
- 情報管理規制が前提です
構造として固定されやすい要素
- 垂直分業構造
- 原価計算方式
- 長期プロジェクト型案件
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出典
- 各社 有価証券報告書
- 防衛省 予算資料
- 経済産業省 製造業統計
- 防衛産業における受託適正取引等の推進のためのガイドライン