業界分析|半導体製造業(外部環境分析・2026年最新版)
目的
この業界が「どんなルールの箱の中にあるか」を、数字と事実中心に理解します。
第0章|この外部環境編の立ち位置
本レポートで「やること/やらないこと」
やること
- 変えられない前提条件を示します。
- 感情ではなく事実で説明します。
やらないこと
- 将来予測は行いません。
- 儲かる/厳しいといった評価は行いません。
- キャリア・戦略への言及は行いません。
👉 判断は次の資料に委ねます。
第1章|市場規模と成長の実態(定量)
■ 世界市場規模(確定実績)
- 2024年:約6,276億ドル(前年比 +19.1%)
→ 史上初めて6,000億ドルを突破しました。 - 2023年:約5,268億ドル
- 2022年:約5,800億ドル
過去10年CAGR(2014–2024):約7〜8%
- 2025年(見込):約6,970億ドル規模(前年比 +11%前後)
2030年までの「1兆ドル市場」への到達が現実味を帯びています。 ※出典:WSTS(世界半導体市場統計)2025年発表資料
■ 日本の生産・市場規模
- 日本の半導体市場(2024年):約7.1兆円(前年比 +8.7%)
- 日本の世界シェア(デバイス):1桁台
なお、日本製半導体製造装置の販売高(2024年度)は約4.7兆円(前年比 +20%超)です。
※本記事では製造業(デバイス)を中心に扱います。
■ 成長の質的変化(2024–2025年の特筆事項)
AIドリブン型成長
- 成長の中心はデータセンター向けGPUおよびHBM(高帯域幅メモリ)です。
二極化
- 生成AI関連は急伸しました。
- 一方で、自動車・産業機器向けは2024年前半まで在庫調整が継続しました。
第2章|制度・政策との関係性(P)
■ 制度ビジネスか否か
半導体は市場価格で取引される製品です。
一方で、設備投資は公的支援に強く依存する構造です。
■ 公的支出の具体化
日本政府の半導体関連支援策は、累計4兆円規模へ拡大しています。
主な事例:
- TSMC 熊本工場(JASM):第1工場・第2工場が補助対象
- ラピダス:2nm世代試作ラインに向け、累計9,000億円超の支援
■ 制度環境の変化
- 経済安全保障推進法(2022年施行)
- 先端半導体製造装置の輸出規制強化(2024年以降)
「どこで作り、どこに売るか」が政策に強く紐づく産業構造です。
第3章|経済的前提条件(E)
■ コスト構造の激変
- 2nm世代を見据えた先端ファブ:1拠点あたり2〜3兆円規模
固定費負担は極めて重い構造です。
■ 部材・変動費側の圧力
- EUV露光装置価格の上昇
- 特殊ガス価格の上昇
- 電力単価上昇
■ 価格決定構造
- メモリ:市況連動型
- 先端ロジック:少数企業による寡占的供給
第4章|社会・人口動態の影響(S)
■ 労働供給の地域偏在
投資は特定地域に集中しています。
- 熊本
- 北海道千歳
一部地域では、半導体技術者の有効求人倍率が10倍超とされています。
第5章|技術・DXの位置づけ(T)
■ 「微細化」から「パッケージング」へ
- 2nm世代への微細化
- 3Dパッケージング技術の重要性上昇
技術競争は前工程単体から、後工程を含む総合技術競争へ拡張しています。
第7章|経済安全保障との距離(2026年時点)
■ デュアルユース性
半導体は民生・防衛の両用途を持ちます。
■ 情報の機微性
- 回路設計情報
- 製造プロセス
セキュリティ・クリアランス制度により、情報管理は厳格化しています。
■ 国家依存度
- 政府補助金:累計約4兆円規模
- 特定重要物資指定
第8章|外部環境の整理(2026年時点)
- 世界市場:6,276億ドル(2024年実績)
- 日本市場:約7.1兆円
- 先端ファブ投資:1拠点 2〜3兆円
- 公的支援:累計約4兆円
- 地域限定的な人材不足
■ 変えられない前提条件
- AI需要が市場を規定しています。
- 地政学が供給網を制限しています。
- 2〜3兆円規模の固定費が前提です。
- 国家政策と強く接続しています。
👉
「AIが需要を規定し、地政学が供給網を制限する巨大固定費産業」
という箱の中にある産業です。
第9章|次におすすめの資料
巨額補助金と2〜3兆円規模の設備投資が、企業の貸借対照表や現場運営にどのような構造を生むのかは、次の「内部環境編」で扱います。
関連記事
出典
- WSTS(World Semiconductor Trade Statistics)2025年発表資料
- 経済産業省「半導体・デジタル産業戦略」関連資料
- 内閣府「経済安全保障推進法」関連資料
- 各社決算資料(TSMC、:ラピダス)