一般教養知識・情報2026-02-21

業界を学ぼう!業界分析|高市内閣 重点17分野『AI・半導体』分野 ― その構成産業②半導体装置産業(外部環境分析)

半導体装置産業がどんな外部環境(市場・制度・マクロ・技術・参入制約・経済安全保障)の箱にあるかを、数字と事実中心に整理します。

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業界分析|外部環境分析(制度・市場・マクロ)

目的:
この業界が「どんなルールの箱の中にあるか」を、数字と事実中心に理解します。


第0章|この外部環境編の立ち位置

本レポートで「やること/やらないこと」

やること

  • 変えられない前提条件を示します。
  • 感情ではなく事実で説明します。

やらないこと

  • 将来予測は行いません。
  • 儲かる/厳しい評価は行いません。
  • キャリア・戦略への言及は行いません。

👉 判断は次の「内部環境編」に委ねます。


第1章|市場規模と成長の実態(定量)

■ 世界市場規模(確定値・見込み)

  • 2023年:約1,060億ドル(踊り場)
  • 2024年:約1,180億ドル(前年比 +11%前後で着地)
  • 2025年(見込み):約1,330億ドル規模(前年比 +13%前後)

2023年の調整局面を経て、
2024年からはAI投資主導の**「再成長期」**に入っています。


■ 地域別需要の歪み

2024年には、中国向け装置需要が世界全体の約4割を占める月もありました。

背景には、

  • 先端装置への輸出規制強化
  • 中国による旧世代(成熟ノード)装置の集中購入

という二重構造があります。

**「先端は売れないが、汎用は爆発的に売れる」**という規制由来の歪みが生じています。


■ 市場の中身(2024年の特徴)

数量要因(設備投資の増減)

  • 先端ロジック/先端メモリ(HBM等)向け投資の拡大
  • 生成AI関連投資の増加

単価要因(装置単価の上昇)

  • 先端世代(微細化)対応で、装置が高額化しやすい構造です。

制度要因(地域投資の誘導)

  • 各国の補助金・投資誘導策が、設備投資の「場所」を左右します。

■ 主要な企業(例)

  • 海外:ASML、Applied Materials、Lam Research、KLA
  • 日本:東京エレクトロン、SCREENホールディングス、ディスコ など

第2章|制度・政策との関係性

■ 制度ビジネスか否か

装置産業は、価格そのものが公定される制度ビジネスではありません。
一方で、「輸出規制」および「補助金(顧客側の投資誘導)」の影響が強い産業です。


■ 公的支出との関係(投資の発生源)

装置メーカーへの補助金が直接入るというより、
半導体製造(顧客)の国内投資が補助され、その結果として装置需要が生まれる構造です。


■ 規制の関与(輸出管理)

先端装置は、安全保障上の観点から輸出管理の対象となり得ます。
このため、同じ製品でも「どこに売れるか」が制度により制約されます。


第3章|経済的前提条件

■ 価格決定権の所在

装置価格は市場で形成されますが、以下の制約があります。

  • 顧客(少数の巨大半導体メーカー)への依存が大きい
  • 個別仕様・認定(クオリフィケーション)を通過しないと売上になりにくい

「汎用品を広く薄く売る」より、特定顧客への深い入り込みが前提になりやすい構造です。


■ コスト構造(硬直性)

装置メーカーのコストは、以下の比率が大きくなりやすいです。

  • 研究開発費
  • サービス/保守体制
  • 高度部材(精密部品・光学系・制御系等)

装置は「1台売って終わり」ではなく、納入後の立上げ・保守負荷が前提です。


■ インフレ圧力(部材・電力・人件費)

  • 精密部材やサプライチェーン制約により、原価圧力が発生し得ます。
  • 高度人材の獲得競争により、人件費圧力が発生し得ます。

第4章|社会・人口動態の影響

■ 需要側:AI投資への偏り

2024年の装置投資は、生成AI関連の設備投資(先端ロジック/先端メモリ)と結びついています。
需要は「最終製品」ではなく、データセンター投資の強弱に影響を受けやすい構造です。


■ 労働供給側:高度エンジニアの不足

装置産業は、機械・電気・制御・ソフト・プロセスの複合人材が必要です。
生産年齢人口の減少局面では、採用制約が外部条件になります。


第5章|技術・DXの位置づけ(構造変化)

従来、装置産業のルールは「微細化(前工程)」が中心でした。

しかし現在は、

■ 後工程(先端パッケージング)への構造シフト

  • 3D積層技術の高度化
  • ボンディング(接合)装置の重要性増大
  • ダイシング(切断)装置の精度要求上昇

AI半導体では、
チップを積み上げる工程が最大のボトルネックになっています。

この分野で、

  • ディスコ
  • 東京エレクトロン

など日本企業が高いシェアを持っています。

これが日本装置産業の外部的な「強固な箱」を形成しています。


第6章|参入・撤退の制約

■ 新規参入の難易度

装置産業の参入障壁は、以下の理由で高くなりやすいです。

  • 顧客の認定(クオリフィケーション)に時間がかかります。
  • 歩留まり・稼働率に直結するため、実績が重視されます。
  • 保守体制・サポート体制が前提になります。

■ 初期投資・撤退コスト

  • 研究開発投資が先行しやすいです。
  • 専用サプライチェーン(精密部品等)の構築が必要になりやすいです。

撤退は、技術者・設備・顧客認定の喪失を伴うため、容易ではありません。


第7章|経済安全保障との距離

■ 規制と需要の同時発生

  • 先端装置:輸出規制強化
  • 成熟ノード装置:中国需要急増

規制が需要を歪ませるという、
極めて特異な構造が継続しています。

装置産業は、

「技術産業」であると同時に
「地政学産業」でもある

という性質を持っています。


第8章|外部環境の整理(2026年時点)

項目数値・事実
世界市場2024年 約1,180億ドル
2025年見込み約1,330億ドル
成長要因AIデータセンター投資
地域歪み中国需要 約4割月も存在
技術制約3D積層・接合工程がボトルネック
制度影響輸出規制+補助金誘導

👉 **「AI再成長 × 地政学歪み × 後工程高度化」**が現在の外部条件です。


変えられない前提条件

  • 顧客の設備投資循環に強く連動します。
  • 輸出規制・投資誘導策により「売り先」「増設場所」が制約されます。
  • 顧客認定と保守体制が参入障壁になります。
  • 先端世代の高額化により、技術更新の負担が継続します。

👉 **「投資循環 × 規制 × 高額化」**という箱の性質だけを確定させます。


第9章|次におすすめの資料

外部環境が、内部でどんな歪みを生むのか(例:工程別の利益の残り方、開発負荷、サポート負荷、認定待ちによる収益の偏り)は、次の「内部環境編」で扱います。


関連記事

出典

  • SEMI(Worldwide Semiconductor Equipment Market Statistics / WWSEMS)関連発表資料
  • SEAJ(Semiconductor Equipment Association of Japan)統計・見通し資料
  • 各社IR資料(ASML、Applied Materials、Lam Research、KLA、東京エレクトロン、SCREENホールディングス、ディスコ ほか)

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