無料版②
業界分析|内部環境分析(構造・収益・現場)
目的:
外部環境の前提が、業界内部でどう“歪み”として現れるかを理解させます。
第0章|この内部環境編の立ち位置
明確にすること
- 外部環境編の続編です。
- 経営戦略・キャリア判断は行いません。
👉 あくまで「構造説明」で止めます。
第1章|業界内プレイヤー構成
■ 事業者数と集中度
世界の主要プレイヤーは数十社規模ですが、
実質的に市場を支配するのは十数社に限定されます。
- 上位5社の市場シェア合計:約50%前後
- 上位10社合計:約70%前後
工程別では寡占がさらに進みます。
■ 規模別構成
- 大手:売上数千億円〜兆円規模
- 中堅:数百億円規模
- 中小:特定部材・特定工程特化
垂直統合型というより、工程別分業型の水平構造です。
第2章|収益構造の全体像(How)
■ 業界平均指標(概算レンジ)
- 平均営業利益率:15〜30%(企業差大)
- 売上高:数百億円〜兆円規模
- R&D比率:10〜20%
■ 収益の「時間的歪み」
装置産業の特徴として、
出荷=即売上計上ではありません。
装置は納入後、顧客工場での 「認定(クオリフィケーション)」を経て 初めて売上計上されます。
2026年現在は世界各地で工場立上げが同時進行しており、
- 出荷済み仕掛品の増加
- 売上計上タイミングの後ろ倒し
- キャッシュフロー圧迫
という内部的な歪みが発生しやすい状況です。
■ 利益が残る工程
- 先端ロジック向け装置
- HBM関連工程装置
- 3D積層関連装置(接合・高精度加工)
特に後工程装置は、
従来は相対的に利益率が低い分野とされていましたが、
3D積層技術の普及により 「汎用品」から「先端技術品」へ位置付けが変化しています。
これにより、
- 部門間のリソース配分再編
- 技術者配置の再設計
- 部門パワーバランスの変化
が内部で進行しています。
■ 利益が薄くなりやすい工程
- 汎用メモリ向け
- 一部成熟ノード装置
第3章|人件費構造と労働集約性
■ 必須定量指標
- 人件費率:約20%前後
- 売上/人:3,000万〜5,000万円規模
- 労働時間あたり売上:製造業上位水準
■ フィールドエンジニア(FE)という物理的制約
売上/人は高水準ですが、
それは開発・営業だけでなく、 現場で装置を組み上げ、立上げを行う **フィールドエンジニア(FE)**の労働に支えられています。
2026年2月現在、
- 熊本
- 北海道千歳
などでは、自社FEだけでは不足し、
- 協力会社
- 海外拠点からの応援
で補完している事例が見られます。
この結果、
「FEの稼働率」が企業の物理的な売上上限を規定する
という構造的制約が発生しています。
■ 人手不足率
- 半導体関連技術者の求人倍率:地域により5〜10倍水準
- 採用単価の上昇が継続
■ なぜ効率化が難しいか
- 顧客ごとの個別仕様
- 認定プロセスの長期化
- 立上げ支援の人的依存
売上は高いが、完全自動化は困難です。
第4章|現場と本部の非対称性
■ 意思決定権限の所在
- 技術ロードマップ:本部
- 顧客認定判断:本部
- 納期調整:営業+本部
- 現場裁量:限定的
■ 管理業務比率
- 技術者の時間のうち、開発以外(報告・顧客対応):30〜40%に達する場合あり
評価指標と現場実態が一致しにくい構造があります。
第5章|なぜ「忙しさ」が増幅しやすいのか
■ 需要変動率
- 年間±20〜40%の投資変動
■ 稼働率
- 平均:70〜85%
- ピーク時:90%超
■ 後工程高度化による負荷増幅
3D積層の高度化により、
- 接合精度要求の上昇
- 微細加工難易度の上昇
- 調整工程の増加
が発生しています。
前工程と後工程の同時高度化により、
FEの立上げ負荷が増大します。
■ 欠員時の業務増加率
- 1名欠員で業務負荷15〜30%増加
専門性が高いため、 代替が難しい構造です。
■ 離職率
- 製造業平均より低いが、専門人材流動は増加傾向
需要急増局面では、
既存人員で吸収する構造になります。
第6章|誤解されやすいポイント
■ 売上成長率=安定ではない
市場成長率10%超でも、
個別工程では減収が起きます。
■ 高利益率=楽ではない
営業利益率20%超でも、
R&D比率10〜20%が前提です。
■ 技術高度化=負荷軽減ではない
微細化+積層の同時進行により、
現場負荷は増加します。
第7章|内部環境の整理
構造的歪み
- 高固定費(R&D 10〜20%)
- 需要変動 ±20〜40%
- 顧客寡占依存
- 地域的人材不足
- 認定依存型売上
動かしにくい要素
- 顧客集中構造
- 投資循環依存
- 地政学制約
- 工程別寡占
👉 本稿は構造理解で止めます。
第8章|有料版への橋渡し
就活・転職向け有料版では
この構造の中で
「詰まりやすいポジション」 「相対的に裁量が残るポジション」
を整理します。
経営企画・事業開発向け有料版では
- KPI構造
- ユニットエコノミクス
- 投資回収構造
を扱います。
👉 無料版は「構造理解」までです。
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出典
- 各社決算資料(ASML、Applied Materials、Lam Research、東京エレクトロン、ディスコ 等)
- SEMI統計資料
- SEAJ発表資料