一般教養知識・情報2026-02-26

【Part5-①】業界分析|高市内閣 重点17分野『航空・宇宙』分野:航空機体・部品製造産業(外部環境編)

航空機体・部品製造産業の外部環境を、制度・市場・マクロ条件から定量中心に整理する。

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業界分析|外部環境分析(制度・市場・マクロ)

航空機体・部品製造産業

目的:

この業界が「どんなルールの箱の中にあるか」を、数字と事実中心に理解することです。


第0章|この外部環境編の立ち位置

本レポートでは、航空機体・部品製造産業が置かれている

  • 市場規模
  • 制度・規制
  • 経済的前提条件
  • 社会・人口動態
  • 技術環境
  • 経済安全保障との接続

を整理します。

将来予測や、儲かる/厳しいといった評価は行いません。
判断は内部環境編に委ねます。


第1章|市場規模と成長の実態(定量)

■ 世界市場規模

  • 世界民間航空機市場:約1兆ドル(2025年推計)
  • 過去10年CAGR:約4%前後

2019年まで拡大 → 2020年急減 → 2023年回復途上
という局面を経て、

2025年時点では数量面では完全回復水準に到達しています。

一方で、

  • 単通路機(A320neo、737MAX等)が需要を牽引
  • 部品不足・エンジン供給制約による生産上限

という供給制限が市場の天井を決める構造に移行しています。


■ 日本市場規模

  • 航空機体・部品出荷額:約2.1兆円(2024年度確定ベース)
  • 2019年:約1.9兆円
  • 2020年:約1.2兆円

2024年度は、2019年ピークを超え、過去最高水準を更新しています。

内訳要因:

  • 数量要因:民間機生産回復
  • 単価要因:円安による押し上げ
  • 制度要因:防衛予算増額による装備品製造増加

■ 主要企業(日本)

  • 三菱重工業
  • 川崎重工業
  • SUBARU
  • IHI

上位数社で国内売上の大半を占める構造です。


第2章|制度・政策との関係性

■ 制度ビジネスか

民間航空機向け売上が中心ですが、

  • 型式証明(国土交通省)
  • FAA / EASA認証
  • 外為法に基づく輸出管理

など、強い規制下にあります。


■ 公的支出比率

  • 防衛兼業企業が多く
  • 売上の20〜40%が政府関連(企業により差)

■ 制度の新しい「箱」

2025年以降、制度枠組みに明確な変化が生じています。

① 環境規制(SAF・脱炭素)

  • CORSIA(国際航空分野のカーボンオフセット制度)の厳格化
  • 欧州中心にSAF導入義務化拡大

これにより、

部品メーカーにも
製造工程の脱炭素化対応が実質的な参入条件となりつつあります。


② セキュリティ・クリアランス制度(経済安全保障)

2025年以降、日本でも

  • 重要機密を扱う技術者への適性評価制度が本格始動

民間機と防衛機の境界が曖昧なTier1企業では、

  • 管理コスト増大
  • 情報管理体制強化

という新しい制度的制約が加わっています。


第3章|経済的前提条件

■ 価格決定権

  • 機体OEM(Airbus / Boeing)が主導
  • Tier1以下は交渉力が限定的

長期固定価格契約(LTA)が基本構造です。


■ コスト構造

  • 人件費:30〜40%
  • 材料費:30〜40%
  • 設備償却費:高水準

■ 材料費の構造変化

ロシア・ウクライナ情勢の長期化により、

  • チタン調達ルート変更
  • アルミ価格の高止まり

が継続しています。

特にチタンは航空機向け依存度が高く、
コスト上昇が構造化しています。


■ インフレと価格改定

近年、OEMとTier1間では

  • インフレ連動型価格改定条項(エスカレーション条項)

の導入交渉が進んでいます。

ただし、

価格主導権は依然としてOEM側にあります。


第4章|社会・人口動態の影響

■ 需要側

  • 世界旅客数:2019年 45億人
  • 2024年:ほぼ回復水準

航空機更新需要が数量を左右します。


■ 労働供給

  • 技術者平均年齢:約45歳超
  • 若年技能工不足が継続

有効求人倍率(輸送用機械器具製造):2倍超水準


第5章|技術・DXの位置づけ

■ 技術分類

→ 補助型

  • 複合材加工技術
  • MBSE(モデルベース設計)
  • デジタルツイン

IT導入率:

  • 大手:高水準
  • 中小:限定的

技術は代替ではなく、精度・安全性を補助する位置づけです。


第6章|参入・撤退の制約

  • 必須認証:AS9100 等
  • 初期投資:数十億円規模
  • 新規参入数:限定的
  • 撤退時:専用設備の転用困難

参入・撤退ともに高コスト構造です。


第7章|経済安全保障との距離

① デュアルユース性

高い(民間機・防衛機共通技術)


② 情報の機微性

設計図・材料仕様は輸出管理対象


③ 政府案件比率

20〜40%(企業差あり)


④ 海外売上比率

60%超(輸出依存)


⑤ セキュリティ・クリアランス影響度

2025年以降、

  • 技術者適性評価制度
  • 情報管理体制強化

が制度的義務として加わっています。

国家重要分野に該当します。


第8章|外部環境の整理

数値サマリー

  • 世界市場:約1兆ドル
  • 日本市場:約2.1兆円
  • 人件費率:30〜40%
  • 材料費率:30〜40%
  • 政府関連比率:20〜40%
  • 海外売上比率:60%超

変えられない前提条件

  • OEM主導の価格決定構造
  • 強い国際認証制度
  • 高い設備投資負担
  • 材料価格の地政学的影響
  • 脱炭素規制の制度化
  • 経済安全保障制度との接続

👉 この産業は
「重厚長大型 × 高規制 × 経済安保直結型」産業という箱に入っています。


第9章|次におすすめの資料

外部環境が内部でどのような歪みを生むのかは、

内部環境編(無料②)で扱います。


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出典

  • 経済産業省「航空機産業の現状」
  • 国土交通省 航空局資料
  • ICAO CORSIA制度関連資料
  • 防衛省 防衛関係費資料
  • 各社有価証券報告書(2024年度)
  • 日本航空機開発協会統計資料

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