業界分析|内部環境分析(構造・収益・現場)
航空MRO産業
目的:
外部環境で確定した「労働集約型 × 強認証型 × 運航連動型 × 安保接続型」という箱が、業界内部でどのような歪みとして現れるのかを理解することです。
第0章|この内部環境編の立ち位置
本稿は外部環境編の続編です。
- 経営戦略の提案は行いません
- キャリア判断は行いません
- 構造説明に限定します
👉 あくまで「構造理解」で止めます。
第1章|業界内プレイヤー構成
■ 事業者数
- 国内主要MRO事業者:約30〜40社規模(航空会社系・重工系・独立系含む)
- 整備拠点は羽田・成田・中部・関西・那覇など主要空港に集中
■ 規模別構成
- 売上1,000億円超:航空会社グループ整備部門
- 売上100〜500億円規模:重工系・専業系
- 中小部品修理会社:多数
■ 集中度
- 上位数社で国内売上の過半
- エンジンMROは特定企業への集中度が高い
■ 分業構造
- 航空会社内製型(自社機中心)
- メーカー/重工兼業型(エンジン・防衛)
- コンポーネント専業型
垂直分業というよりも、
機能別分業型の色彩が強い構造です。
第2章|収益構造の全体像(How)
■ 業界平均指標(目安)
- 営業利益率:3〜7%水準
- エンジン整備:5〜8%
- ライン整備:3〜5%
■ お金の流れ
- 航空会社と包括整備契約
- エンジンメーカー指定整備契約
- 部品費は原価連動型
■ 利益が残りやすい工程
- エンジンオーバーホール
- 高付加価値部品修理
■ 利益が薄くなりやすい工程
- ライン整備
- 単純部品交換
■ 2026年の内部的歪み①:リードタイム長期化
2026年現在、
- タービンブレード
- 特殊合金部品
- エンジン関連コンポーネント
の供給遅延が継続しています。
その結果、
エンジンオーバーホール期間は
従来の60〜90日から
120日以上へ長期化するケースが常態化しています。
これにより、
- ハンガー回転率低下
- 固定費負担増大
- 売上計上遅延
が発生しています。
■ P/Lとキャッシュフローの乖離
- 作業は進行している
- 売上計上は完了後
- 部品代は先行支出
という構造のため、
利益計上タイミングと現金収支が一致しにくい
特徴があります。
成長局面であっても、
ハンガー滞留が増えると
固定費の負のレバレッジが働きます。
第3章|人件費構造と労働集約性
■ 人件費率
- 40〜50%
■ 売上/人
- 約1,500〜2,500万円/人
■ 労働時間あたり売上
- 整備工程は時間依存性が高い
■ 資格者ピラミッドの崩れ
若手流入は増加していますが、
- 一等航空整備士
- 確認主任者
など高度資格者は不足しています。
熟練整備士1名が監督できる若手人数には、
- 制度上の制限
- 安全上の制約
があります。
そのため、
確認主任者の労働密度が極端に上昇
し、
- 承認待ち
- 最終確認待ち
が内部停滞の要因となっています。
若年化は、
教育コスト増大と
現場責任者のオーバーロードを同時に生みます。
第4章|現場と本部の非対称性
■ 意思決定権限
- 整備基準:国交省・OEM規定
- 作業裁量:限定的
■ 管理業務比率
- 品質・記録関連:業務時間の25〜35%
■ デジタル移行期の混合コスト
2026年現在、
- タブレット入力
- 電子整備記録
- デジタルツイン管理
が進む一方で、
国際規制当局(FAA/EASA等)への証明として
紙署名が依然必要なケースがあります。
その結果、
- 紙記録
- デジタル入力
が併存し、
デジタルダブル(二重作業)
が発生しています。
短期的には、
本来の省人化効果を相殺する構造となっています。
第5章|なぜ「忙しさ」が増幅しやすいのか
■ 需要変動率
- 稼働時間連動型
- 繁忙期に集中
■ 稼働率
- 平均:85〜90%
- ピーク:100%超
■ 欠員時の業務増加率
- 1名欠員 → 他社員負荷約1.2〜1.3倍
■ 離職率
- 製造業平均並み(約10%前後)
繁忙期は負荷が集中しやすい構造です。
第6章|業界内部で誤解されやすいポイント
■ 需要回復=利益増ではない
部品価格高騰・人件費上昇により、
売上増加と利益増加は必ずしも一致しません。
■ 防衛案件=高収益ではない
制度対応コストが増加しています。
第7章|内部環境の整理(判断はしない)
■ 構造的歪み(数値要約)
- 利益率:3〜7%
- 人件費率:40〜50%
- 管理業務比率:25〜35%
- エンジン整備期間:120日超ケース増加
- ハンガー回転率低下
- 確認主任者不足
- デジタル二重入力
■ 個人・企業努力で動かせない要素
- 強い認証制度
- 国家資格制度
- 部品供給構造
- 運航時間連動需要
- 経済安全保障制度
- 国際規制当局の証明要件
第8章|有料版への橋渡し
就活・転職向け有料版では
この構造の中で
「詰みやすい人/逃げ道がある人」
を扱います。
経営企画・事業開発向け有料版では
- 稼働率KPI
- 部品回転率
- 人員配置最適化
を扱います。
無料版は、ここまでです。
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出典
- 国土交通省 航空局資料
- IATA統計資料
- 経済産業省 航空関連資料
- 各社有価証券報告書(2024年度)