一般教養知識・情報2026-03-16

業界分析|高市内閣 重点17分野「造船」分野 ― その構成産業③ 舶用機器産業(エンジン・推進・電装)(外部環境編)

造船クラスターの中核を構成する舶用機器産業(エンジン・推進装置・電装機器)の外部環境を、市場規模・制度・技術・経済安全保障の観点から整理する。

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業界分析|外部環境分析(制度・市場・マクロ)

目的
この業界が「どんなルールの箱の中にあるか」を、数字と事実中心に理解する


第0章|この外部環境編の立ち位置

本レポートでは

  • 市場規模
  • 制度
  • 技術環境
  • 社会構造

など、
舶用機器産業を取り巻く 外部条件 を整理します。

やること

  • 変えられない前提条件の整理
  • 数字と制度の事実整理

やらないこと

  • 将来予測
  • 投資判断
  • 企業評価

第1章|市場規模と成長の実態(定量)

世界市場

舶用機器市場は主に以下の分野で構成されます。

  • 船舶エンジン
  • 推進装置
  • 航海機器
  • 電装・制御装置

世界市場規模(推計)

約1,200億〜1,500億ドル(2024〜2025年)

これは

新造船市場の約50〜60%

の規模に相当します。


日本企業の位置

日本企業は複数の分野で高い技術力を維持しています。

船舶エンジン

主要企業

  • ジャパンエンジンコーポレーション(JEC)
  • 三井E&S
  • IHI原動機(新潟原動機を含む)

このうち

ジャパンエンジンコーポレーション

世界に数社しか存在しない
大型舶用エンジンのライセンサー(設計開発元)

の一つであり、

日本唯一の独自ブランド
UE機関

を持つ企業です。

一方、

三井E&S
IHI原動機

などは

MAN Energy Solutions
WinGD

といった海外ライセンサーから図面提供を受けて製造する

ライセンシー

としての側面が強い企業です。


推進装置

代表企業

ナカシマプロペラ

固定ピッチプロペラでは

世界トップシェア

を持つ企業とされています。


電装・航海機器

代表企業

  • 寺崎電気産業(配電盤)
  • 大洋電機(発電機・モーター)
  • 古野電気(航海機器)

寺崎電気は
船舶用配電盤で世界トップクラス。

古野電気は

  • レーダー
  • 航海装置
  • 自動運航支援

などで国際的に知られています。


世界シェア

低速ディーゼルエンジンでは

日本企業の製造シェアは

約30〜40%

とされます。

かつては

50%以上

のシェアを持っていましたが、

現在は

中国
韓国

などの造船拡大に伴い
シェアは低下しています。

ただし

ライセンス技術を含む影響力

という観点では

日本企業の存在感は
依然として大きいとされています。


第2章|制度・政策との関係性

舶用機器産業は

IMO(国際海事機関)

の規制と密接に結びついています。

主な制度

  • MARPOL条約
  • EEDI
  • CII

技術への影響

これらの規制により

以下の技術開発が進んでいます。

  • LNG燃料エンジン
  • メタノール燃料
  • アンモニア燃料
  • 電動推進

CII制度の影響

2020年代に導入された

CII(Carbon Intensity Indicator)

は、

船舶の燃費性能を
格付けする制度です。

この制度では

燃費性能が低い船は

格付けが下がり
商業価値が低下

する可能性があります。

その結果

古いエンジンを

  • 改造
  • 換装

する

レトロフィット需要

が増加しています。


第3章|経済的前提条件

価格決定権

舶用機器の価格は

基本的には

造船所

が決定します。

しかし

大型エンジンなどの主要機器では

船主(オーナー)がメーカーを指定する

ケースも多くあります。

そのため

この産業では

造船所と船主の両方に対する営業力

が必要とされます。


コスト構造

主なコスト

  • 金属材料
  • 精密加工
  • 電装部品
  • 人件費

また

エンジン分野では

海外ライセンサーへの技術料

が発生する場合があります。

代表例

  • MAN Energy Solutions
  • Wärtsilä
  • WinGD

第4章|社会・人口動態の影響

舶用機器産業では

以下の人材が重要です。

  • 機械設計
  • 電装エンジニア
  • 制御ソフト

日本では

製造業技術者の平均年齢が
上昇しています。

経済産業省調査では

製造業技術者平均年齢は

約43歳

とされています。


第5章|技術・DXの位置づけ

舶用機器のDXは

主に以下の分野で進んでいます。

  • エンジン遠隔監視
  • 船舶データ収集
  • 予知保全
  • 自動運航支援

航海機器メーカーでは

自動離着桟や
自動操船などの研究が進んでいます。

技術位置づけ

DXは

補助型技術

として位置付けられます。

機械構造そのものを
代替するものではありません。


第6章|参入・撤退の制約

舶用機器産業の参入障壁は高いとされています。

主な要因

  • 船級認証
  • エンジン試験設備
  • 国際ライセンス

大型舶用エンジンの開発には

数百億円規模

の設備投資が必要とされます。


第7章|経済安全保障との距離

舶用機器は

デュアルユース技術

に該当します。

理由

  • 商船
  • 軍艦

の両方に使用されるためです。


経済安全保障政策との関係

日本では

経済安全保障推進法

に基づき

サプライチェーンの強靭化が
政策課題となっています。

船舶関連部品は

特定重要物資またはそれに準ずる分野

として扱われるケースがあります。


防衛技術との関係

舶用エンジン技術の一部は

海上自衛隊艦艇など

防衛用途にも利用されます。

  • ガスタービン
  • 推進装置

など。

これらの技術維持は

防衛産業基盤

とも関係します。


第8章|外部環境の整理

主要ポイント

  • 世界市場:約1,200〜1,500億ドル
  • 新造船市場の約50〜60%
  • IMO脱炭素規制が技術方向を決定
  • CII制度によりレトロフィット需要が発生
  • 技術ライセンス依存構造
  • 高い参入障壁

👉

舶用機器産業は

規制・技術・安全保障

の三要素に強く影響される産業です。


第9章|次におすすめの資料

外部環境で確定した

  • 規制主導の技術変化
  • 高い参入障壁
  • ライセンス構造

企業内部でどのような構造を生むのかは

次の

内部環境編

で扱います。


関連記事


出典

  • International Maritime Organization(IMO), MARPOL Convention / EEDI / CII regulations
  • Clarkson Research, Shipping Intelligence Network / Shipbuilding Market Report
  • UNCTAD, Review of Maritime Transport
  • 日本舶用工業会, 舶用工業の現状
  • 日本船舶輸出組合, 世界造船市場統計
  • 経済産業省, 海事産業強化政策・経済安全保障政策関連資料
  • 海事プレス社, 舶用機器・海事産業関連報道
  • 各社公開資料(ジャパンエンジンコーポレーション、三井E&S、IHI原動機、ナカシマプロペラ、寺崎電気産業、古野電気 等)

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