なぜ、山崎と白州は品切れが続くのか?
【前編】歴史と需要から読み解く“原酒不足”の真相
いまや「山崎」「白州」は、日本だけでなく世界中で象徴的な存在となりました。
しかしその一方で、一般のファンが定価で買うことが現在、ほぼ不可能に近い銘柄としても知られています。
- 抽選販売
- 入荷しても瞬時に完売
- 二次流通では数倍以上の価格
- 店頭で一度も見たことがない人も多い
ではなぜ、山崎と白州はこれほど長期間にわたり品薄状態が続いているのでしょうか?
本記事の前編では、“なぜいま原酒が足りないのか?” を歴史的背景から丁寧に解説します。
後編では、実際に買える「代替ウイスキー」を紹介する予定です。
1. そもそも「山崎」「白州」とは?
まず、山崎と白州について簡単に整理します。
■ 山崎とは
1923年開設、日本初のモルトウイスキー蒸溜所。
京都・大阪の境にあり、湿度・温度・水資源などウイスキーづくりに理想的な環境です。
- 味の特徴:フルーティ、リッチ、複雑
- 受賞歴:国際的な最高賞を多数獲得
世界から“ジャパニーズウイスキーの象徴”として認識されています。
■ 白州とは
山梨県・南アルプスの森に囲まれた「森の蒸溜所」。
山崎とは香味の方向性が大きく異なります。
- 味の特徴:爽やか、ハーバル、ライトスモーク
- 白州ハイボール人気が社会現象に
どちらも国際的評価が極めて高く、年々ファンが増えています。
2. 日本ウイスキーの“冬の時代”が生んだ深刻な原酒不足
現在の品薄問題の根本は、
1980年代後半から2000年代後半まで約20年間続いた低迷期(ウイスキーの“冬の時代”)
にあります。
この期間、日本国内のウイスキー市場は急速に縮小していました。
- 若者のウイスキー離れ
- ハイボール文化が浸透していない
- “ウイスキー=おじさんの酒”という固定観念
- ワインや焼酎に人気が集中
その結果、多くのメーカーは生産量を大幅に削減しました。
● ウイスキーは“今日仕込んで今日売れない”
ウイスキーは、仕込んでから商品化まで最低でも数年、
10〜18年熟成させるものも多くあります。
つまり、
“昔つくらなかった原酒”は、今いくら頑張っても突然増やせない。
これが現在の深刻な原酒不足の背景です。
● 今ある原酒量=過去の仕込み量で決まる
- 1980〜2000年代:生産縮小
- 2010年代:突然の世界的ブーム
- → 需要増に全く追いつかない
今日蒸溜した原酒は、10年後にようやく商品として市場に出ます。
この「時間差」が品薄を長期化させています。
3. 世界的ジャパニーズウイスキーブームで需要が爆発
2010年代後半、日本のウイスキーは世界で高く評価されました。
■ 国際コンペで山崎・白州が最高賞を連続受賞
- 山崎18年
- 白州25年
が世界的な賞を受賞し、海外メディアが大きく取り上げました。
● 海外富裕層の需要が爆発
とくに以下の国・地域で需要が跳ね上がりました。
- 中国
- アメリカ
- 台湾
- シンガポール
富裕層が高値でも購入するため、
国内に回る量が大幅に減少。
これが品薄をさらに深刻化させました。
4. コロナ禍と“白州ハイボール”で国内需要も急上昇
需要増は海外だけではありません。
■ 家飲み需要の増加
コロナ禍で自宅でお酒を楽しむ人が増え、
国産ウイスキーが一気に人気に。
■ 白州ハイボールがSNSで話題に
- CM効果
- SNSのバズ
- 居酒屋メニューでも爆発的な人気
ライトな層まで白州を求めるようになり、
需要が供給を完全に上回る状態に。
5. 「増産すればいい」は通用しない理由
では、増産すればすぐ解決するのでしょうか?
答えは NO です。
● 理由1:味は“土地・水・気候”がつくる
蒸溜所を別の場所に増やせば、
同じ銘柄でも風味が別物になってしまいます。
山崎・白州の味は、
“その土地でしか再現できない” のです。
● 理由2:熟成は時間でしか解決できない
- 10年物 → 10年後
- 18年物 → 18年後
どれだけ投資をしても、この「時間」は短縮できません。
● 理由3:高品質な熟成樽の供給は無限ではない
特にシェリー樽は世界的に入手困難。
山崎の“シェリー香”や白州の“柔らかな樽香”を再現するためには、
樽の品質が不可欠です。
原料だけでなく、樽にも供給制限があります。
6. 二次流通の高騰が、さらに品薄を加速させる
希少性が高まるほど、二次流通で価格が高騰します。
- 山崎12年 → 定価の2〜4倍
- 白州12年 → 定価の3〜5倍
- 18年・25年 → 高級時計並の価格帯
小売店も買い占め対策のため、
- 抽選方式
- 店頭未展示
- 会員限定販売
などの対策を取らざるを得ません。
7. サントリーの増産計画が効果を出すのは10年後
サントリーは大規模投資を進めています。
- 山崎蒸溜所の拡張
- 白州蒸溜所の設備増強
- 熟成庫の増築
- 発酵設備の増設
しかし、結果が出るのは2030年代以降と見られています。
8. 【前編まとめ】原酒不足は“必然の結果”
まとめると、山崎・白州の品薄は偶然ではなく、
複数の要因が重なった“必然”です。
- 約20年間の低迷期で原酒が少ない
- 世界的ジャパニーズウイスキーブーム
- 白州ハイボールによる国内の需要増
- 熟成期間の制約
- 樽の供給不足
- 二次流通の高騰と買い占め
- 投資の効果が出るのは未来
後編では、
山崎・白州が手に入らないときにどう選ぶか、
味の方向性から代替銘柄を詳しく紹介します。
出典
- 国内外のウイスキー市場レポート
- 国際コンペティション受賞データ
- 国内酒類小売の流通動向
- サントリー公式発表資料