一般教養知識・情報2026-08-13

Schrödinger(SDGR)― 反復収益を持つ、例外的なレイヤー3企業

ACV 2億800万ドル、半年間の希薄化1.5%、Q2は黒字転換。ただし営業損失は▲4,155万ドル。AI創薬プラットフォームSchrödingerを4指標で分解します。2026年Q2決算実績を反映。

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前回取り上げたRecursion(RXRX)は、反復収益が実質ゼロで、1年間に株式数が約52%増えた企業でした。

同じ「レイヤー3:AI創薬プラットフォーム」に分類される Schrödinger(NASDAQ:SDGR) は、こうです。

  • 直近4四半期のACV(年間契約額):2億800万ドル
  • 2026年上半期の希薄化:+1.5%(公募増資なし、オプション行使のみ)
  • 2026年Q2:純利益598万ドルで黒字転換

数字だけ並べると、まったく別の業種のように見えます。同じ枠に入れてよい企業なのでしょうか。

ただし、黒字転換の中身には注意が必要です。営業損失は依然として**▲4,155万ドル**。黒字化の主因は、Eli LillyによるAjax Therapeutics買収完了に伴う非現金の株式評価益4,587万ドルでした。

本記事は、AI×製薬×バイオ シリーズ個別企業編の第2回です。2026年8月5日発表のQ2決算実績をもとに、7章構成で分析しました。

この記事のポイント

  • ACV +27%なのにソフトウェア売上は▲10%。 ホスト型(クラウド)ライセンスへの移行を意図的に加速しているため、契約は増えても会計上の売上は減ります。移行期は売上高ではなくACVを見る必要があります。
  • 黒字転換は営業利益ではない。 営業損失▲4,155万ドル、調整後EBITDA▲3,099万ドル。本業の黒字化目標は2028年末です。
  • 反復収益比率は約58%。 上半期のソフトウェア売上6,810万ドル÷総売上1億1,748万ドル。Recursionの実質ゼロとは対照的で、レイヤー2的な収益構造を半分持っています。
  • 希薄化がほぼない。 上半期の財務キャッシュフローは+122万ドル(オプション行使のみ)。反復収益と保有株式の売却で資金需要を賄えている構造です。
  • 臨床資産は2本まで減少。 SGR-2921はCDC7阻害剤として開発されていましたが、2025年8月に中止(2例の患者死亡との関連が報じられた)。残るSGR-1505とSGR-3515も、自社ではなく提携先に渡す方向です。
  • Q2決算リリースに自社パイプラインの記載がない。 ハイライト欄はBunsen、BMS契約、Simcere提携、論文2本のみ。創薬企業としての上振れ余地を期待する投資家には、前提の変更にあたります。

KPI要約

指標数値時点・出典
Q2 2026 売上高5,889万ドル(+8%)2026年8月5日発表
├ ソフトウェア3,254万ドル(▲10%)ホスト型移行の影響
├ 創薬2,299万ドル(+65%)Ajaxマイルストーン1,000万ドル含む
└ 拠出金336万ドル(▲30%)ゲイツ財団関連の計上時期
Q2 2026 ACV2,960万ドル(+27%)直近4四半期では2億800万ドル
営業損失▲4,155万ドル前年同期▲5,290万ドル
純損益+598万ドル(黒字転換)主因は株式評価益4,587万ドル(非現金)
調整後EBITDA▲3,099万ドル前年同期▲3,869万ドル
現金・有価証券4億1,880万ドル2026年6月30日時点(上半期に+1,647万ドル)
ホスト型比率47%(1年前31%)2028年末目標は75%
ソフトウェア粗利率71%(前年同期76%)2028年に70%台後半へ戻す目標
発行済株式数74,779,310株(半年で+1.5%)公募増資なし
株価 / 時価総額17.81ドル / 約13.3億ドル2026年8月6日終値
EV ÷ 直近4四半期ACV(編集部試算)約4.2倍EV約8.7億ドル
臨床段階パイプライン2本(SGR-1505、SGR-3515)いずれも提携先を模索中

完全版レポートで解説していること

  • ①市場規模 ― ACVという指標の読み方、Bunsenが「計算化学者の人数」から「創薬研究者全体」へ市場を広げる戦略
  • ②政策・規制環境 ― 規制リスクが収益ではなく「上振れ余地」に現れる構造。SGR-2921中止の意味
  • ③コスト・収益構造 ― 黒字転換の内訳、ホスト型移行という意図的な自傷、営業CFが+9,187万→▲4,890万に振れた理由
  • ④事業セグメント動向 ― ソフトウェアと創薬の2セグメント、株式保有による現金化モデル(累計7.5億ドル超)、Ajax事例の解剖
  • ⑤株式バリュエーション ― 4指標をRecursionと並べて比較。EVから現金と保有株式を引いた「約8.7億ドル」の意味
  • ⑥リスク要因 ― 営業赤字の継続、ホスト型移行の長期化、創薬売上の単発依存、AI競合の台頭
  • ⑦まとめ ― 「レイヤー2.5」として読むべき理由と、両方を持つことが両方で勝つことを意味しない理由
  • WHAT TO WATCH ― 今後の注目点6項目

👉 完全版レポートを読む:Schrödinger(NASDAQ:SDGR)徹底分析

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次回はレイヤー3から Relay Therapeutics(NASDAQ:RLAY) を取り上げます。Absci(ABSI)は8月11日発表のQ2決算を反映したうえで、後日あらためて記事化します。


免責事項

本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。投資に関する最終的な判断は、ご自身の責任において行ってください。記載された数値は2026年8月上旬時点の公開情報(企業IR資料・決算リリース等)に基づいており、株価等の市場データは日々変動します。「編集部試算」「編集部計算」と明記した数値は公開情報に基づく推計です。調整後EBITDAは非GAAP指標であり、GAAPの純損益に代わるものではありません。

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