【Part6】“重点17分野”は本当に加速するのか?
──衆院選後に日本成長戦略を再分析
合成生物学・バイオ・創薬・先端医療・フードテック
第0章|前提
本記事は、「重点17分野」が衆院選後にどの程度加速するのかを、政策・企業・人材の三層で読み解くシリーズの第6回です。
衆院選を経て政策実行可能性は高まっていますが、
実際の加速は以下のプロセスを経て具体化します。
- 国会招集
- 再組閣
- 予算成立
- 基金設計
- 法令・運用指針整備
したがって、本稿では断定はせず、
「どの分野で構造的な動きが起きているか」を整理します。
第1章|合成生物学・バイオ
■ 政策レイヤー
担当:経済産業大臣
合成生物学は、従来の基礎研究段階から
産業化・社会実装フェーズへ移行しています。
2026年度政策では、
- 「バイオものづくり革命推進事業」
- 商用プラント整備支援
- バイオファウンドリ(受託製造拠点)の地方展開
が明確に打ち出されています。
さらに、グリーンイノベーション(GI)基金と並行し、
製造キャパシティ確保を国家戦略として進める方向性が示されています。
経済産業省の合成生物学・バイオワーキンググループでも、
合成生物学は研究競争ではなく「製造能力競争」に入る
との整理がなされています。
📎 参考資料
経済産業省「合成生物学・バイオワーキンググループ(第1回〜)」資料
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/synbio/index.html
■ 企業レイヤー
お金が流れる先は主に:
- バイオ素材企業
- 受託合成企業(CDMO)
- 発酵・培養設備メーカー
- バイオデータ解析企業
ここで重要なのは、
「研究支援」ではなく製造能力強化に重心が移っている点です。
■ 人材レイヤー
需要が増える職種:
- バイオプロセスエンジニア
- GMP対応製造責任者
- 知財・規制対応専門家
- プロジェクトマネージャー
特に「研究を産業に翻訳できる人材」の市場価値は上昇傾向です。
第2章|創薬・先端医療
■ 政策レイヤー
担当:内閣府特命担当大臣(科学技術政策)/デジタル大臣
創薬は従来の製薬モデルから、
- AI創薬
- 遺伝子治療
- mRNA技術
- データ駆動型医療
へと転換しています。
2026年度予算では、
- SCARDA(先進的研究開発戦略センター)を軸とした研究推進
- 「創薬ベンチャーエコシステム強化事業」
- VC出資連動型の治験費用支援
など、研究と民間資金を接続する仕組みが強化されています。
■ 企業レイヤー
資金が流れる先:
- 創薬ベンチャー
- CRO(臨床試験受託)
- 医療データ解析企業
- 医療機器メーカー
短期的株価材料は限定的ですが、
提携・共同研究発表は市場に影響を与えやすい分野です。
■ 人材レイヤー
- 臨床開発PM
- 医療データサイエンティスト
- 薬事・規制対応
- AI医療エンジニア
政策理解×医療知識のハイブリッド人材が希少です。
第3章|フードテック
■ 政策レイヤー
担当:農林水産大臣
フードテックは、
- 代替肉
- 培養肉
- 精密発酵
- スマート農業
を含む広義の分野です。
2026年度政策では、
- 完全閉鎖型植物工場への支援
- 陸上養殖施設整備
- フードテックビジネスコンテスト
など、社会実装を後押しする動きが見られます。
その背景には、
- 食料安全保障
- 自給率向上
- 気候変動リスク対応
という国家的課題があります。
■ 企業レイヤー
資金の流れ:
- 植物性代替食品企業
- 培養設備メーカー
- 農業DX企業
- アグリデータ企業
「農業×テック」の企業は
政策支援の対象になりやすい構造です。
■ 人材レイヤー
- 食品開発×バイオ技術者
- 農業DXエンジニア
- サプライチェーン設計人材
- ESG対応専門家
ここでも共通するのは
規制理解+技術理解の両立です。
第4章|この3分野の共通構造
合成生物学・創薬・フードテックは共通して:
- 長期投資型
- 研究→実証→産業化の三段階
- 短期株価より中長期構造変化型
という特徴を持ちます。
また、単なる成長投資ではなく、
- 合成生物学=産業創出型成長投資
- 創薬=危機管理+成長投資
- フードテック=安全保障投資
という政策的性格の違いもあります。
第5章|観測すべき指標(政策×企業×人材)
政策面
- 基金規模・採択件数
- 商用プラント整備件数
- 治験支援採択数
- 医療情報基盤整備の進捗
企業面
- 共同研究発表
- 製造能力増強投資
- 設備受注
- バイオCDMO受注拡大
人材面
- バイオ製造求人増加
- AI×医療求人増加
- GMP対応人材単価
- バイオ×データの複合人材需要
結論|短期ではなく「構造的変化」
この3分野は、
- 防衛や造船のような即効型ではない
- しかし国家戦略上、放置できない
分野です。
株価で即断するのではなく、
研究→実証→採択→量産という流れを見る必要があります。
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出典
-
内閣官房「日本成長戦略本部」
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/nipponseichosenryaku/ -
経済産業省「合成生物学・バイオワーキンググループ(第1回〜)」資料 https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/synbio/index.html
-
各省庁2026年度予算関連資料
-
農林水産省「フードテックワーキンググループ」資料 https://www.maff.go.jp/j/kanbo/foodtech.html